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特集記事Vol.187|進化系アミューズメント!|切り拓く余暇市場

経済成長に伴う収入増や生活スタイルの変化から、ベトナム人の余暇需要は量から質へ、そして体験消費へとシフトしている。その新しい受け皿が多彩なアミューズメントであり、日系企業も走り始めている。

GiGO VIETNAMの榊 浩一郎氏

 大手ゲームメーカーの店舗を祖に持つ株式会社GENDA GiGO Entertainmentは、アミューズメント施設運営を主事業とする。ゲーム機はレースゲーム、シューティングゲーム、音楽ゲーム、プリントシール機など多彩だが、圧倒的な強みを持つのがクレーンゲームだ。

「クレーンゲームで獲得できるアミューズメント専用景品の種類は非常に豊富で、若い方だけでなく、中高年のお客様もとても増えています」

 同社はこうしたゲーム機を揃えたGiGO(ギーゴ)グループの店を約600店舗運営。そのうち190店舗は海外で、北米に179店舗、台湾に8店舗、ベトナムに3店舗ある(2025年8月1日現在)。

 自社で現地法人を設立し、「GiGO」の屋号でスタッフが常駐する有人店舗を運営するのは、台湾、中国に続き、3ヶ国目となる。

「経済成長が続く熱気のある国。平均年齢が若くて子どもも多い。進出先として最もふさわしいと選ばれました」

 2023年夏から準備を始めて、榊氏が2024年5月に来越、翌6月には「GiGO VIETNAM.」が設立された。榊氏は主に現地スタッフの採用と教育を担当。そして同年9月、アミューズメント施設「GiGO」を、ホーチミン市内の2つのショッピングセンターにオープンした。

 2店舗のうち大きい店舗にはゲーム機122台があり、クレーンゲームが73台、リデンプションが47台、⾳楽ゲームが2台。クレーンゲームは主力商品であると同時にベトナムにはまだ少なく、差別化を図る意味でも最多となった。

3本爪のクレーンゲーム

 一方、リデンプションは日本の施設にはなく、ゲーム終了後に得点に応じてチケットが得られるゲームの総称で、ドライビングゲーム、シューティングゲーム、スポーツゲームなど種類は問わない。チケットを貯めて施設内の景品または飲料、菓子などと交換できるのが特徴だ。

「日本では規制のために設置が難しいですが、リデンプションは海外のアミューズメント施設では主流で、そのためクレーンゲームの次に多く設置しています。加えて、GiGOならではの日本製の機械もたくさん設置していて、他店との差別化を図っています。ベトナムにも日本製機械のファンが多く存在し、ゲーム大会を開催するなど大いに賑わっています」

景品を持ち上げるクレーンゲームのクレーン

 日本と異なる点のひとつはゲーム機で、多くの機械が中国製であり、世界市場でのアーケードゲームは中国製が圧倒的なシェアを持つ。

 また、日本のクレーンゲームはアームが2つの2本爪が一般的だが、海外は3本爪が基本。そのため、日本では操作に熟練した人が景品を獲得する「スキルゲーム」になるが、3本爪は景品を掴みやすいのでどうしてもゲーム性が薄くなる。そのため従業員は、顧客にワクワクしながらクレーンゲームを遊んでもらえるような調整や、対応を心がけているとのことだ。

 クレーンゲームの景品も少々異なる。当初は日本から専用景品を輸入していたが、どうしても単価が高くなってしまう。そこで一般的なローカル商品を増やしバリエーション豊かな景品を取り揃えるようにして、ベトナム人にもクレーンゲームの楽しさを体感してもらえるよう努力しているそうだ。

 顧客は20代の若者と、両親が30代で小さな子供がいるファミリーがメイン。消費金額は10万VND程度が多いそうだ。来店の動機は日本なら複数あるが、成熟前のベトナムでは食事までの時間潰しといった「立ち寄り」が9割。残り1割は、「日本アニメのファンの方や、ゲームファンの方」。

ゲームで遊ぶ子供

 2025年4月にはホーチミン市のショッピングセンターVincom Mega Mall Thao DienにGiGOのベトナム3号店「GiGO Vincom Mega Mall Thao Dien」をオープン。隣には屋内テーマパーク「Little Planet」を同時開業した。

 Little Planetは日本のリトプラが手がける次世代型デジタルテーマパークで、GENDA GiGO Entertainmentがベトナムでは初めて運営している。

 Little Planetには多くのアトラクションがあり、ベトナムでは光と音のボールプール「ZABOOM JOURNEY」やAR(拡張現実)技術を使った砂遊び「SAND PARTY!」など9種を提供している。選んだ基準は、日本固有ではなく、見てすぐに理解できて、すぐに遊べること。ベトナムでは日本と違い、多くの国の人たちが遊びに来るためだ。

 こうしたショッピングセンター内の「プレイグラウンド」は、日本より生活に密着しており、週末に家族連れで超満員になることも多い。この土壌があったためにLittle Planetを展開したのだ。

「場所柄もあって最初は欧米人の方が多かったのですが、今ではベトナム人の方も同じぐらい来店していただき、皆様に受け入れらていることを実感しています。家族連れを中心に土日は150人ほどが利用、アミューズメント施設の来客数は約400人ですので、多数の方にご利用いただいております」

Little PlanetのZABOOM JOURNEY

 上記の数字は期待以上で、数年後の市場拡大を確信している。世界の流れと同じく、ベトナムの若者も日本のアニメが好きな人が多い。共通する「キャラクター」を愛する人が増え、好きなものにお金を使いたい、使える人が年々増加していると感じている。

「そのため、今後は日本のアニメ景品がさらに注目されると考えています。その頃に『クレーンゲームでしか入手できません』という『限定の景品』が作れたら、絶対に人が殺到すると思います。日本もそうでしたから」

リデンプションのコインゲームで遊ぶ人

 ベトナムでの店舗運営は始まったばかりだ。顧客が楽しめる日本のモノ・コトを提供し、それを文化として発信することを目標にしているそうだ。そのために、今後もベトナム人に楽しんでもらえる店をたくさん増やしていきたいと考えている。

「GiGOのベトナムローカライズを一緒に考えていただける現地企業様を探して、いつか実現できればと思っています。GiGOの今後の展開にご期待ください」

リポットの吉田拓麻氏

 猫たちに囲まれる癒しの空間、猫カフェ。日本で「猫カフェMOCHA(モカ)」をチェーン展開するリポットは業界大手で、東京、大阪、名古屋、福岡などで35店舗を運営する(取材時)。

猫カフェの食事風景

 1号店は2015年にオープンした池袋本店。その当時から猫カフェはあったが、個人経営が多く、店舗はワンルームマンションの1室なども。気になったのが獣臭だ。

「内装にこだわり、清潔な空間を提供できれば、市場がもっと広がると思いました。実際に猫カフェに来店したことのないお客様を獲得できて、出店を重ねていきました」

 猫カフェMOCHAはカフェだけでなく、ワーキングスペースや漫画喫茶としても利用でき、中心となるのが「猫と遊ぶ」。その猫たちは1店舗に平均20匹。猫専用の管理部がブリーダーと専属契約しており、店舗の開業や猫の入替えの際には厳選された猫を紹介してもらっている。

 店舗の立地は大きく2つあり、ターミナル駅近くのビル内と、ショッピングセンターなどの商業施設。前者は若い女性やカップル、後者は若者に加えて子供連れの若いファミリーが中心で、観光地でもある秋葉原、新宿、渋谷などでは外国人客も多い。

「全体的な調査では男女比は男性4:女性6、年代は20~30代が66%を占めています」

 オープン当初は試行錯誤もしたが、猫の健康管理では獣医と連携し、健康チェックシートを社内共有するなど、疾病予防や早期発見を徹底している。また、開業10年のデータを蓄積してマニュアルに反映させている。

 顧客と事業を広げる中で、イオンモールへの出店が増えてきた。このつながりからベトナムに出店するのだが、その前に疑問に思うことがあった。東南アジアには元々猫カフェがあり、ベトナムも比較的多かった。それでも訪日した東南アジア人やベトナム人がわざわざ猫カフェに行くのはなぜなのか。

「調べると清潔感がとても歓迎され、内装に凝った居心地の良さが評価されていました。参入した10年前と同じ状況ならば、海外に拡大できると思いました」

猫カフェで猫と遊ぶ子供

 2022~2023年にはイオンの海外店舗がある中国、カンボジア、ベトナム、インドネシアを巡る視察ツアーを慣行。その後、最も興味を持ったベトナムをイオンから勧められ、新規開業するフエ店への進出を決断する。ほぼ同じタイミングでハノイのハドン店を打診されて、2店舗の出店を決めた。

 海外初となる2024年6月の韓国カンナム店に続いて、2ヶ国目となるベトナムで2024年9月に猫カフェMOCHAのイオンモールフエ店、次いでイオンモールハドン店をオープンした。

 こだわったのは日本と同じ品質。日本と同等の設計や内装ができる業者に発注し、店舗で履き替えるスリッパの殺菌マシン、レジシステムなどは日本から輸入した。備品や猫の餌などはベトナム調達だが、クオリティにかかわる大型設備は輸入とした。

「猫たちも日本から連れて行きました。皆、日本生まれの猫です」

 客層は日本と変わらず、一番多いのが若い女性で約6割、イオンモールとあって次にファミリー層、単独の男性は1割程度だそうだ。

 平均的な来客数は予想より平日と週末の差が大きく、週末は平日の3倍ほどで1日約200人。日本と大きく異なるのがピーク時間で、日本は14:00~18:00が混むが、ベトナムは20:00~22:00。モールでの食事を終えてから訪れる人が多いようだ。

猫カフェ店内でくつろぐ猫

 猫との過ごし方も日本式を提案。カフェに加えて、パソコンでの作業環境、ベトナム語の日本のコミックを用意。椅子だけでなくソファや床スペースを揃えて、リラックスできる環境を作った。

「猫のいる空間での過ごし方はそれぞれなので、自由にくつろいでほしいです。滞在時間は日本より短くて60~70分が多いですね」

 SNSやWebの口コミを読むと、1番多いコメントが「すごく清潔」や「清掃が行き届いている」などの清潔感。「日本からの猫なのでとてもかわいい」など日本ブランドへの好意的な意見も目立つ。

 逆に猫に関する要望は少なく、品種や毛色が重ならない気配りが理由とも考えている。

 オープンしてから1年が過ぎた。フエ店は中部初のイオンモールで、その開業に合わせた出店だったため、先行きが読めない不安もあった。ただ、最近では売上が安定してきて、今後の伸びが期待できるそうだ。ハノイのハドン店は元々の来館者数が多かったこともあり、売上は右肩上がりを順調に続けている。

 ベトナムの特徴も見えてきた。夏休みなどの連休は人が集まるが、誕生日などの記念日は街に繰り出すようで来客は減る。また、中北部の違いでは、フエはテトに帰省する人が多いからか店は混んだが、ハノイは逆に少なかった。

「現地スタッフの話では、フエは帰省者が多く、できたばかりのイオンに家族で行ったとのことです」

 余暇にゆっくりしたいのは日本と同じトレンドで、「コト消費」や「体験」にベトナム人は動いているという。また、ペットを飼う人は法整備が徐々に進む中で増えており、接し方やケアが日本レベルに向上すれば、猫カフェやペットカフェの需要も高まると語る。

猫カフェ店内で居眠りする猫

 今後の出店も考えており、ベトナム人スタッフとも相談しながら出店場所を探している。ショッピングセンター以外には路面店も候補のひとつ。例えば、ハノイ旧市街に路面店を作れば、日本の秋葉原のような外国人観光客が集まる場所が生まれるかもしれない。南部のホーチミン市も有力候補だ。

「猫との接し方は世界共通。お客さんも、スタッフだって、かわいい猫たちを見ると自然と笑みがこぼれるんです」

ベカメックス東急の西村怜央氏

 ホーチミン市(旧ビンズン省)のビンズン新都市で、2012年から住宅や商業施設の開発を続けるベカメックス東急。住宅では高層コンドミニアムのSORA gardens Iが2015年、SORA gardens IIが2021年に竣工し、SORA gardensエリアでは約1000戸を供給。その購買力を担うショッピングセンターのSORA gardens SC(SC)が2023年7月に開業予定となった。

 SCには2棟の住民と共に近隣からの来客も予想されたが、買い物だけで終わるのではなく、新都市に留まって街を楽しんでもらいたいという思いがあった。

「街に滞留して、回遊していただくために動線の設計をしました。そこで考えられたのがスポーツ施設のSORA gardens Links(Links)です」

 名称の「リンクス」には、動線のために街をつなげるリンクと、人と人をつなげるリンクという2つの意味が込められた。

 SORA gardensが2棟並び、その前に多彩な飲食店やカフェを配置。昼夜を問わず溜まれる場所を作って、その全体を含めた「目的地」として行けるLinksを完成させた。SCオープン1ヶ月前の2023年6月である。

「スポーツもエンターテインメントです。好きな映画に行くように、着替えて練習をする、試合に参加するなどの目的性が高くなるため、しっかりと誘導できます」

 施設のひとつは野球グラウンドで、別のエリアにあったがLinksに移転した。主に日系の草野球チームが週末に使用しており、バスで来訪して食事もする。台湾や韓国のチームとの試合や応援者も増えるなど、「リンクス」が大きくなっている。

 もうひとつはスケートボードパーク。スケートボードは2021年の東京オリンピックに正式種目として採用され、日本人が多くのメダルを獲得した。その将来性と手軽に始められることから無料で開放しており、多いのはチームでの参加だが、ローラーブレードやBMXの場としても親しまれている。

「昨年の1周年記念ではDJブースを作って音楽を流しながらイベントをして、大変盛り上がりました」

 最後の施設が屋根付きフットサルコート。ベカメックス東急は川崎フロンターレと協力して2021年にサッカースクールを開校したが、以前は屋外練習場だったので雨天は中止となっていた。サッカースクールのコーチや生徒、川崎フロンターレからの熱望で作られたのがこの屋根付きコートだ。

「Linksの目玉施設です。すべてが人工芝のコートが2面あってシャワーやトイレ、クラブハウスも完備。隣に屋外コートが2面あるので合計4面が使えます」

 平日夕方からは子どもたち、また大人のためのサッカースクールとして稼働していたが、思わぬ「リンクス」が生まれた。綺麗な人工芝が敷かれた約4000㎡の屋内施設が注目され、企業のフットサル大会からそれ以外のスポーツ、式典までの使用依頼が増えていった。

「ベトナムの行政機関の周年式典や、ヨガ協会の表彰式など、予想外の需要に驚きました。ヨガでは朝5時から1000人弱が集まりました(笑)」

 サッカースクールも広がりを見せる。当初は5~12歳向けだったが、4~8歳と9~15歳にクラス分けした。参加者はおよそベトナム人8割・外国人2割で、ホーチミン市などへの出張スクールやカップ(大会)も増えている。大人向けは男性が中心だが、女性向けイベントも定期的に開催し、将来的にはスクールを作る計画もある。

 こうした動きに拍車をかけたのが、2025年8⽉に新しくオープンしたピックルボール専用コートだ。ピックルボールとは卓球、テニス、バドミントンを元にしたスポーツで、若者を中心にベトナムで急速に競技人口を増やしている。

 屋根付きコートが6面あり、男女別更衣室、トイレ、シャワーを完備。フットサルコートと同じく練習から競技大会まで使用できる。ベトナムではまだ珍しいスポーツ施設のネーミングライツはTOTO VIETNAMが取得し、「TOTO NEOREST Pickleball Court」の名称となった。

「営業時間は毎日5:00~23:00で、6面がかなり埋まっています。ピックルボールのコミュニティは既に多く、職場の仲間を誘うケースが多いと感じます」

 予約のピークは平日の17:00~20:00頃で、退社後の充実感が想像される。週末も人気で、総じてベトナム人が7割、日本人、台湾人、韓国人などの外国人も多い。

 ホーチミン市内で急増しているピックルボールコートと同様に、ビンズン新都市のコートも専用のアプリで予約が可能となっており、ビンズン新都市や近隣の需要だけで予約が埋まる状況だ。

 ビンズン新都市の住民には中間層以上が多いと思われるが、それでも余暇時間にサッカーやピックルボール、野球やスケートボードを楽しむ人たちは確実に増えている。

 日本の都市開発で数多くの実績を持つ東急系列のベカメックス東急は、ビンズン新都市で「7つの環境整備」を宣言しており、そのひとつが「文化・エンターテイメント」だ。

 スポーツもその中に含まれ、Linksのほかにも2018年から「ベトナム 日本国際ユースカップU- 13大会」を続けており、日本とベトナム、他国からも集まった子どもたちによる国際大会をLinksで開催している。

 また、日越交流イベントの「東急グループ ジャパンフェスティバル」を毎年3月に開催しており、今年の8回目は土日で約8万5000人が参加した。新都市の住民が約2万人なので、15~20㎞圏内の人たちが来訪していると思われる。

 住民へのヒアリングによれば、今後のニーズとしてミュージックスクールやアートスクールがあり、招待を望む人物も数多く挙がっているそうだ。

「街作りのコンセプトは『Always NEW!』です。ここにしかないものを先駆けて作っていきます」

執筆者紹介

取材・執筆:高橋正志(ACCESS編集長)
ベトナム在住11年。日本とベトナムで約25年の編集者とライターの経験を持つ。
専門はビジネス全般。