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ベトナムビジネス特集Vol137
新型コロナに直面!我ら日系企業の底力

危機に直面した際に本当の実力が発揮される。厳しい規制の中で工場操業を続ける、危機管理を徹底しながら小売りの最前線を守る、社内で感染者が発覚して対応に追われる。皆が今、奮闘している。※情報はすべて取材時のものです。

TOWA INDUSTRIAL VIETNAM
CEO 渡邉 豊氏

無駄でもいいからすぐに準備
自社ワーカーの育った環境を考慮

 7月15日からホーチミン市で始まり、周辺の省へも広がった、工場継続に対する厳しい規制。操業のためにはどちらかの条件を満たす必要がある。1つは工場内で製造、飲食、休憩すること。つまり、工場への「泊まり込み」になる。もう1つはホテルなどの宿泊場所を用意し、1ルートで従業員を工場へ送迎すること。

 前者を選択した東和インダストリアルベトナムの渡邉豊氏は、従業員と共に工場で寝起きしている。同社は建設機械、産業機械、アパレル機器などで使われる精密部品のサプライヤーで、ホーチミン市のタントゥアン輸出加工区に3工場、南部ビンロン省に1工場を持つ。

「ベトナムに進出して26年が経ちますが、今が一番厳しい状況です。生産を続ける理由はサプライチェーンを切らさないためです」

 南部での感染拡大を予期して、6月25日には北部バクザン省での工場宿泊のウェビナーに参加。日本語を解する幹部全員と通訳者で総勢18人、モニターにつないで日本語話者のベトナム人従業員全員にも閲覧させた。現場のベトナム人の意見が聞きたかったからだ。

 その日のうちに委員会を立ち上げた。無駄になってもすぐに準備をしようと、蚊帳、洗濯機、冷蔵庫などの購入品をピックアップし、調達先を調べて、見積りを取った。その基準は、ベトナム人ワーカーのこれまで育ってきた生活環境だ。彼らには都会暮らしの中産階級は少ないし、40代以降の管理職でも物のない戦後時代を過ごしている。

「ベトナム人と日本人は住居感覚が違う。彼らは会社での宿泊に日本人が思うほど強い拒絶意識はないようで、かつ思いのほかタフです」

従業員による自炊

 ホーチミン市の3工場は行き来を禁止し、渡邉氏、副社長、工場長を各工場に配した。感染者が出ても他の工場で操業するためだ。シフトは2交代制として14日間でチェンジ。潜伏期間の2週間に合わせたもので、シフトが変わるときは工場を消毒する。

305人が工場に宿泊
生活のための細かな配慮

 工場内宿泊は7月8日の夜から始めた。ホーチミン市内3工場での従業員は約730人。宿泊の希望者を募ると、まず賃金(時間給)の提示で290人が手を挙げ、2週間後のボーナスを伝えると50人が増え、合計340人になった。

 社内ではクイック検査(抗原検査)を72時間毎に繰り返しており、7月6日の検査中に、家庭内感染のF0が1人見つかる。工場内のカメラでF1とF2が認定され、宿泊生産は305人でスタートした。

「人員が40%となり、検査などの時間を考慮すれば実質的な生産量は35%程度です。在庫を考慮して生産計画を調整し、輸送手段を確保するなどして、何とか進めています」

 工業団地の管理会社に車両を登録し、ドライバーが72時間毎の検査で陰性となれば、物流は継続できた。つまり、宿泊生産をスタートさせて、後から生活面での準備や改善ができる。

 宿泊場所はソーシャルディスタンス用に作った昼寝スペースで、マットを敷いて、蚊帳を掛けた。保険局の監査で指摘された改善点が、操業と就寝時にはエアコンを使わないこと。エアコンの送風が感染を広げるという理由からだが、寝るとき窓を開けると蚊が入ってくる。そのための蚊帳だ。

 当初はケータリングが主体だったが、スタッフの希望もあって自炊を実行。仮設のキッチンと社員食堂を作って、業務用冷蔵庫を購入した。不足する食料はビンロン省から送ってもらっている。

「元コックとか料理好きな人もいて、従業員が交代で作っています。これが結構美味しくて、毎日写真で記録しています(笑)。ベトナム人は塩の使い方が上手だと改めて知りました」

 保険局や医師の勧めもあって、ビタミン補給用のサプリメント、ヨーグルト、プリンなどを副食として提供。少しでも楽しんでもらいたいと、予算は制限なしだ。

工場内での食事

 洗濯用の洗濯機、シャワー用の湯沸器も購入した。従業員は水シャワーで大丈夫と言うが風邪をひかれても困るし、温かなシャワーはストレス緩和にもなると設置。気分転換のためにテレビを買おうと提案すると、「それならWi-Fiを強くしてほしい」。自由時間はスマホを楽しむ人が多いからで、充電用の延長コードも買った。

理容師の経験者が従業員を散髪

この時期は社員と一緒に暮らす
サプライチェーンは止めない

 渡邉氏は、宿泊の準備にはベトナム人の生活感を理解し、彼らの目線で考えるべきと語る。加えて大切なのが即断即決するスピードで、見切り発車で良いから進み、後で改善すればよいという。そして、すべては社長の自己責任。

「こんなときだからこそ社員と一緒にいたい。信頼してくれるし、安心してくれます。彼らの様子も食事の内容もわかる。社長室の窓から外を見ていると、社員が手を振ってくれます。6月中旬に一時帰国の予定でしたが、帰らなくてよかったです」

 宿泊仕事がしたいという自宅待機の社員が増えている。工場宿泊で働けば割増賃金になり、検査が受けられ、食事も提供されるからだ、しかし、外部からの感染リスクと、当局の監査の遅延などから、当面は考えていない。

監査を受ける様子

 常に頭から離れないのはサプライチェーンのこと。そのためにも、今はワクチン。全従業員は1回目の接種を終えており、2回目の実施を待ちかねている。

「慣れたので体は疲れません。ただ、朝から日本との打合せが続くなどで終日緊張していて、仕事が終わると何もしたくないですね(笑)。それでもサプライチェーンはつなげたい。ベトナムの製造業が当てにならないと思われたら、投資して長年苦労してきた元も子もないじゃないですか」

AEON VIETNAM
General Director 古澤康之氏

従業員が総出で支える店舗
当局の要請で移動販売も

 ロックダウンが続き、伝統市場も閉鎖される中、市民の生活を支えているのはスーパーマーケットやコンビニエンスストアだ。不特定多数の顧客と接する販売員は常に感染の危機にあるが、それでも日々店頭に立つ。

 ベトナム全土で6店舗のGMS(総合スーパー)を運営するイオンベトナムは現在、食品売場だけを営業している。通常より混雑はしているものの、買物の頻度が減ったため、顧客が一度に買う量は以前の2~3倍になっているそうだ。イートイン用のデリカのスペースは閉鎖して、必需品を販売している。

 館内のトイレや洗面台は感染対策で1つずつ空けており、水沫が飛ぶという理由でハンドドライヤーは使用を停止。空気が循環するように換気の頻度を上げ、滞留しやすい場所にはサーキュレーターを付けるなどして換気を促進。グループ企業であるコンビニのシティマートやミニストップはテナントとして入居しており、設備は自社で管理できないため、換気量を計算して不足分はドアを開けるなどで対処している。

 店舗の販売員はマスク、消毒、ソーシャルディスタンス、アクリルボードなどを徹底し、本部のスタッフは分散勤務とテレワークなどで接触回数と出勤回数を減らし、部署機能を維持している。

「それでも店舗では多くのお客様をお迎えするので、1日に必要なスタッフはかなりの数になります。その確保が難しくなっています」

 地域やマンションの封鎖、顧客からF1となっての隔離などで、出勤できない従業員も多い。その数は前後するが全従業員の約2割、多い時で4割近くに達するという。同社では必要があれば彼らに、ホテルなどの宿泊施設を用意している。

 一方、営業を中止している生活関連部門などの従業員を食品部門に移し、部署を問わずに営業活動を応援している。売り場が違えば勝手も違うが、皆が使命感を持って仕事に当たっているという。

 伝統市場が数多く閉鎖された南部では、当局から移動販売の要請があった。そこで、市内の2店舗から指定された11ヶ所にトラックで食品を運び、炎天下の中で販売している。順番を待つ人には椅子を用意して距離を取っており、顧客はとても協力的だそうだ。

移動販売の商品の運搬

「政府関係者が交通整理やお客様の整理などを手伝ってくれて、とても助かっています。今後は販売場所が増えるかもしれませんし、他省からの依頼があるかもしれません」

移動販売の様子

EC、電子マネー、レジ
新型コロナが起こす変化

 近所の小型店で買物をしたいというニーズが強く、シティマートやミニストップはどこも好調なようだ。こちらは1店舗のスタッフ数が少ないので、応援にも限りがあるが、一致団結して営業を維持している。ただ、感染者の来店が発覚して営業停止となる店舗もあるという。

「こうした店は市民生活の基盤になっています。消毒など最大限の対応はするので営業停止は最小限に留めてほしいと、商工局や商工省と話しているところです」

 新型コロナが促進しているのがEC販売だ。イオンベトナムでは通常より約3倍増えており、商品のピックアップや梱包作業に人を集中させている。

「これからはECを伸ばすつもりです。今回は初めて使う方もいるようですが、利便性を知ったら後戻りはしないはず。ECで何が買われて、リアルで何が好まれるのかを調査する予定です」

 支払いでは電子マネーなどを使ったキャッシュレス化が進む。イオンベトナムでは昨年同時期と比較して10%以上増えており、こちらも初めて使う人が多い印象だという。これはライフスタイルの変化であり、この流れはより広がると感じている。

 また、販売員がレジで商品のバーコードを読み取り、顧客は支払いと袋詰めをする「セミセルフレジ」を実験的に導入している。現在のベトナムでは特に買上げ点数が多いため、日本式のセルフレジでは難しいのだそうだ。

「日本のように狭いスペースで、大量の商品を自分でパッキングするのは非常に面倒で煩雑。従業員のレジでの袋詰めのほうが今は好まれています。キャッシュレスで言えば、点数が少なくて即時性のある商品、例えばデリカでの利用が一段と進むかと思います」

館内を消毒する従業員

消費者が小売業界を使分け
安全・衛生志向も上昇か

 商品によっては品薄となる時期もあったが、極端な品不足はなく、サプライヤーの協力もあって品揃えは安定してきた。

 また、F1認定で隔離される従業員はいても、シティマートやミニストップを含めたイオングループ内での感染者は極めて少ないそうだ。ベトナム全土でイオンベトナムの従業員は約4000人、グループ全体で約8000人に上るが、感染対策が奏功している。

 古澤氏は今後、日常的に購入するデイリー商品はECの利用が加速し、身近で生鮮食料品が買える小型店にもチャンスが広がると考えている。一方でGMSは、1日いても楽しめるエンタテインメント的な魅力が重視されると語る。

「新型コロナをきっかけにEC、小型店、GMSの使分けが始まるのではないでしょうか。加えて、現在の安全や衛生への意識がスタンダードになると思います」

食品売り場への入館を待つ人たち

 健康で安全なものを食べたい、衛生的な商品が欲しいなどのニーズが飛躍的に上がり、オーガニック食品や機能性食品、あるいは長期保存ができていつでも食べられる冷凍食品などが求められると見る。こうした商品構成の変化にも注力していく。
「感染対策を今後も徹底させるのはもちろん、お客様の趣向に合わせて我々も進化していきます」

Monstarlab Viet Nam
General Director 松永正彦氏

社員1人が家庭内感染でF0
事業継続でホテルでの隔離に

 全従業員数が約500人のIT企業、モンスターラボベトナムは、ハノイとダナンに拠点を置く。ダナンの社員1人がF1と認定されたのが5月7日(金)、F0認定となったのは9日(日)だった。その後、全社員のうち271人がF1となって隔離されるのだが、その時の対応を聞かせてもらった。

 その社員の義姉が職場で感染して5月7日にF0となり、当人はその夕方にF1となった。同社では5月4日までが連休であり、当人は5~7日にF1と知らずに出社していたことになる。

「そのために当初は対応が後手に回ってしまいました。ベトナムは大家族で住みますから、会社で気を付けていても家族から感染するのが落とし穴です」

 その社員は5月8日(土)にPCR検査を受けて、9日(日)の朝にF0と認定。その段階で保健所と公安に通達されたようで、日曜日の朝にダナン拠点のトップである副社長に連絡があり、会社に行くとダナンの疾病管理センター(CDC)と公安が到着していた。ちなみに社長の松永氏はハノイ拠点に勤務している。

F0が発覚して日曜日に会社に集まった従業員たち

 当局は5月5~7日に出社した社員全員を呼ぶように指示。7日(金)の段階で出社していた全社員がF2となったていたので彼らは自宅におり、午後に対象者271人が会社に集合。午後2時半くらいからPCR検査を受け始めた。

「感染者に接していない従業員もいましたが、オフィスがオープンスペースで壁がないこと、セントラルエアコンなので菌が循環しやすいことから、その場で全員がF1になりました」

 検査後の隔離先をCDC本部に相談しているうちに、約80人の従業員が、隔離施設となっている近所の小学校に救急車で連れて行かれる。

 そんな中で仕事のためにホテルで隔離したい旨を本部に相談すると、海外からの外国人用の政府指定ホテルであれば可能となった。部屋ごとに独立したエアコンが必要なので、他のホテルは許可されないそうだ。

 従業員がPCR検査を受け続ける横でさっそくホテル予約に動き、200人と80人が収容できる2つのホテルを確保した。しかし、約80人は既に隔離施設に到着しており、施設に一度入ったら移動できない決まりだ。

隔離ホテルへの入居時に荷物は全て消毒

ビデオ電話でストレス解消
隔離終了後に全員が陰性

 当局と交渉すると、移動手段が用意できるなら隔離施設からホテルまで移せるとなった。交渉すると隔離ホテルのバスがチャーターできたため、先に隔離施設に運ばれた従業員もホテルに移動できた。しかし、到着したのは夜の11時過ぎだった。

「何よりスピードが大切です。ホテルで隔離する許可はPCR検査が終わる前にもらいました。ベトナム人社員が口頭で伝えて許可を得て、その内容をまとめた正式な書類は翌日の月曜日に提出したのです」

 月曜日からのホテルでの仕事は問題なく始まった。同社はIT企業で以前からリモートワークを推進していたこと、そして日曜日に会社に集まったので、そこで仕事に使うパソコンやモニターなどの準備ができていたのだ。

 仕事はプログラミングが主体なので、パソコンとWi-Fiがあれば進められる。ただ、大勢で使っているせいかホテルのWi-Fiの通信速度が遅く、会社で4GのSIMカードを差し入れて、スマホのデザリングで接続した。基本的に2人1部屋なのでプライベートはなく、社員たちはビデオ電話で交流するなどでストレスを解消した。

「デリバリーはできましたが、消毒をするので生の食べ物は持ち込めません。ですから私はカップラーメンや缶詰、コーヒーなどを差し入れました。隔離施設に入っていたら仕事ができる環境ではなかったと思います」

隔離ホテルでの食事

 ホテルを出るときは公共交通機関が使えないので、身内が迎えに来てもらえない人には会社で大型バスを手配し、その後で1週間の自宅隔離となった。また、隔離は21日間続いたが、271人が検査を受けた日曜日ではなく、その前の金曜日からカウントされたため、ホテル滞在は2日短縮された。

 隔離中は検温が毎日あり、PCR検査は週1回。PCR検査はホテルで合計3回あり、隔離終了後に3回の検査が義務付けられた。そして、全員が陰性となった。

隔離の経費は2000万円弱
日本本社と事前に相談を

 同社ではこれ以降現在までF1などは出ていない。感染対策としてはマスク、消毒、席を離すほか、抗菌作用があるナノ酸化チタンコーティングをオフィス全体に施している。また、支払いやサインが必要となる約2割のバックオフィス系職種以外は、基本的にリモートワークだ。松永社長は当時を振り返ってこう語る。

「CDCなど当局の動きがとにかく速く、このスピードに付いていかないといけません。1分が大事なのです。そのためにも、F0が出た場合のシミュレーションをしておいた方がいいと思います」

 271人のホテル宿泊など、隔離のために掛かった費用は日本円で2000万円弱。松永氏は日本本社の取締役でもあり、本社社長に電話をして快諾を得た。しかし、これはレアケースだろう。決済や決定に日数を要する日本本社は少なくないはずで、高額な経費となるとなおさらだ。ベトナムの事情を伝えて、隔離費用などの金額を見積もっておくことも必要だろう。

 また、ホテルで隔離できたのは大人数だったからだと推察する。数人であれば隔離施設となった可能性も高く、従業員数によってもシミュレーションは変わってくる。

「社内でいくら新型コロナ対策を頑張っても、今回のように同居家族から感染というケースもあります。自分たちは大丈夫だろうと他人事のように思わずに、シミュレーションをしてください。実際に関わると、本当に大変です」

ビデオ電話で交流する従業員たち