ベトナム経済回復の柱の一つが観光業だ。政府も6月から国内旅行の推進施策を進めており、国内線も通常運航に戻った。新型コロナ自粛でなまった体にご褒美を。週末を使ったベトナム小旅行に出かけませんか?(情報は6月上旬現在)
始まったベトナム国内移動
▲H.I.S. SONG HAN VIETNAM TOURISTハノイ支店の浅田純一氏
新型コロナウイルスの影響で、当面は海外に出られない。しかし、航空機の国内線も復活し、ベトナム国内であれば移動は自由になった。ならば国内旅行はどうだろうか? しばらく連休はないので、都市部から1~2泊で楽しめる小旅行だ。
H.I.S. SONG HAN VIETNAM TOURISTハノイ支店の浅田純一氏によれば、飛行機を使う日本人は増えてきたという。
「5月入ってハノイ・ホーチミン市など大都市間の出張がまず始まり、6月からは旅行も増えると思います。新型コロナで自粛が続いたこともあり、日本人の国内旅行ニーズは期待できます」
同社はベトナム人が対象の国内ツアーは販売していなかったが、収益の柱であるベトナム人の訪日旅行が組めない中、5月からこちらをスタートした。価格を抑えていることもあってか問合せは増加中だ。そんな同社におすすめスポットを尋ねた。
ハノイからちょっと田舎へ
まずはハノイ近郊から。日帰りか週末泊で、ホアビン省の農村地帯「マイチャウ」はどうだろうか。ハノイ市内から車で3時間半ほどで、古き良き(?)日本の田舎を思わせる村や緑が広がる。人気のアクティビティはハイキング、湖でのカヤック、鍾乳洞見学などで、目指すは「のんびり系」。当地に住む少数民族の人たちとも触れ合えて、ハンドメイドの刺繍や織物なども購入できる。
「私も行ったことがあります。のどかな田園風景で自然が満喫できますし、これからは夏のシーズンなので葉が青々と茂るでしょう。ご家族で行けばお子様も喜ぶと思いますよ」
外国人の入国制限で現在は異なるが、マイチャウを訪れる観光客の多くは欧米人のようだ。ローカル感満載のアジアの田園が彼らを呼ぶのだろう。
北部で近年観光客を集めているのがニンビン省。その大きな理由は2014年、「チャンアン景観遺跡群」がベトナム初の世界複合遺産になったことだ。場所にもよるがハノイ市内から車で2~3時間と立地も良い。
ニンビンにはボートクルーズが楽しめるチャンアン景勝地、10世紀の古都として知られるホアルー、奇岩が強烈なタムコック渓谷など観光名所が多いが、おすすめは東南アジア最大級の仏教寺と言われる「バイディン寺」。
とにかく広い、何でも大きい! その総敷地面積は約700ha、門から本堂まで約3kmもあるので電気自動車で移動、巨大な釣鐘は約36tの重さで、500体の阿羅漢像が並ぶ。本堂に入れば黄金尽くしで、中でも黄金の千手観音像は必見だ。
とにかく広い、何でも大きい! その総敷地面積は約700ha、門から本堂まで約3kmもあるので電気自動車で移動、巨大な釣鐘は約36tの重さで、500体の阿羅漢像が並ぶ。本堂に入れば黄金尽くしで、中でも黄金の千手観音像は必見だ。
「見学に時間はかかりますが、寺の敷地内にある宿泊施設に泊まれるのというのがおすすめの理由です。むしろバイディン寺をメインに、チャンアンをセットにして楽しむのも面白いですよ」
マニア向けと一般向け?
行くのに時間はかかるが、絶景マニアならぜひ世界第4の滝と言われる「バンゾックの滝」へどうぞ。いくつもの滝が並んで水を落とす姿は力強く圧巻で、落差約30m、最大幅約200mというベトナム一の規模を誇っている。
ベストシーズンは雨季の7月~9月なのでまさにこれからであり、滝壺の近くまで行く遊覧ボートも数多く出ている。ただ、場所がカオバン省の中国国境にあり、ハノイ市内から車で7~8時間と半日がかりとなる。寝台バスと一般のバスを乗り継いでいく方法もあるが、車をチャーターして早朝発、夕方前着とするのが現実的だ。
「川の手前がベトナムで向こう側が中国になります。中国側の観光客は多いもののベトナム側は少なく、中国側からの遊覧ボートはベトナムに着けられませんから、ゆっくりと楽しめます」
日本からの観光客はまず行かない絶景地であり、現地には宿泊施設もあるという。
ベトナムの観光地としてあまりに有名な、クアンニン省の「ハロン湾」に行った人は多いだろう。しかし、数時間のクルーズではなく、宿泊できる高級観光船に乗った人はあまりいないのではないか。
こうしたツアーは外国人観光客が主な対象だったが、新型コロナの影響で彼らが激減した今、最大50%OFFなどの割引をしている。もちろん我々も購入できるので、滅多にない機会を利用したい。ただ、ツアーにより割引率は異なり、既に予約で埋まっている場合もあるので、Webサイト等で事前のチェックは欠かせない。
「宿泊ツアーなら湾の奥まで行ったり、島に上陸するなどの体験もできますし、何より夕日と朝日を眺めるだけでも行く価値はあると思います」
南部は充実のホテルライフ
次は南部、ホーチミン市からの小旅行について。近場のビーチリゾートとしてはビントゥアン省に「ムイネー」と「ファンティエット」があるが、しばらく雨季が続くのであまり楽しめなさそうだ。ならば、ちょっと考え方を変えてゴージャスなホテルライフはいかがだろう。
メコンデルタ最大の都市である「カントー」は、ホーチミン市から車で約4時間ほどの距離。近年は経済都市としての発展が目覚ましいが、水上マーケットなどの観光地や穀倉地帯であることを活かした農村ツアーなどの見どころも多い。
そんなカントーで注目されているのが、メコン川支流のハウ川中州に建つホテル「アゼライ・カントー」だ。ラグジュアリーリゾートとして有名なアマングループの創始者であるエイドリアン・ゼッカ氏による新ブランドで、1島まるごとがプライベートリゾート。各国のVIPも訪れるという。
「中州にあるのでボートでしかホテルに行けません。なぜカントーにできたのかは知りませんが(笑)、ホテルライフが好きな方ならアマンのサービスとクオリティをベトナムで存分に楽しめます」
カントー市内や観光地にはあえて寄らず、直行直帰(?)でホーチミン市とホテルを往復。そんな小旅行があってもいい。
移動に手間と時間は掛かってしまうが、復活した国内線に乗って45分ほど。週末旅行でバリア・ブンタウ省のコンダオ島も面白い。ビーチリゾートでありダイビングやシュノーケリングも楽しいが、5~10月ならウミガメの産卵と孵化の見学ツアーに参加できる。
場所はラグジュアリーホテルの「シックスセンシズコンダオ」。ホテルからほど近い島にウミガメの卵を保護する施設を持ち、卵から孵化した赤ちゃん亀を海へ戻しているのだ。自然保護区指定国立公園であるコンダオ島ならではのアトラクションで、ベトナムというより世界でも貴重な経験となるはずだ。
「卵が孵化する確率は約95%と聞いていますので、2泊すれば1回はチャンスがありそうです。子連れのファミリー旅行でも楽しめる場所だと思います」
足を延ばして中部リゾート
こちらも飛行機での移動となってしまうが、浅田氏が季節的に9月まで勧めるのが中部のビーチリゾート。カインホア省のニャチャン、ダナン、ビンディン省のクイニョンで、最低2泊、できれば有給休暇を取って3泊で行きたい。
特にニャチャンは今、カムラン国際空港周辺が開発されて、新しいホテルが次々と建設されている。モーベンピックリゾートカムラン、ラディソンブルーリゾートカムランなどで、ホテルのクオリティと共に注目されるのが立地だ。ニャチャンの中心部およびメインビーチには空港から車で50分ほどかかるが、こちらの地域は10分程度と激近だ。
「海の透明度も市内周辺より高く、中心部に用事がない、むしろ行きたくないと考える人であれば、新しいタイプのバカンスが楽しめるでしょう」
ベトナムでは今、上記ハロン湾クルーズのようなツアー料金の値下げや観光名所の入場料引下げなど、観光需要の刺激策が次々と打ち出されている。ベトナム人が対象だが、我々の 「相乗り」が少しでもこの国の観光業に役立てば、一挙両得だ。