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【経済】CPTPP加盟申請、中国の狙いとは?

(C)VNEXPRESS

多くの専門家は、中国がCPTPPに加盟するのは非常に難しいとの見方を示すが、中国は加盟申請をするだけでも短期的なメリットを享受できる可能性がある。

環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)に参加しようとする中国の試みは、オーストラリア、日本、カナダなど中国との経済関係が緊迫している加盟国によって異議を唱えられる可能性がある。

しかし専門家たちは、中国が加盟申請をすることのメリットは、中国が戦略的パートナーとなる準備があることを国内外に示し、アメリカに対して中国に容易に圧力をかけることはできなというメッセージを発信することにあると分析する。

CPTPPは、アメリカが中国に対抗するための枠組みとして成立させようとした環太平洋パートナーシップ(TPP)を基礎にして成立している。2017年にアメリカが正式に撤退した後、2020年11月に中国の習近平国家主席は、中国はCPTPPへの加盟に高い関心を持っていると表明していた。

これに対して、CPTPP加盟の11か国の反応は様々であった。中国との経済関係が緊密なシンガポールとマレーシアは、中国加盟を歓迎する考えを示している。反対にオーストラリアは、中国が国際的な貿易条約の規定を遵守してきた成果を示し、二国間の貿易紛争を解決させなければ、加盟に反対するとの立場を示している。日本は、中国がCPTPPの求める”非常に高い基準”を満たす準備が整っているかどうかを確認する必要があるとしている。その他の加盟国は今のところ沈黙を守っている。

自由貿易協定と国際貿易法の専門家である中国大学(香港)のブライアン・マーキュリオ教授は、中国のCPTPP加盟申請は、”中国が経済成長における戦略的なパートナーになりえる国であり、決して他国をいじめたり脅したりする国ではない”という立場を明確にする意味で重要であると分析する。しかし、一方で中国がCPTPPへの加盟条件を満たすために自国の政策を変更する可能性は低いとみる。

マーキュリオ教授によると、中国は、国営企業への優遇措置、デジタルコマースおよび、各種分野への投資などについてCPTPP加盟に必要なレベルの基準を満たすことは出来ないだろうと分析する。

「中国が国際条約を順守していないという疑念は日々高まっている。これは、良い評判とは言えず、他の加盟国が交渉の機会を与えることをためらう要因になっている。」とマーキュリオ教授は話す。

CPTPPでは、中国とインド-太平洋地域の14か国が昨年署名した地域的な包括的経済連携協定(RCEP)よりも、労働、環境保護、デジタルコマース、国営企業などの分野に関してより厳しい基準が求められている。
なお、中国のCPTPP加盟申請は、アメリカ、イギリス、オーストラリアの軍事同盟であるAUKUSの発表直後に発表されたが、中国政府は関連を否定している。

マーキュリオ教授は、アメリカのジョー・バイデン首相がまだ主要な貿易協定について動き出していない中で、中国がCPTPPへの加盟申請をおこなったことで、バイデン首相はアメリカの貿易政策の見直しを迫られる可能性があると指摘する。

「バイデン大統領は、主要な貿易協定の交渉を2期目まで持ち越したかったように思えますが、今後もその方針を維持するかどうかは不透明です。しかし、バイデン首相の方針が中国に対してより厳しいものになる可能性もあります。」とマーキュリオ教授は分析している

中国のある大学教授は匿名を条件に取材に応じて、中国政府がCPTPPの要求する条件に同意する可能性は非常に低く、各加盟国が中国が誓約した条件を順守すると信用する可能性も低いだろうと述べた。

「これは、長期的な経済戦略というより、ある種の外交手段の一つである可能性が高いです。中国のCPTPP参加表明はEUとの投資に関する包括的協定への署名へ向けた足がかりになるでしょう。また、恐らく中国政府はアメリカ政府に対して、中国を排除することは出来ないというメッセージを送っているのでしょう。」とこの教授は述べた。

さらにこの教授は、「オーストラリアと日本が中国に対して不満を持っていることはよく知られており、中国のCPTPP加盟交渉には大きな抵抗があるでしょう。」と付け加えた。

匿名を条件に取材に応じた中国政府の顧問は、CPTPPは中国政府が繰り返し強調している『より高いレベルの規制緩和』を進めるのに役立つだろうと述べた。

「中国政府はCPTPPへの加盟が難しいことは百も承知していますが、申請を出すことで政府指導部が高いレベルの規制緩和を受け入れる準備があることを示そうとしています。中国は依然としていくつかの分野では遅れていますが、加盟へ向けた議論を規制緩和への原動力にしたいと考えているのでしょう。」とこの顧問は述べた。

シンガポール管理大学のヘニー・ガオ准教授によると、中国は2013年以降、かなり以前からCPTPPについての研究と参加を検討していた可能性があるとのことだ。中国は最近になって国内の反発がありながらもで貿易と投資の障壁を取り除く姿勢を見せている。しかし、ガオ准教授は、中国がオーストラリアやカナダなどからの信頼を取り戻すためには、更に具体的な対応が求められるとしている。

「国内の政治的な理由で、アメリカがすぐにCPTPPへ復帰する可能性は極めて低いです。これがアメリカが中国を封じ込めるために作った協定を中国が利用するという皮肉な結果を生み出しているのです。」とガオ准教授は話す。

中国のグローバル政治経済研究所のスー・チンイ主任研究員は、9月20日に発表したレポートの中で、中国のCPTPP加盟は中国に経済的なメリットをもたらすと書いている。このメリットとは、中国がグローバルな政治・経済により深くかかわり、国内の規制緩和を促進させることを意味している。

しかし、この研究員はまた、中国はCPTPPの求める基準を満たすために具体的な行動を示す必要に迫られ、多くの困難に直面するだろうと指摘している。さらに中国政府は、加盟国の信頼を獲得し、条例順守についての疑念を晴らすために外交的な努力をする必要がある。

「しかし 加盟交渉段階での中国と加盟国との隔たりは大きく、非常に長期にわたるタフな交渉を覚悟しておく必要があるでしょう。」とチンイ主任研究員は指摘する。

出典:21/09/2021 VNEXPRESS
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