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ベトナムで活躍する日系企業|
リーダーたちの構想 第39回
日立造船ベトナム

日立造船ベトナムは、南部では主としてごみ焼却発電プラントの詳細設計、北部では親会社の営業・調達支援を行う。今後は親会社が担当する基本設計にも参画し、自社からの製品調達をしたいと、清野博社長は将来像を語る。

オフショア向けの詳細設計

―― 御社の事業内容を教えてください。

清野 主に日立造船が建設するごみ焼却発電プラントの3D CADを用いた詳細設計です。ごみ焼却発電プラントとは高熱でごみを焼却しながらその熱で電力を作る環境プラントで、日立造船はその大手企業として、世界各地で建設を進めています。

 親会社では基本設計を行います。プラントの規模や性能、構成機器、製造フロー、制御方法、全体配置計画などの設計で、それに基づき弊社では3D CADで詳細設計を完成させます。いわばオフショア事業を対象とする設計会社であり、成果物はすべて日立造船グループに納入し、外販はしていません。

 当時、進出先にベトナムを選んだ理由は、人件費の安さと同時に優秀な人材が揃っていることで、私も赴任前に何度か訪れていました。既存のソフトウェア会社を2011年8月に日立造船が子会社化し、現在では約100人が働いています。日本だけでなく海外の案件も受託しており、1年の案件数は100件を超えることもあります。

 現在(取材時)の人員構成ですが、配管グループが30人、土木建築グループが16人、機械グループが15人で、電気・計装グループが7人です。なお、環境事業に加えて橋梁グループに5人が配属されています。

 納期は案件の規模やプラントの構成機器により違いますが、長ければ2年かかる設計もあります。

日立造船のCAD図面

―― 特殊な仕事ですので、覚えるのが大変そうです。

清野 3D CADソフトの習得も大事ですが、作図技術だけでなく、プラントの基礎的な知識を覚える必要があります。ごみ焼却発電プラントの概要、プロセスの知識、各機器の機能などです。大学の工学部出身者なら要素技術はわかっていても、プラント設計の経験者は少ないので、入社後の教育が欠かせません。設計技術者として1人前になるのに2~3年はかかります。

 弊社では先輩社員が指導員として研修をしており、数ヶ月は付きっ切りで、その後も一定基準を満たす納品ができるまで面倒を見ます。新型コロナで中断していますが、日本の親会社から技術者を招聘して教育したり、日本へ研修に行って技術を学ばせることなどもしてきました。

 私も設計出身なのでわかりますが、自分が設計したプラントが工事現場で形となって稼働を始めるのが、何よりの醍醐味なんですね。この「ワクワク感」を少しでも経験してもらおうと、工事現場への派遣、完成した日本のプラントの見学、プラントの構成機器を製作している工場への検査などの機会を設けてきました。こうした体験は親会社がプラントを扱っていないとなかなかできません。

―― 離職率を下げる効果もありそうですね。

清野 はい。弊社の離職率は同業他社より低いと思いますし、そのために福利厚生を色々と充実させてもいます。目標管理制度、能力評価制度、キャリアプランの策定、長期勤務者への医療保険などですが、福利厚生は長期勤務を促す上では脇役であり、モチベーションやインセンティブが大切だと考えています。一口に言えば、前述の仕事のやりがいや面白さです。

 私は自立も大切ですが「自律」できるメンバーを育てたいと思っていまして、そのためにもモチベーションは大切。会社が一々指示をしなくても、ターゲットに対して何をいつまでに、どのようにすれば良いかを自ら立案して実行できる人材を育てたいですね。ただ、ついつい細かい指示までしてしまうこともありますが(笑)。

 説明してきた設計業務はホーチミン市で担当していまして、ハノイでは支店設立の2018年から、ごみ焼却発電プラントを含む親会社の営業支援や調達支援を始めています。

日立造船の3D図面

北部では営業・調達の支援

―― 具体的にはどのような内容でしょうか?

清野 北部だけでなくベトナム全土が対象です。営業支援であれば各省のごみ焼却発電プラント建設を希望する部署や、投資を希望するベトナム企業へのプレゼン等の営業活動などが主なものです。取扱製品は当社の全製品です。

 これまで、日本の国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の実証事業で、ハノイ北部にあるナムソン処理場に産業廃棄物焼却発電プラントを建設しました。2017年11月に引渡しが完了しています。

 ベトナム側の事情があって運転が止まっていたのですが、今年に入って再稼働の動きが出てきました。オーバーホールの必要もあるので、運転当事者であるハノイ都市環境公社(URENCO)と交渉を進めています。

 調達業務支援の例では、日本のODA(政府開発援助)によるラオスのナムグム第一水力発電所の拡張事業があります。日立造船が水門と鉄管の工事を受注しまして、弊社はそれらを製造する外注先を探して、ベトナムの大手企業に発注しました。

 発注後、新型コロナの影響で、日本から製造、品質管理の担当者がベトナムに出張できない事態となり、調達業務支援以外の業務の支援を行っています。

―― 直近の課題とは何でしょうか?

清野 設計については、元々設計の効率化やコストダウンが進出を決める際の要因でしたので、物価と人件費の上昇ですね。同じ目的で中国へ進出した海外企業がベトナムや他国に移っていったように、コストダウンが難しくなれば別の国という考え方にならないように努めていきたいと考えます。

 競争力を維持するためには、物価の上昇に見合う能力の向上や設計の効率化が求められます。また、付加価値を上げるには、技術力の日々の研鑽も大切です。

―― 今後の戦略や計画を教えてください。

清野 長期的には東南アジアのエンジニアリング拠点を目指しています。建設にはEPCという言葉があり、Eは設計、Pは調達、Cは建設を意味します。建設は無理でも、EとPを強化させるつもりです。

 設計では現在の詳細設計に限定せず、将来的には基本設計にまで広げたい。高い技術力の習得など課題が多いのは承知していますが、規模が小さいなりに一気通貫でできないかと思っています。

 調達では親会社の調達支援はしていますが、弊社からの発注はありません。そこで、日立造船が東南アジアで受注したごみ焼却発電プラントの構成機器を、ベトナムを中心にした近隣諸国から調達する計画です。

 プラント機器は多岐にわたります。ベトナムでのベンダーの調査が必要ですが、全ての機種は無理でも、例えばタンクなどの製品の発注は可能と見ています。

 また、ナムソン処理場に産業廃棄物焼却発電プラントが再稼働する際には、そのオペレーション支援とメンテナンスを担当したいと考えています。将来的にはこれら事業の外販、つまり他の東南アジアのプラントでのアフターサービス業務も視野に入れています。

 難しいことが多いのですが、少しずつ業務範囲を広げていきたいと思います。

Hitachi Zosen Vietnam
清野 博 Hiroshi Kiyono
工学研究科修了後、日立造船株式会社に入社。主に工場建屋を含むプラントの土建設計とその監理業務に従事。また、オマーン、カタール、アラブ首長国連邦などで設計完了後スーパーバイザーとして携わる。2014年7月より現職。