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ベトナムビジネス特集Vol143
日系外食チェーンの奮闘 ウィズコロナの知恵

店内飲食禁止に加えてデリバリーの禁止。昨年、南部の飲食店はどうやってこの危機を乗り越えたのか。規制が緩和された現在は事業をどう進めているのか。数多くの店舗を持つ日系レストランチェーンに取材した。

4P’s Holdings, Inc.
                                    Deputy CEO     CEO
                                      高杉早苗氏    益子陽介氏

注文のシステムを自社開発
ドライバーにはトレーニング

 2021年の新型コロナ第4波以降、ホーチミン市では5月末から飲食店の店内飲食が禁止された。7月上旬からはロックダウンが始まり、飲食店のデリバリーサービスや店内テイクアウトも禁止。

 この規制は約2ヶ月続いた後、9月上旬にはデリバリーが解禁。10月1日にはロックダウンが緩和され、10月末からは店内飲食が全面的に許可された。

 つまり、5月末から10月末までの5ヶ月間、ホーチミン市内の飲食店、時期は前後するが周辺省の飲食店は店内飲食ができなかった。多くの店はデリバリーに活路を求めたが、人気のピザレストラン、Pizza 4P’sも同様だった。

 Pizza 4P’sは2011年5月にホーチミン市のレタントンに1号店が開店。現在(取材時)はホーチミン市13、ハノイ8、ダナン2、ニャチャン1、ハイフォン1の合計25店舗を持つ。創業者でCEOの益子陽介氏は振り返る。

「本当に、倒産するかと思いました」

 同店は新型コロナ第1波の2020年4月頃からデリバリーを始めており、第4波以降は事業を集中させた。当初はホームページ、電話、Facebook、LINEなどで注文を受け付け、第4波以降はGrabやBAEMINなどのデリバリー会社とも契約。注文を受けるシステムは自社で開発した。

「自分たちでシステムを作ったのは、お客様が使いやすい注文システムを作りたかったこと、注文から料理を完成させるまでの時間や配送時間をリアルタイムでトラッキングして、お客様体験を常に向上できるようにしたかったこと。より良いサービスを提供するためです」(益子氏)

 デリバリーではお客の反応がわからないと、5万VNDのバウチャーで感想を伝えてもらい、業務の改善に努めた。ドライバーはAhaMoveなどにも依頼するが、自社スタッフの割合を増やして現在は50%程度。配送のクオリティを上げたいとドライバーとして採用したスタッフも多く、トレーニングを施している。

「お客様の感想で多いのは保温と配送時間についてです。特にこの2つの改善を続けました」(高杉氏)

保温と配送時間短縮の工夫
小売店やECサイトで販売も

 料理の保温のためにバイクに付けるヒートパックを用意。適切なものがベトナムにないと自社で改良した。配送中のピザや具材が崩れないようにパッキングの方法を工夫し、箱のサイズをコンパクトにし、ピザの中央に固定用のホルダーを置いた。箱を縦横に振って何度も試したそうだ。

 また、環境に配慮して、袋は生分解性バイオプラスチック製、フォークなどのカラトリーは木製に。ピザの温め直し方を書いた小冊子を付け、温め直し方法を解説した動画や店内の音楽を楽しめるQRコードも載せた。

「冷めてもさほど味が落ちないシーフードドリアなどを、デリバリー限定メニューとして加えました」(益子氏)

 配送時間の短縮は難しかった。ピザを焼く窯は通常1店舗に2つあるが、1つの窯で1枚ずつしか焼けないため、注文が重なると待ち時間が増えてしまう。

 そこで、いくつかの店舗ではデリバリー用に窯を増やし、窯とキッチンを揃えたデリバリー専用の拠点も作った。ホーチミン市とハノイに合計4ヶ所あり、配送のスピードアップと共に配送範囲の拡大も目的だ、。

 こうした努力の結果、注文受注から配送終了までの時間は、2020年8月の約70分から約35分に半減した。

「MomoやVN Payなどと連携して決済の方法も増やしました。現在はこうしたモバイル決済アプリ、現金、クレジットカードの支払いがおよそ3分の1ずつです」(高杉氏)

 デリバリーだけでなくリテール(個人向け販売)も始めた。冷凍ピザや冷凍パスタ、自家製のチーズやヨーグルト、輸入したワインや自家製サングリアなどをオンラインで販売する一方、スーパーやコンビニなどの小売店、TikiやLazadaなどのオンラインショップへ卸した。

「ロックダウン中はデリバリーができず、売上はリテールに限られました。以前から準備はしていたのですが、新しいチャネルとしてポテンシャルを感じます」(益子氏)

店長たちが運営を維持
従来にない顧客の獲得も

 新型コロナ前は全店舗で約1500人のスタッフが働いていた。しかし、退職者が出て、キッチンやホールのスタッフもそうだが、バックオフィスは約半分に減ってしまった。

「少ない人数でも生産性高く仕事が回せるように、効率化や自動化を進めている最中です」(高杉氏)

「スタッフについては夜眠れないほど悩みました。ただ、残った社員が熱心、かつ柔軟に対応してくれて、とても救われました」(益子氏)

 レストランの運営は店長の手腕によるところが大きいが、各店長とその上のエリアマネジャーは1人も辞めず、入社3~5年の中核メンバーにも退職者は少なかった。そのためオペレーションがスムーズに進められ、全店舗が再開できたのも彼らのおかげと語る。

「店長は1号店から働いている人が多く、システムが入る前の現場を知っています。彼らは頼もしい(笑)」(益子氏)

 Pizza 4P’sには駐在員や観光客など外国人客も多く、ニャチャンやダナンなどの観光地では7割程度を占めていた。店舗は再開したが、駐在員が減り、観光客がいなくなったため、新型コロナ前と全く同じ状態ではない。そのためにもデリバリーとリテールの事業を拡大させ、業務の効率化も進めていく。

 朗報もある。デリバリーによって従来にない顧客が獲得でき、Grab、Momo、Tiki、Lazadaなどのチャネルからも新しい層にアプローチできたそうだ。こうしたお客が実店舗に来店するサイクルも生まれ始めている。

「残ってくれたスタッフと一新したチームを作っていきたい。そして、デリバリーやリテールでオーダーしてくれたお客様、来店してくれたお客様に感謝したい」(益子氏)

Zensho Vietnam Co., Ltd
General Director 平田智有氏

デリバリーでキャンペーン
日系工場から大量注文

 牛丼のすき家は2016年7月、ホーチミン市のイオンモール・ビンタン内に1号店を開店。現在(取材時)はホーチミン市に13、ビンズン省に2の15店舗を持つ。順調に出店を増やしているように見えるが、計画より遅いペースなのだそうだ。

 昨年5月末に店内飲食禁止の通達が届くと、それに応じた売上予測を立て、食材の調達や工場での生産(各店舗に配送する牛肉のスライスなど)を抑えるように指示した。その後は2017年から始めていたデリバリーに事業を大きくシフト。しかし、簡単ではなかった。

 すき家はイートイン(店内飲食)、テイクアウト、ドライブスルーで成長してきた企業で、デリバリーを本格的に始めたのは日本でも新型コロナ禍になってから。ベトナムで大量注文のデリバリーをさばくノウハウはまだなかった。

「商品をカップに入れて蓋をして、袋に詰めて、箸などを入れて、ドライバーに渡す。簡単そうですが結構手間が掛かるのです。スタッフが作業しやすいように、物の配置や店内のレイアウトを変えていきました」

 デリバリー会社は幅広くGrab、Now、BAEMIN、Capichiと契約しており、こうした会社と組んだキャンペーンの効果もあった。

「商品の割引、Buy 1 Get 1、ドリンク無料などです。売れ筋は牛丼に空心菜やギョーザなどのサイドメニューとドリンクのセット。配送費を数人で割ると割安になるからか、大人数用のファミリーメニューも人気でした」

 ロックダウンの時期はデリバリーはできなかったが、思わぬところから新規の注文が入った。昨年6~7月頃に、日系企業の工場から社員食堂用の注文があったのだ。1000人規模の注文で、食材を社員食堂に運んで調理するスタイル。これが口コミで広がったようで、300人規模の弁当の注文なども増え始めた。

「現在でも数社からご注文があります。時間に余裕があって商品の数が把握できますので、とてもありがたいです」

熊本地震で店舗を復旧
相手の気持ちに寄り添う

 デリバリーを伸ばそうと考える中で苦労したのは人材の確保。新型コロナ禍前は全15店で約350人が働き、正社員は約10%で残りは時給のパート。後者には学生も多く、学校が休校になったため郷里に帰り、そのまま辞めてしまう人も多かった。

 新規の募集で対応したが、採用後は教育が必要。ホール、調理、会計、清掃などオールラウンドの業務に対する教育期間は約2ヶ月だが、その時間が取れない。そこで、レジ、洗い物、手渡しなどポジションを細かくして仕事を振り分けた。

「食材の調達も大変でした。サプライヤーから品切れの連絡が来れば別のサプライヤーに急遽頼んだり、類似の商品を仕入れていました。食材のショートは絶対に避けたかった」

 こうした緊急時の人やモノへの対処には、平田氏の経験が活かされている。ベトナムに赴任する前の2016年4月に熊本県で起こった大地震、熊本地震での体験である。

 平田氏はその地域の店舗復旧のために熊本県に派遣されたが、到着翌日に2回目の地震が発生して全店が閉鎖。しかし、その2日後に全店を再開させた。なぜ短期間で復旧できたのか。

「人がいなければ店舗は再開できません。大切なのはスタッフの気持ちです。『一緒に店を開けよう!』と言うだけでは動いてくれないと、熊本地震の時に知りました」

 スタッフは被災者であり、その家族も同様だ。実家が崩壊したかもしれない。心配は尽きない。そんな話をじっくり聞いて、相手に寄り添うことで、店の再建に動いてくれた。店舗のライフラインを確認すると断水していた。10lのタンクで2tほどの水を福岡県からトラックで調達し、彼らと清掃を始めた。

「今回も同じです。新型コロナに感染する恐れもあるし、家族や友人が感染しているかもしれない。スタッフの不安を理解した上で声を掛けました。熊本での経験がなければ難しかったと思います」

営業再開を遅らせた理由
新型コロナ禍前のペースに戻す

 人材不足の中で幸いしたのは正社員が誰も辞めなかったこと。こまめに連絡して状況を確認していたが、何人かは退職すると考えていた。店舗や工場の中核クラスも辞めずに、彼らがいたから現場を仕切り直すことができたと振り返る。

 昨年10月に店内飲食は再開されたが、すき家は全店を11月に開店した。遅らせた理由は各店舗に十分なスタッフを集めたかったからだ。スタッフからF0やF1が出ると再度の閉店もあり得る。閉店と開店を繰り返すとお客様に迷惑がかかるため、一度開店したらそのまま続けられる体制を作りたかった。

「スタッフが十分に揃えば、仮にF1が出てもしっかりと清掃をして、シフトを組み変えれば、営業を続けられます。ただ、規制で店内の50%しか使えないので、売上は以前と同じにはなりません」

 今年は新型コロナ禍前と同じペースに戻すのが目標だ。ひとつは出店のペースで、1年で4店舗の新規出店を目指す。もうひとつは新商品を提供するペースで、まずは10万VND程度と低価格な「ウナギ」の販売からだ。

「日本では1年で200店舗ほど出店していた時期があり、当時の私は中核メンバーでした。その経験がありますし、人、モノ、金、情報をきちんと管理すれば、新型コロナ禍でも成長できます」

幅広いチャネルを用意
ホールスタッフがデリバリー

 2014年1月、ホーチミン市タンフー区のイオンモール・タンフーセラドン内に1号店を出店した丸亀製麺。現在(取材時)はホーチミン市7、ビンズン省1、ハノイ3、ハイフォン2の合計13店舗を持つ。親会社は日本のトリドールホールディングスで、ベトナムではLOTUS FOOD GROUPが運営を委託されている。

 店内飲食が禁止となってからは、デリバリーと店内テイクアウトにシフト。以前からデリバリーサービスはしていたが、全店舗のデリバリー体制を強化した。うどん、スープ、具材用の専用容器を分けて、美味しい食べ方の説明書を付けた。スープはレンジで温めてもらうようにしたが、注文から30分以内に届けるように努力した。

「どのチャネルからもオーダーできるように、Grab、Foody、BAEMIN、Nowなどと提携し、自社のホームページ、Facebook、Zaloなどからは直接オーダーできるようにしました」

 自社で配送するためのチームも作った。デリバリーだけになるとキッチンでの調理は続くが、ホールスタッフの仕事は少なくなるため、主に彼らに配送してもらったのだ。フードデリバリーと同額程度のデリバリー費用とガソリン代を支給した。

 どの飲食店でも同じだろうが、デリバリーのみになると売上は落ちた。そこには丸亀製麺ならではの悩みがあった。丸亀うどんの人気の理由はうどんの美味しさと低価格であり、そのためお客の約90%はベトナム人だ。

 しかし、安価な商品でも6万~7万VNDはする。デリバリーアプリで探せば2万5000VNDや3万VNDの食事は容易に見つかるため、価格だけで選ばれると競争力が落ちてしまうのだ。

「家族や仲間と集まって、作りたてを店内で食べるから価値が出るもの。ベトナム人が1人で家でうどんを食べるのは、まだ贅沢なんです」

グループ全体で支えるメニュー
ベトナム人目線のマーケティング

 LOTUS FOOD GROUPのチームは毎月1~2回、日本のトリドールホールディングスと会議を行っている。新型コロナを含めた現状の報告のほか、熱が入るのは新メニューの開発だ。新しもの好きのベトナム人に合わせており、他国に比べて新メニューの数が多いそうだ。

 採用となる約70%は日本からの提案だが、残りの約30%はベトナムからのアイデアだ。一例を紹介すると「BBQビーフ&北海道トマトうどん」。LOTUS FOOD GROUPが運営するダラットの畑で育てた、北海道品種のトマトをベースにしている。スパイシーな味付けのスープと甘いトマトが牛肉とうどんにうまくからみ、パクチーが良いアクセントになっている。

「フレッシュジュースも他国にはなかなかないメニューで、果物やジュースが好きなベトナム人に人気です。イチゴは私たちの農園で作ったものです」

 同社はスーパーマーケットやコンビニへ総菜などを卸しており、それを作る食品加工の生産工場を持つ。丸亀製麺で使われる多くの食材や素材もここから調達しているため、ロックダウンの時期を除けば、食材の品不足はなかったという。

 このように農園や工場など幅広いグループの力が丸亀うどんを支えており、加えてマーケティングも担当。商品そのものというより、日本の文化や日本人の好きなうどんなどを紹介しており、子供向けの手打ちうどん教室も開催した。

 丸亀製麺のスタッフは1店舗の平均で25人ほどで、全店で約320人。新型コロナの拡大で帰郷し、戻ってきていないスタッフもいるが、その割合は10%程度。営業を再開した現在、店舗の運営は順調に進んでいる。

デリバリー人気はパンとカレー
和食のオンラインキッチンを

 LOTUS FOOD GROUPはこれまで、数多くの日系企業と提携してベトナム進出をサポートしてきた。レストランでは7ブランド20店舗があり、総スタッフ数は約600人。丸亀製麺はその半数以上を占めている。

 丸亀うどん以外のブランドは、寿司の「ちよだ鮨」、カレーハウス「CoCo壱番屋」、牛丼の「吉野家」、ベーカリーの「コンセルボベトナム」、熟成肉バル「ウッシーナ」、肉バル「牛マニア」だ。

「デリバリーに強いのはベーカリーです。自宅でパンを食べたい人は増えていますし、安くて手軽に頼めますから。レストランチェーン店ではココイチ(CoCo壱番屋)への注文が多いです」

 商品によって異なるが、丸亀製麺のうどんは1杯8万VND程度、CoCo壱番屋のカレーは14万VND程度の価格帯だ。単価が高いのに売れる理由は、デリバリーのお客の約40%が外国人だからだと見ている。

「うどんと一緒で、ベトナム人はあまりお金を使ってくれませんね(笑)」

 ウッシーナと牛マニアは高級な肉バルなのでかなり高額となるため、デリバリーはしなかったが、レストランを再開した現在は予約が取れない状況だ。また、新型コロナで延期になっているのが「モスバーガー」の新規出店。新型コロナの様子を見ながら、早ければ今年4~5月にも開店したいと考えている。

「これからはデリバリー専用のオンラインキッチンを始めたいです。和食のメニューを手頃な価格で提供するスタイルで、食材はグループ内から調達できます。デリバリー用のオンラインプラットフォームも作りたく、付合いの長い銀行や投資家と資金調達の相談をしています」

 店内飲食禁止への対策は良い経験になったと語るMay社長。新型コロナ禍でも成功できる自信が付いたという。