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ベトナムで活躍する日系企業|
リーダーたちの構想 第44回
INTERFOOD SHAREHOLDING COMPANY

インターフード社へのM&Aで、2011年にベトナムに進出したキリンホールディングス。既存ブランドに加えてKIRINのオリジナル飲料を次々と発売し、2016年には黒字化を遂げた。河﨑元社長がこれまでと今後と語る。

今は「iMUSE」の販売を強化

―― ベトナム進出の経緯を教えてください。

河﨑 2011年当時、キリンホールディングスはアジア・オセアニア地域への展開を進めており、地場大手飲料メーカーのインターフードシェアホールディング(インターフード)の株式を取得する形で進出しました。

 現在は元々のブランドである「WONDERFARM」と新しいブランドの「KIRIN」で飲料を生産・販売しています。前者の工場はドンナイ省、後者はビンズン省にあり、間接雇用も含めた従業員は全国で約1000人です。

 インターフードは1991年設立の企業で、WONDERFARMはベトナムで良く知られており、特に「Water Melon Tea」(冬瓜茶)が人気商品です。KIRINには、「Ice+」(アイスプラス)、「Latte」(ラテ)、「Tea Break」(午後の紅茶)、「Japanese Green Tea KIRIN」(日本茶)、「KIRIN Salty Litchi」(ソルティライチ)、「KIRIN iMUSE」(イミューズ)などがあります。

 味覚はベトナム人に合わせて変えています。ベトナムで開発したIce+のような商品はもちろん、iMUSEのような日本発のブランドも同様です。大きな特徴は甘味を増していることで、iMUSEなら日本版と比べて相当甘いです。商品開発はベトナムでの調査から始まり、パッケージを含めてオリジナル商品は基本的に弊社が対応し、本社とは素材調達などで連携しています。

インターフード社の製品

―― KIRINブランドはどんな商品が人気ですか?

河﨑 一番の売れ筋はIce+、次がLatteで、現在はiMUSEの販売に特に注力しています。iMUSEはプラズマ乳酸菌が入っていることが特徴で、日本とベトナムで販売しています。

 乳酸菌は体内の免疫細胞を活性化させますが、通常は特定の細胞に限られます。プラズマ乳酸菌は免疫の司令塔であるpDC(プラズマサイトイド樹状細胞)に直接働きかけ、全ての免疫細胞を活性化させます。

 ラインナップが多い日本では昨年、当初予定の約2割増に上方修正した年間販売目標を超えました。今年に入りベトナムでの売行きも上々で、健康志向が高まるベトナムでも成長ブランドに育てたいです。

 進出当初は企業の経営基盤が弱く、生産設備や営業ネットワークにも課題がありました。それを改革するのに数年を要した後は、市場全体の拡大もあって、2016年に黒字化できました。しかし、2020年と2021年は新型コロナで業績は落ち込みました。

 ロックダウンで小売店は閉鎖し、お客様は外出できません。学校や工場の食堂(キャンティーン)も大切な販売先なのですが、学校などが閉まった影響も大きかったです。これから巻き返しを図っていきます。

売れ筋No.1のICE+

―― 飲料の販売戦略とはどのようなものでしょうか?

河﨑 ベトナムに限らず、先進国でも新興国でも、1国の中に飲料メーカーは一定数あるものです。飲料市場への参入障壁は実はさほど高くなく、発酵など特殊な生産方法を用いなければ、原材料や調味料を混合することで完成させられます。

 安全性の確保など注意すべき点は多々ありますが、乱暴に言ってしまえば土地と工場、生産設備、原材料を調達するサプライチェーンがあれば生産できるわけです。

 そのため、競争が激しい市場となりやすく、また、清涼飲料は少数の人が大量に購入するものではないので、多くのお客様、多くの売り場と接点を持つことが重要です。そのため、商品が取り扱われるルートを増やすようにします。

 これは日本の調査ですが、特定のスーパーに行く理由を尋ねると、「自宅から近いから」が上位に来るんですね。行動範囲は限られるので、個人の普段使いの店があるわけです。ベトナムでも同様だと思いますので、営業は常に新しい店舗を探して、アプローチを続けています。

先進国に近づくベトナム市場

―― インターフードには30年の実績があり、販路は確立しているのでは?

河﨑 確かに以前からの販売ネットワークは持っていますし、キリンにとってもそれが魅力でした。しかし、店舗は変わりますし、増減もあります。近年は新型コロナやロックダウンでその傾向が強くなっていますから、常にアップデートしていく必要があります。

 また、ベトナム人消費者には、新しいものを受け入れるまで時間がかかる傾向があります。いわば保守的であって、新商品はなかなか浸透していきません。パパママショップなど伝統市場の小売店も冒険をしたがらないので、新商品を積極的に仕入れない人が多い気がします。

 ベトナムでスーパーやコンビニなどの近代市場と伝統市場の数は、統計データにより多少違いはありますが、私の肌感覚で9:1か8:2くらいです。弊社はベトナム全土で販売しており、この対比も全国的な印象です。伝統市場が圧倒的に主流であることもベトナムの大きな特徴で、販売の難しさにもなります。

 弊社ではSNSや店頭のPOPなどでアピールしています。ただ、必勝法はなく、地道に活動していくしかないと思っています。その結果として新商品の評判が広がり、取り扱う店舗が増えて、流れが変わっていくのです。

インターフードの工場内部

―― 今後のベトナムの飲料市場をどう見ていますか?

河﨑 私は海外初赴任でベトナムに来て、その前は2017年に出張で来越しました。赴任時は新型コロナでホーチミン市全体が沈んだようでしたが、それでも4年前より発展するスピードが速いと感じました。実際、ロックダウンが明けると工事が再開され、ビルやマンションの建設も急速に進んでいます。

 また、社会がITを受け入れるスピードなどに市民の受容性の高さを感じます。ベトナムは飲料のニーズが高い国だと思いますし、市場は拡大しています。今後はこのスピード感を持って伝統市場から近代市場、そしてオンライン販売へと大きく進み、先進国の購入スタイルに近づくと思います。

―― そうした変化に対応していくということですね。

河﨑 はい。先進国がそうであるようにベトナムの消費者はより多様化し、個別化していくので、それに合わせてサプライチェーン全体を最適化していきます。また、前述のように健康意識が大きく変わっており、この流れは強くなると思います。

 今は、新型コロナウイルスが大きな問題ですが、東南アジアには、デング熱をはじめとする感染症の問題が従来から存在しています。プラズマ乳酸菌は、こうした社会課題を解決できる大きな可能性を秘めていると確信しています。ベトナムの人々の健康に貢献できるよう、iMUSEブランドを中心に、当社のブランドをさらに強化していきます。

 また、先進国に見られるような砂糖税が導入される可能性もあります。これは国民の生活習慣病や肥満を抑制する目的で、清涼飲料水などに砂糖の含有量に応じた税金を課す仕組みです。導入は先になると思いますが、将来に向けて様々なことを考慮したいですね。

インターフードの工場外観

INTERFOOD  SHAREHOLDING COMPANY
河﨑 元 Hajime Kawasaki
大学卒業後、キリンビール(現・キリンホールディングス)に入社。工場での総務職の後、スーパーやコンビニ、飲食店への営業職を経て、本社にてIRの担当に。その後、経営企画、秘書室を経て、2021年3月に現職。