きらぼし銀行は、ホーチミン市で日本の地方銀行初となるコンサルティング会社を設立し、10月1日から営業を開始する。General Directorの山下大輔氏にその意気込みを語ってもらった。
上海拠点で10年のノウハウ
キーワードは「ベトナム」
きらぼし銀行は東京都を中心に近隣県を含めて150を超える店舗を持つ地方銀行である。
その事業展開はユニークで、海外事業にも注力している。2009年8月に、中国・上海に100%子会社であるコンサルティング会社のKiraboshi Business Consulting Shanghaiを設立。日本の地方銀行として上海でのコンサルティング会社設立は初めてという。
当時、日本企業の中国進出が相次ぐ中で、お取引企業も相当数が中国に拠点を構えていた。こうしたお客さまから現地拠点でのサポートを求める声が高まり、コンサルティング会社の設立に至った。
「お客さまの信頼と期待に応えていくのが私たちの仕事です。常にお客さまからファーストコールをいただけるように努めています」
既存のお客さまだけでなく新規のお客さまの現地法人設立や各種申請のサポート、経営や事業戦略のアドバイスを行うことが仕事だ。お客さまの事業実態を把握しているからこそのコンサルティング活動が奏功して、上海拠点は売上が増加し、この10年でノウハウも蓄積できた。そして今年、ベトナムへ。ホーチミン市でも日本の地方銀行によるコンサルティング会社設立は初めてだそうだ。
「日本のお客さまの一番関心の高い国がベトナムです。進出だけでなく販路拡大などのビジネス展開で相談が多く、『ベトナム』がキーワードになっています」
以前から言われるチャイナプラスワンやタイプラスワンに加えて、最近では米中貿易戦争で中国からの生産拠点移転の検討をはじめた日系企業もある。中国からの場合は上海拠点と連携できることも大きなメリットだ。
「現地生産によるコストダウンもそうですが、最近ではベトナムを含めたサプライチェーンの構築や、内需を狙った国内販売のビジネスが増えています」
実態に沿った総合サポート
業務内容を具体的に見ていこう。地方銀行の特徴として、お取引先に中小企業が多い。海外に進出しても社長や経営陣が常駐することは難しく、現地のハンドリングやマネジメントが十分に行き届かないことも多い。
そこでお取引企業の商流、ビジネスモデルなどの事業性を理解している強みを生かして、同社が現地での業務運営をモニタリングしてレポートを作成、事業の実態に合わせたさまざまなアドバイスを行っている。日本ではきらぼし銀行海外戦略部アジアデスクがサポートする。
コンサルティングサービスは、長期間のサポート体制がメインだ。日本本社の事業内容からベトナムでの事業計画をアドバイスし、資金調達や資金繰りを考え、現地法人の設立や各種申請をサポートし、現地での事業スタートや販路拡大までを、各分野の専門家とも連携し、をワンストップで行う。
新たに生まれつつあるニーズにも柔軟に対応する。日本で働いたベトナム人の技能実習生は3年で帰国するが、そのタイミングでベトナム進出を考える企業もある。彼らを拠点長などとして現地法人を設立し、ベトナムでの新規展開を図ろうとする戦略だ。
しかし、元技能実習生には若い人も多く、彼らに経営やマネジメントの経験はまずない。そこで会計事務所と連携してさまざまな書類の作成をサポートしたり、企業運営の状況を確認したり、日本本社に報告・相談をして今後の展開を一緒に考える。
「こうしたニーズが高まっていることは確実です」
きらぼし銀行が地盤とする東京圏では製造業、不動産業、サービス業、IT系と多種多様で、1社で複数の業態を持つ企業もある。よって、業種を問わないサポートができる。
本気で始める事業サポート
山下氏は過去にホーチミンの駐在経験を持ち、現地事情に精通している。また、きらぼし銀行ではBIDV(ベトナム投資開発銀行)に行員を派遣している。ホーチミン市に進出したのはこうした理由の他、ベトナムの中でも既存のお取引先の進出が多く、日本での相談で同市への問い合わせが多かったこともある。そして山下氏と共にコンサルティングをサポートするのが、きらぼし銀行海外戦略部アジアデスクだ。
「銀行マンとしてはちょっと不謹慎かもしれませんが、今回のベトナムでのプロジェクトに、私は大変『ワクワク』しています。我々のキーワードは『ワクワク』なのです。本気でサポートいたしますので、本気でご相談していただければと思います」と山下氏は語る。