全てを呑み込んだ濁流と土砂
ディエンビエン省サーズン村ハンプーシー集落は、8月初旬に発生した歴史的な土石流と土砂崩れにより、壊滅的な被害を受けた。村は泥と倒木に覆われ、穏やかな生活を送っていた住民たちは一夜にしてすべてを失った。
とりわけ深刻な被害が出たのは、7月31日深夜から8月1日未明にかけての集中豪雨による災害である。当時、集落を流れるハンプーシー川の水位が急上昇し、午前2時頃、住民は急ぎ高台へ避難した。その直後、大きな爆発音とともに土砂が一気に村を襲い、わずか10分間で生活基盤は完全に破壊された。
「逃げろ、さもなければ死ぬぞ」──恐怖の一夜
被災者の一人、ジャン・ティ・サウさん(30歳)は「あの晩、村ではこれまで一度も経験したことのない音が響き、まるで山全体が崩れ落ちるようでした」と当時の恐怖を語る。家は押し潰され、田畑は埋まり、家財一切が濁流に流された。現在は親戚宅に身を寄せ、生活再建の目処は立っていないという。
命を救った若き村長の決断
その夜、命を懸けて80人の住民を救ったのが、26歳の若き村長ムア・ア・ティ氏である。午前2時ごろ、異変を察知したティ氏は、家族の制止を振り切り、豪雨の中レインコートと懐中電灯を手に村の中心部へ走った。
危険地域に集まっていた住民を一人ひとり安全な高台へ誘導し、移動の際は土砂災害を避けるため、少人数ずつ4~5m間隔での行動を徹底。避難から約1時間後、かつて住民が一時身を寄せた家は土砂に飲まれた。
ティ氏は「もしあのとき行かなかったら、村人の信頼を裏切ることになっていた。自分のことは後回し」と語った。残念ながら2人の子どもを救えなかったことが、今も彼の胸を締め付けている。
迅速な対応と支援体制
8月3日、ディエンビエン省人民委員会のレ・タイン・ドー主席は、1,200人以上の警察、軍、民兵、地方職員による救援部隊が全ての孤立地域に到達し、被災者支援にあたっていると発表した。
住居を失ったすべての世帯が安全な場所へ移され、食料・水・生活必需品が確保された。また、ムア・ア・ティ氏の勇気ある行動に対しては、正式な表彰が検討されている。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
ベトナム進出支援LAI VIEN