ベトナムビジネスならLAI VIENにお任せください!入国許可、労働許可証、法人設立、現地調査、工業団地紹介などあらゆる業務に対応します!お気軽にご相談ください!

ベトナムビジネス特集Vol134
大人も子供も勉強だ。ベトナム教育ビジネス

元々勉強好きなベトナム人。近年では学習塾や社会人学習などの教育市場が拡大しており、新型コロナでオンライン学習も活発になっている。人に教えること、そして自ら学ぶこと。ベトナムの教育現場で起きている最前線を紹介する。

KUMON VIETNAM
General Director ニッ木俊英氏

新型コロナで教室を閉鎖
自主的に始めたスマホ指導

 世界57の国と地域で子供向け学習塾を展開する公文教育研究会。ベトナムには2006年に進出した。現在はホーチミン市に22、ハノイに3、ハイフォンに1、カントーに1、ビンズン省に2、ドンナイ省に1、の合計30教室を持つ。

 現地からの要請で進出を決めて現地法人を設立し、フランチャイズ(FC)の教室を展開するのが普通。しかし、ベトナムは現在まで教育事業ライセンスのルールでFC展開が難しく、全ての教室が直営で、スタッフは社員だ。

「1回45分の授業で週に2回、ベトナムでは数学と英語を教えています。生徒の98%がベトナム人で、幼稚園の年中組から小学校3年生が中心です」

 ベトナムの特徴はタイ、インドネシア、マレーシアなど他の東南アジア諸国と比べて入会年齢が早く、東京と同じくらいだそうだ。東京が早い理由は、超早期教育や小学校受験などの準備が含まれるためだ。

「まだその時代に至っていないベトナムでは、親の教育熱心が理由でしょう。それを知って衝撃を受けました」

 2019年8月にニッ木が赴任し、その後7教室がオープン。生徒数は毎年4~5%増え続け、2019年12月には過去最高となる1万2000人弱まで増えた。

 しかし、翌2020年は年初から新型コロナに翻弄された。2月に全ての教室を閉じ、社会的隔離のあった4月を通し、5月中旬まで閉鎖は続いた。

社内での勉強会(新型コロナ前、現在ではオンラインで実施)

 教室主体の学習塾では致命的なダメージだが、そんな中で各教室の教師(センターインストラクター)たちが、2月から自主的な活動を始める。自宅にいる生徒に連絡して、親のスマホを借りてもらい、生徒の手元をZaloの動画で生中継してもらったのだ。

「公文ではプリントに記入する生徒の手元を見て指導します。スマホに映ったその手元を見ながら、彼らは生徒に声を掛けるようにしたのです。自然発生的に始まったことで、私は感動しました」

 活動開始時は準備が整わず、教師の個人スマホを使用。1人が担当する生徒が100人を超える場合もある中、1対1での指導を毎日のように続けた。

家庭とつないだオンライン
ベトナムに感じる昭和の匂い

 公文ベトナムは3月、この指導方法を会社の方針として決定、8月まで続けた。実はこうしたオンライン指導は世界中の公文で起こっていたが、他国は主にZoomを使っていた。ベトナムでは教室に十分なパソコンなどがなかったためスマホを利用したのだ。

 その後、パソコンやタブレットを全教室に導入し、2020年9月からZoomでのオンライン指導をスタート。教室再開後も将来に備えてオンラインを経験してもらいたいと、月4~8回のオンライン指導に毎月600~1000名を招待し、現在(取材時)まで5550人が参加した。

「今年の2月に第3波が発生したため、全教室を再び閉じましたが、すぐに全生徒を対象としたオンライン指導を提供するができました」

 オンライン指導を通して大きな収穫もあった。スマホ、タブレットやパソコンを介して、生徒の家庭学習の様子や環境が見えるようになったことだ。子供が公文を辞める大きな理由に「自宅で宿題ができない」があるが、子供が毎日の宿題をする環境を知ることで、アドバイスできる機会も増えた。保護者と協力し合い、家庭教育をもっと強力に応援できると気が付いた。

「勉強後に親と5分程度話したり、親から褒められてにっこりする子供の笑顔が見えたりと、家庭とのコミュニケーションがさらに強まりました」

 親の職業は様々で、バイクで送迎するような一般家庭がほとんどだ。会費は月に120万VND。日本の地方での価格が約6000円なのでほぼ同じだが、ベトナムでは安いほうだと語る。

 1995年に公文教育研究会に入社したニッ木氏は、そんな親たちを見ていると「古き良き昭和を感じる」という。

「保護者が教育に熱心で、自分で送り迎えをし、先生に一生懸命に話しかける。そんな彼らだから我が子のためにお金を使い、コロナで一度退会しても復帰してくれるのでしょう」

 新型コロナで大幅に減った生徒数は徐々に回復を見せ、新型コロナが落ち着けば、今年中に再び過去最高の生徒数に到達すると期待している。

生徒を指導するインストラクター

これから本格的にFC展開
EdTechとは異なる特徴

 今後の目標は念願のFC展開だ。上述のようにベトナムではルールが厳しいが、日本本社やシンガポール本社の支援もあり、2020年2月に当局との交渉が予定されていた。それが新型コロナで延期となったままで、今年6月までに交渉を始めたい考えだ。

 FCが本格化すれば、約420人の社員の中には希望者もいるだろうし、出産や里帰りで退職した元社員からも手が上がりそうだ。ホーチミン市、ハノイ、ハイフォン、カントーの直営教室は地域のトレーニングセンターにもなるので、これも同社の強みである。

「将来的には、オンラインでの地方展開も考えられます」

 AIを活用して個人に沿ったeラーニングを提供するEdTechは脅威だが、教師と子供たちが触れ合い、頭をなでてハイタッチをして、宿題を手作りするような実地教育の強みは感じている。

生徒とハイタッチするインストラクター

「我々はオフラインでもオンラインでも、さらにはそれを混ぜ合わせても、子供たちを強力にサポートできるとわかりました。実際、一度退会した人の再入会数は過去最大です。公文が現在競っている相手は他の塾でもEdTechでもなく、新型コロナです」

Navigos Group Vietnam
General Director & CEO 越前谷学氏

職能型の入社後研修
顧客企業2500社に提供

 総合人材サービスのNavigos Groupは、2018年から「ベトナムワークス・ラーニング」としてオンライン教育も手掛けている。「入社後活躍」を大切にしている同社は、採用成功自体をゴールとしない。入社後に活躍し続けられる求職者と企業のフィッティングの実現のために、「3Eメソッド」と呼ばれるワンストップサービスで、「採用:Employment」、「評価:Evaluation」、そして「教育:Education」サービスを展開中だ。

 現在ではベトナムワークスの顧客である約1万7000社のうち、CLP(カスタマー・ロイヤリティ・プログラム)と呼ぶ約2500社の顧客企業に対して、eラーニングを提供している。

「全てがオンラインによるeラーニングで、150ほどのコースがあります。弊社がお客様に適したコースを紹介し、そこから選んでいただいています」

 日本とベトナムでは企業研修に大きな差があるという。日本の雇用は「職能型」で、新卒一括など定期的に社員を採用し、集合研修を重ねて人材を育成する。ベトナムでは職種や職位に適した人材を採用する「職務型」なので、スキルは社員自身が磨く。多くの企業にとっては、研修でスキルが上がれば転職されるリスクもあるため、むしろ社員教育に消極的だ。

「弊社が実施しているのは職能型の入社後教育で、ホワイトカラーの体系的なソフトスキルを伸ばすことが目的です。コースはコミュニケーション、プレゼンテーション、タイムマネジメントなどで、表計算、英語、ITなどのテクニカルスキルにはフォーカスしていません」

 他には、初めてマネジャーになる人向けのコースもある。ベトナムでは転職で職位を上げる場合があるので、管理職経験のない人材がマネジャーに採用された場合などに適している。業務に必要な個々のスキルは無料動画などで学ぶ人が多いので、当人に任せている。

オンラインコース受講中の様子

 この入社後研修は日系企業とグローバル企業、そしてベトナムの大手企業からも評価が高い。ベトナムの中小企業は未だに前向きではないが、大手企業は競合相手がグローバル企業なので、「ただ採用するだけでは勝てない」と知っているのだそうだ。

個人向けの社会人コース
受講生は若いスタッフ層

 同社の個人向けオンライン社会人学習には約150コースがあり、価格は1コースが50万VND程度。1回約30分、全体で5~8時間となる動画が多い。

 受講者1879名が回答した調査によると、ハノイやホーチミン市の大都市に住む人が多く、約半数が30歳以下の若い世代。ジュニアやシニアスタッフが半分以上を占め、72%が月給2000万VND以下だ。

「手軽に試せることが若い人に好まれているのだと思います。何らかのスキルや知識を20代で身に付ければチャンスは広がりますから。30代以上のマネジャー層ならオフラインの集合研修を選ぶのではないでしょうか」

 最近の人気コースは企業向けとは異なり、「不動産投資で儲ける」、「株式投資で勝つ」、「保険外交員を副業にして稼ぐ」といったテーマ。これには新型コロナも影響しているようだ。

「失業や給与の下落が増えて、リターンが早く、お金になる内容が選ばれているのでしょう。株式投資が盛んになったのも同じ理由かもしれません」

 ただ、入社後活躍をサポートする目的で教育事業に参入したNavigos Groupなので、長期的にキャリアを形成するための支援を拡充していく予定だ。

 社会人向け学習は全体的に受講者が減っているのではと指摘する。新型コロナの影響で収入が落ちる中、長期的なステップアップを目指す教育よりも、目の前の生活に支出する人が増えていると考えるからだ。

Navigos Groupのオフライン研修(新型コロナ前)

 一方、同社は参入していないが子供向けの教育、特に「K-12」と呼ばれる12歳以下では英語学習が人気なのだそうだ。こちらの事情も越前谷氏に語ってもらった。

「K-12」は英語に夢中
将来に役立つスキルの形成

「ベトナムでは自身の教育投資は控えても、子供に対する教育は別と考える人が多いです。親たちは自分の時代にはなかった環境、受けられなかった教育を、子供に与えたいと思っているのでしょう」

 教育を受けさせるのは小学生から中学生(6~15歳)が中心で、ホワイトカラーで共働きの両親が英語塾などに通わせるなどだ。月謝は安くて1ヶ月200USD程度で、300USDや400USDもあるが、世帯月収が1500USDあれば支払える金額。高収入世帯なら幼稚園から学ばせることもある。

「オンラインもありますが、子供は集中力に乏しいのでオフラインが中心です。子供にeラーニングが続かないことは、新型コロナでオンライン授業になってわかったと思います」

 英語を学ばせる理由は将来のキャリアに役立つから。他の科目は学校や補習校で学べても、英語力はなかなか身に付けられない。英語学校は社会人にも人気だ。

 企業の社員向け教育もそうだが個人向け教育も、新型コロナが落ち着いて収入が安定すれば、再び伸びると越前谷氏は語る。英語学習の優位は変わらず、社会人には今後、マーケティングやITなど職種別スキルが注目されると考えている。

「ベトナムの雇用は職能型でなく職務型ですから、短期的には自分の職務スキルを上げて、昇給や昇進が望めるコースが選ばれると思います。ただ、ベトナム人にとっての長期的キャリアを形成する意味でも、弊社の企業向け教育は職能型スキルを高める内容であり、今後も続ける予定です」

A PLUS SOLUTIONS VIETNAM
Vice Director Mr. Hiro Le

40人の専門講師が指導
仕事で行動に移すのが重要

 ベトナム企業と日系企業のベトナム人従業員に対して、オフラインの集合研修、オンライン用デジタル教材の制作、コンサルティングを行うA PLUS SOLUTIONS VIETNAM(A PLUS)。オフラインのスキルアップ研修の講師は、外資系企業やベトナム企業に長く勤務した、現場経験が豊富な約40名。同社のコーチングレッスンを受けている。

オフライン研修の様子(製造業)

「人気のテーマはビジネスマナー、チームワーク、ホウレンソウ、5S、PCDA、中間管理職マネジメント力強化、問題解決術などで、合計約30コースがあります」

 コースの多くは1~3日で、1日約7時間。企業のニーズに合わせて組んでおり、料金は1日2500万~3000万VND。これまでに約200回実施していて、約4割が日系企業。日系企業は製造業が8割ほどと多く、ベトナム企業の業種は様々だ。

 研修では講師が講義をしながら受講者から話を聞き出し、問題を確定して答えを見つけるまで指導する。ケーススタディやゲームなどもよく使われ、大切なのは受講者が中心となるトレーニングだそうだ。

 日系企業ではまず管理職など中間層に教育・研修を行い、部署内スタッフに落とし、OJTなどでワーカーをトレーニングする。Hiro氏によれば、「まとまりは良いが、中間層の学習力や指導力により結果が左右されてしまう」。

 一方、積極的なベトナム企業は、外部講師を招いて一律に教育を進めることが多い。日系企業は部署単位での業務はスムースに進んでも、部署間の連携、企業全体の発展、企業文化の育成に関する学習は少ないと語る。

 研修の人数はベストが20名、多くて25名が良いという。日系企業は自社の大型会議室などを用意し、ベトナム企業はホテルの会議室やレンタルスペースを使うことが多い。管理職の研修なので、チームビルディングを兼ねて旅行に行く場合もあるそうだ。

オフライン研修の様子(銀行)

「ベトナム人は確かに勉強が好きで、新しいことに興味を持ち、学習態度も真面目な人が多い。しかし、得た知識を仕事にすぐに活かすのは難しく、現場の行動にどのようにつなげていくかが肝心です」

 そのため、アクションプランを作ること、上司からの声掛けや、A PLUSのような外部教育機関からのフォローが重要になるという。A PLUSでは、オフライン研修後も講師が現場で指導し、実際に学習したことを行動に落とせるようサポートするプランも提供している。

eラーニングの学習に必要
飽きさせないで続けさせる工夫

 同社は2019年からオンライン用のデジタル教材を制作しており、eラーニングの「WorkPro」を日系企業PROSEEDS VIETNAMのプラットフォームや、ハノイオープン大学に提供している。ビジネスマナー、会議術、ジョブアサイン、5S、ホウレンソウ、問題解決術などの約20コースがある。

 仲間と一緒に受講するオフライン研修と異なり、集中力が続かずにアクセスしなくなる人も出てくる。そのため定期的なテストの実施や、質問での問いかけ、アニメーションやMCと音声で興味を引かせるなどの工夫もしている。

 また、講師が一方的に話す講義をeラーニングで先に完了させ、オフライン研修では学習者にアウトプットを促す、ブレンド型学習の研修も提供している。

「ベトナムの大手企業に、最初はつまらないと言われたコースがありました。ところが終わってみたら、『良かった』や『役に立つ』という感想をいただきました。同じコースの内容でも、伝え方を変えることで、受講者の反応も変わっていきます」

 自社の社員研修をオフラインからオンラインに移行する企業が増えている。例えば退職者が多いため、新入社員に向けた講師による集合研修をeラーニングでの個人学習に切り替えるなどだ。

 上述のPROSEEDS VIETNAMは、eラーニング用のサイト構築システム「LearningWare」を提供している。企業はこのシステムを利用して独自のeラーニングサイトを構築し、そこで自社の研修コンテンツを作成・配信したり、外部の教材を導入している。

 自社で作る場合は資料のスライド化、講義の動画化、注意事項のアニメ化などで、外部の教材としては提携するWorkProのような研修会社の教材を使っている。

「お客様から資料をいただいて制作を依頼される場合もあります。研修担当の方の多くはeラーニングを積極的に検討していますが、実際に効果が現れるかどうかが懸念事項の一つです。ゲーム性を持たせたり、アニメやイラストを使って、面白く作り込むことが求められます」」(PROSEEDS VIETNAMの中須賀雄介氏)

LearningWareで提供されているWorkProの画面

新入社員教育もオンライン化
一般スタッフにもトレーニングを

 A PLUSでは基本的に、オフライン研修とオンラインのeラーニングを併せてトレーニングを実施してきた。今後は対象者を絞って、必修講座の数を増やし、企業が利用しやすいパッケージにすることを考えている。また、最近の企業は新入社員教育を、プロに任せようとする傾向があるそうだ。

「今年の夏に新入社員や若手社員向けの、オフライン研修パッケージをリリースする予定です。中身はビジネスマナー、簡易5Sの実践、ホウレンソウ、チームワーク、自主的な仕事の5つで、eラーニング用のテキストを用意するつもりです」

 オフライン研修の受講者はマネジャーなどの中間層が多いが、一般スタッフの学習ニーズも強まっているそうだ。企業にはスタッフやワーカーへの教育にも力を入れてもらいたいと、Hiro氏は語る。