ホーチミン市の労働者への家賃補助金申請が遅れているのは、企業側が行政の指示を待っていることと、虚偽申請の摘発を恐れていることが主な原因だ。
3月末から政府は、340万人の労働者を対象に予算規模6兆6000億VNDの家賃補助政策に関する決定08号を公布した。補助金の交付を受けたい労働者は、働いている企業を通じて申請書を社会保険局に提出する。ホーチミン市は補助金対象者が120万人近くと最も多い地域で、2兆VNDの予算が組まれている。しかしながら、5月23日時点で、ホーチミン市社会保健局が受けた申請は2万1000件ほどで、全体の2%弱にとどまっている。
ホーチミン市ハイテクパークに入居するNidec Vietnamは、決定08号が公布されて以降、従業員に対して積極的に家賃補助政策を活用するように案内をおこなってきた。4月上旬に労働組合が社内食堂に申請フォームを設置し、従業員に情報を記入するよう指導した。2か月後に約2000人の従業員が申請書を作成したが、現時点ではいまだに社会保健局に提出されていない。
Nidec Vietnam労働組合のルー・キム・ホン組合長は、この理由として、会社が労働者の申請内容が正しくない場合に不正受給になることを恐れているからだと説明する。例えば、新入社員で使用期間中の場合、まだ社会保険には加入していない。このような労働者は、労働市場に復帰した労働者と同じグループとみなされ、毎月100万VNDの家賃補助が受けられる。ただし、会社は提出するリストの情報の正確性に責任を負わなければならない。しかし、対象となる労働者が本当に新たに労働市場に戻ってきたのか、別の企業から転職してきたのかを見極めるのは、非常に難しい。
「言うまでもなく、従業員が知り合いの家に居候して家賃を払っていない場合、家賃補助申請をおこなえば虚偽申告にあたります。」とホン組合長は話す。家賃補助申請フォームには3種類あり、フォーム1は、会社が申請リストを作成するための資料として従業員が自分で記入する。人事部が2000人近い従業員の住居を全て訪問して実態を把握するというのは不可能に近い。しかし、もし虚偽の申請で補助金を受け取れば、企業は回収の責任を負わなければならないのだ。
「従業員が退職してしまえば、回収は非常に難しくなります。その場合には、いったいどうやって返却資金を調達すればいいのでしょうか。」とホン組合長は話す。
会社側が説明するもう一つの理由は、決定08号が発行されてからホーチミン市の担当部署から連絡が来るまでに2か月もかかったことだ。その間、多くの企業は、申請手続きに関する情報に確信が持てないため、労働者へ申請を促すことが出来ずにいた。
ホーチミン市クチ県に所在するVietnam Samho労働組合のグエン・タイン・アン組合長は、決定08号が発行されるとすぐに会社は、県の労働局と社会保健局に連絡を取って手続きについて確認した。しかし、これらの機関は、ホーチミン市の指示が出るまで待つ必要があると回答した。約1か月経ってようやくホーチミン市人民委員会は実施計画を発表したが、更にその後も社会保健局と労働局の案内を待たなければならなかった。5月上旬になってようやく県の担当機関が会社の人事部に対して従業員へ展開するための案内をおこなった。
Vietnam Samho社には1万人以上の従業員がおり、そのうち40%弱が賃貸住宅に住んでいる。アン組合長によると、申請リストの作成と保健局への申請は早くても6月上旬ごろになる見込みだ。次に労働局にリストを提出し、更にクチ県人民委員会から費用が支給されるのを待たなければならない。
長年労働組合の幹部を務めてきたアン組合長は、まだ多くの問題が残っており、実際に従業員が補助金を受け取れるのはさらに先になるだろうと話す。例えば、補助金の申請書では労働者は家主の情報とサインをもらう必要がある。クチにある住宅の家主の多くはホーチミン市中心部に住んでおり、管理人を雇っている。労働者は、家主の顔も電場番号も知らず、日中は仕事に行くため、家主のサインをもらうというのは一仕事だ。
ハイテクパークに入居するSamsung HCMC CE Comples(SEHC)も情報が明確でないという同様の理由で、6000人以上いる従業員の家賃補助申請手続きを進めていない。SEHC労働組合のキウ・ゴック・ホア組合長は、2か月前から手続きを始めた周辺の企業もまだ申請できていないと話す。そのため、SEHCでは問題点が解決され、明確な情報が出てから従業員へ案内する考えだ。
「正しい申請でなければ修正や追記が必要となり、行ったり来たりさせられて従業員は落胆してしまいます。」とホア組合長は話す。現在、従業員は会社から毎月50万VNDの家賃補助を受けているので、ある程度落ち着いて手続きを待っている。
ホーチミン市社会保健局のファン・バン・メン局長は、5月23日の午後までに1855社の従業員2万1000人以上が申請書を提出し、社会保健局が全ての申請を承認したと述べた。サポートの対象となる120万人弱と比べて申請者数が少ないの企業からの申請が少ないからだと社会保健局は説明する。
ホーチミン市労働局のグエン・バン・ラム副局長は、ホーチミン市の家賃補助申請の審査は予定通りに実施されていると主張する。申請リストを提出する企業数も徐々に増加している。一部の企業が先に承認を受けられたのは、企業側がホーチミン市の指示を待たずに労働者の申請書類作成をサポートしたことによるものだ。
企業側への負担についてホーチミン市労働局は、積極的に説明と解決を目指すとしている。家主についてもホーチミン市では、各区と県の専門部門が家主に対して労働者の補助金申請をサポートするように呼びかけている。
出典:26/05/2022 VNEXPRESS
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