「労働者にとって住みやすい都市」への転換が急務
ホーチミン市では、出稼ぎ労働者が地元に戻る動きが拡大している。専門家は、労働者が安心して暮らし、働ける「住みやすい都市」への再構築が必要だと指摘する。
流出の背景 ―「押し出す力」と「引き寄せる力」
ホーチミン市社会人文科学大学のフイン・ホー・ダイ・ギア講師は、労働者流出を「プッシュ・プル理論」で分析する。
労働者を押し出す要因には、生活費の高さ、住居や医療・教育の不足、治安の不安、収入不足、さらに故郷への望郷の念がある。
一方で、地方の「引き寄せる力」は強まっている。新しい工業団地の建設、低コストの生活、改善されつつある社会インフラ、そして家族とのつながりが、労働者を故郷へ呼び戻している。
ホーチミン市に求められる政策
労働者を引き留めるためには、様々な面でのアプローチが必要だ。
- 社会住宅や従業員寮の整備と、学校・病院・公共スペースの併設。
- 生活費支援や生活必需品への補助。
- 公共交通機関の充実、治安改善、緑地の拡大。
- 賃金水準を生活費に見合うものとし、長期的なスキル習得とキャリア形成を支援。
技術革新と人材戦略
労働者流出は、逆に企業の自動化・技術導入を促す面もある。
ギア講師は、「トリプル・ヘリックス・モデル」(行政・企業・大学の連携)を提唱する。行政は制度設計と資金支援、企業は技能ニーズの提示と教育機会の提供、大学は短期的で柔軟な研修・資格制度を設計する。
ただし、労働者にとっては実践的で短期間の現場研修が必要だ。移動式研修センターや無償職業訓練基金など、現場に近い支援が効果的だとされる。
地方の受け入れ準備
一方、地方では労働者を受け入れるための体制整備が課題だ。
- 環境に配慮した新世代工業団地の整備
- 再生可能エネルギーを含む安定的な電力・水道・高速インターネットの供給
- 社会住宅や地方病院、教育機関の整備
- 行政手続きの簡素化と透明性
地方自治体が「住みやすい工業都市」を実現できれば、労働者の定着と企業誘致の両立が可能になる。
「住みやすい都市」こそ競争力
ホーチミン市が今後も競争力を維持するためには、単なる雇用の場ではなく、労働者が家族とともに安定し、将来を描ける都市へと進化する必要がある。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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