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ベトナムで活躍する日系企業|
リーダーたちの構想 第31回
三菱地所ベトナム

2010年からベトナムでマンションの共同開発を始めた三菱地所グループ。2019年に三菱地所ベトナムを設立し、本格的に市場参入した。今後は安定的に物件数を増やし、環境にも配慮した開発を手掛けたいと、軍地社長が語る。

大都市で7つの物件を開発

―― ベトナムの前はシンガポールにいらしたとか。

軍地 はい。2016年4月に赴任しまして、住宅部門の担当として、出張ベースで周囲の国々を見て回っていました。アジア・オセアニアでの事業拡大のため、マレーシアやオーストラリア、このベトナムにも毎週のように来ていました。

 三菱地所は2008年にシンガポールにMitsubishi Estate Asiaを設立した後、アジアで最初の投資先としてベトナムを選びました。シンガポール系デベロッパーのキャピタランド社と共同で、ホーチミン市とハノイでマンション開発を始めたのです。

 その後、オフィスや住宅の新規案件も徐々に増え始める中、さらに事業を拡大すべく、2019年4月に弊社をホーチミン市に設立しました。2020年3月にはハノイにも支店を設立し、今後はオフィス、住宅、商業施設、ホテルなどの開発を進めていきたいと考えています。

―― なぜ現法設立となったのですか?

軍地 ベトナムでは拠点ができるまでは、出資比率が25~50%程度のマイナーシェアでの共同事業がほとんどでした。その後案件が増えていく中、安定的に経済成長が見込め、親日的でもあるベトナムでさらに事業を伸ばすべく、現法設立に至りました。

 今後は自社のノウハウやアイデアを積極的に活かせる、メジャーシェアの開発案件を進めることも1つの大きな目標としています。

 現在までの案件には、ホーチミン市のオフィスビル「リバーバンクプレイス」、ハノイ市でキャピタランド社と共同で開発したオフィスビル「キャピタルプレイス」、南部ビンズン省でベカメックス東急社との共同事業である分譲マンション「ソラ ガーデンズII」等で、それ以外にも過去に開発した住宅が4物件あります。

 リバーバンクプレイスはルメリディアンホテルと同じビルですが、3~8Fのオフィス部分を区分所有しています。取得後、オフィスエントランスやトイレなどの共有部分をリノベーションし、テナント様の満足度を上げ、入居率も上げることができました。

 キャピタルプレイスでは当社グループの三菱地所設計も設計に関与しており、オフィス室内の効率を上げるために無柱空間を実現しています。

 現在、我々の一番の目標は新しい案件を取得・開発していくことです。そのためには外資系不動産エージェント、ローカルエージェント、あるいは日系やローカルの銀行などからも日々情報を収集しています。案件は本当に様々な状態で持ち込まれてきます。土地が全くの更地のもの、建設許可まで取得できているもの、あるいは建物が完成してテナントが入っている状態での売買の情報もあります。

―― 基本的には物件を売却して収益を上げるわけですか?

軍地 そうですね。住宅ですと例えばソラ ガーデンズIIは現在工事中で、来年6月頃から購入者様に引渡しが始まる予定です。オフィスの場合は建物完成後にリーシング(賃貸)が始まり、一定のオペレーション期間を経て、数年後には外部の投資家に物件を売却し、新しい物件に投資していくことを視野に入れています。

 これは現在の当社の海外事業に対する投資戦略からくるものですが、ベトナムは長い目で見ても期待できる不動産マーケットだと思います。実際にはオフィスや商業施設を開発後、10年以上保有する投資戦略を立てる不動産会社もありますし、個人的にはその考え方もあると感じています。

SDGsや環境を考えた物件に

―― ベトナムの不動産市場はいかがですか?

軍地 特に2015年以降は活況で、新型コロナ禍でも特に大きなマイナスは見られません。オフィスに関しては新型コロナの影響で家賃を下げるために、テナントが移転を検討する動きも一部では見られましたが、全体に占める影響は限定的でした。

 住宅に関しては新型コロナというよりは、行政の様々な許認可が厳格化していることで着工数が減っており、ひいては供給数もホーチミン市とハノイ市とも例年よりも3~4割ほど減っています。

 一方でベトナム人の所得増、人口・世帯数増もあり、全体としてみると住宅需要は根強く、価格が上がっても販売は好調に推移している物件が多い状況です。

 こうした市況は今後の新型コロナによる世界経済の動向や人の移動の制限の変化、2021年のベトナム国内の総選挙次第で流動的な面もあると感じているため、注視しています。

―― 御社の強みとは何でしょうか?

軍地 三菱地所グループの総合力だと思います。住宅、オフィス、商業施設、アウトレットなど幅広い分野において海外での実績・ノウハウが豊富です。弊社駐在員も各人のバックグラウンドが異なっており、バランスよくスキルが揃っていますが、駐在員が窓口となって、日本やシンガポールから知見を引き出してくることも多くあります。

 また、例えばベトナムで住宅を購入するお客様は、日系を含めた外資系デベロッパーへの信頼が厚いと感じます。工期の正確さや建物の品質、デザイン性などが主に評価されるポイントだと思いますが、周辺相場より価格が10~20%高くても購入していただけるケースもあります。

 一方でベトナムでは外資系・日系デベロッパー、ローカルデベロッパーとの共同事業という形も重要だと感じています。常に当社だけで事業を進めるのではなく、相互にノウハウや知見を出し合い、相互補完の関係を構築することで新規案件を増やしながら、個別物件の価値を高めていくこともベトナムでは大切です。

―― 今後の計画を教えてください。

軍地 短期的にはベトナム人スタッフの増強です。立上げ期ということもあり、現在は駐在員の比率が高いですが、全社員の半数以上まで高めていきたいです。中長期的には、ハノイとホーチミン市を中心に安定的に、毎年1~2件の案件を事業化できる体制を構築したいですね。

 同時に進めたいのがサスティナブルな開発です。SDGs(持続可能な開発目標)や環境に配慮したプラスアルファ、例えば世界標準の環境評価ツール「LEED」を取得できるような開発。実は昨年10月に完成したキャピタルプレイスは、省エネルギー化、再生水の利用等を実現し、LEEDの4評価で2番目のゴールドを取得しました。ハノイのオフィスビルで初めてのことです。

 近年では外資系の金融機関などは、こうした環境に配慮したビルでないと入居しないといった動きが始まっています。もちろんコストとリターンのバランスは必要ですし、お客様のニーズをしっかり汲み取ることが大切ですが、先駆者として様々なタイプの開発に積極的に取り入れていきたいですね。

Mitsubishi Estate Vietnam
軍地雄介 Yusuke Gunji
大学卒業後、三菱地所株式会社に入社。主に住宅関連の土地取得、計画、経営企画、人事等を担当した後、2016年にシンガポールに赴任。主に周辺国での住宅開発に携わり、2019年4月のベトナム支社設立と共に現職で赴任。