5Kルールの遵守、感染者の隔離、ベトナム入国時の検査などのCOVID-19感染防止対策はもはや現実に即していないが、まだ調整されすに残っている。
5月5日までにベトナムはCOVID-19ワクチンを約2億1500万回分接種しており、12歳以上の国民のほぼ全員に2回のワクチン接種がいきわたっている。各自治体は、現在、成人への3回目の接種と5歳から11歳の子供へのワクチン接種を進めている。
一方で、日々の感染者数は大幅に減少している。5月4日の全国の感染者数は約3000人で、過去7日間平均の1日当たりの新規感染者数は4400人となっている。
このような状況を受けて、F1の隔離廃止や入国者の医療申告廃止などの感染防止対策が緩和された。しかし、いくつかの感染防止対策は、時代遅れのまま取り残されている。
5Kルール(マスク着用、消毒、距離をあける、密集しない、医療申告)は、ベトナムが感染第2波に直面していた2020年8月に保健省によって提案された。保健省は、ベトナムは長期間にわたって感染症と闘う必要があり、国民は感染症に対処するために適切なライフスタイルを構築する必要があると説明していた。
これまでにベトナムでは、4回の感染爆発を経験してきた。しかし現在のようにワクチン接種率が向上し、オミクロン株が普及した中で、ベトナムは国を開放しており、5Kルールを実施し続けることは難しくなっている。この点について、ホーチミン市共産党委員会のグエン・バン・ネン書記は、2022年3月に距離の確保や密集しないといった5Kルールはもはや現実に即していないと指摘している。
ネン書記によれば、ニューノーマルにおいて、学校に通う学生や会社で働く従業員が密集しないようにすることは現実的ではない。特に子供たちが学校で食事や睡眠をとる場合にこのような規定を維持し続けることは不可能だ。そのため、今後はマスクの着用と消毒という2つのルールだけを守るようにすべきだとネン書記は指摘する。
ホーチミン市第1小児病院のチューン・フー・カイン医師も、ベトナム全土が解放された今、距離の確保、密集しない、医療申告といった規定は、時代に合っていないと指摘する。また、国民の大部分がワクチンを接種済みとなった以上、マスクの着用も強制すべきではないとしている。カイン医師は、保健省が個人の感染防止対策についての推奨事項を修正すべきだとしている。
4月末の記者会見で、保健省のドー・スアン・トゥエン副大臣は、5Kルールに関して、マスクの着用と消毒は維持されるが、残りの3つの規定については、柔軟に適用されるべきだとの見解を示した。
しかし、現在のところ保健省は5Kルールを見直すという文書は発行していない。
COVID-19に感染した患者(F0)を隔離するという規定は、多く地域で社会経済活動を回復させる過程の障壁となっている。保健省の規定では、自宅療養をおこなうF0は、7日目に簡易抗原検査で陰性となってから隔離を終了することができるとされている。もし、7日目に陽性となった場合、ワクチンを2回接種済みであれば10日目まで、ワクチンを十分に接種していない場合は14日目まで隔離を継続しなければならない。
4月上旬に保健省は、新たなガイドラインを発行して、F0は隔離された部屋から出ることが極力制限され、家から出ることはできないと規定した。隔離された部屋から出る場合、マスクを着用し、同居人との距離を確保する必要がある。
多くの地域では依然としてF0に対して医療ステーションでの回復証明書取得を要求している。多くの家庭では、家族全員がF0に感染したため、薬や食料を購入するためにF0であっても外出せざるを得ない状況が発生している。
また、労働者不足の問題を解決するためにロンアン省、カマウ省などの多くの自治体がF0の出勤を認めるとしている。
以前、保健省は、無症状のF0は隔離期間中でも自発的に仕事を再開できるようにすると提案した。しかし、現在のところこの提案は実現されていない。
ベトナムへ入国する際にPCR検査または、簡易抗原検査による陰性証明書が必要という規定も廃止すべきとの意見も出ている。現在、ベトナムに飛行機で入国する乗客には72時間以内のPCR検査か24時間以内の簡易抗原検査による陰性証明書が求められている。
陸路、海路、鉄道で入国する場合にも同様の規定が適用される。検査結果を所持していない場合、入国から滞在場所へ移動後24時間は、他者との接触が制限される。検査で陰性が証明されれば、その後は自由に移動が可能となる。2歳未満の子供は、検査を受ける必要がなく、保護者とともに行動することができる。
「現在、COVID-19は世界的に沈静化する傾向にあり、ごく少数の国のみがゼロコロナ政策を適用しているため、入国前に検査の陰性証明書の提示を求める国は非常に少なくなっています。また、現時点では検査の価値は非常に限定的で、殆どが状況確認にのみ使用されています。」とハノイ医科大学病院のグエン・ラン・ヒウ院長は話す。
そのため、ベトナム入国時に検査の陰性証明書の提示を要求することは、海外からの入国者にとって非常に厳しい条件となる。「人々の生活を元通りにするためにも、できるだけ早急にこの規定を廃止すべきです。」とヒウ院長は話す。
ベトナムがCOVID-19に安全に適応するという方針に転換した2021年10月に、感染レベルの分類が提案された。感染レベルには、レベル1(低リスク、ニューノーマル):ブルー、レベル2(中リスク):イエロー、レベル3(高リスク):オレンジ、レベル4(超高リスク):レッドの4段階がある。
感染レベルに応じて各自治体は、サービス業や製造活動の活動再開や制限を実施した。感染レベル1のエリアでは、屋内外のイベントに人数制限は設けられない。一方で感染レベル4の場合、多くの製造やサービス事業活動が制限される。
保健省の統計によると、現時点で国内の50以上の省と市でレッドゾーンが無くなり、全国で80の区町村のみがレッドゾーンに指定されている。
国内の規制が緩和され生活が日常に戻りつつある中で、感染レベルの分類規定やそれに伴う事業活動制限に関する規定は、未だに維持されている。「感染レベルの分類は、医療専門機関が感染爆発に備えて人員と施設を準備するための指標にのみ使用すべきです。感染レベルを現実の往来や経済活動の制限に適用することは現実的ではありません。」とハイズン省保健局のチャン・バン・ハイ副局長は話す。
国会の元副議長であるグエン・シー・ズン博士も「感染レベルを評価してブルーやレッドに分類し、健康な人を含めた全国民に適用することは推奨できません。」と話す。
2022年3月上旬に保健省は、現実の状況を正しく反映しておらずむやみに混乱を引き起こすとして、毎日の新規感染者数の公表を止めることを提案した。3月17日に政府が発行したCOVID-19感染防止プログラムには、新規感染者数よりもリスクの高い患者の入院者数と死亡者数の管理を重視する方針に切り替えると明確に記載されている。
この方針に賛同する公衆衛生緊急対応センターのチャン・ダック・フー博士は政府の方針は適切であると評価する。新規感染者数は、感染状況を評価する8つの指標のうちの1つに過ぎず、感染状況の本質を表すものではないとフー博士は指摘する。また、最近の感染者数は相対的な情報であり、正確な状況を伝えていない。実際、多くの市民が感染しても医療申告をおこなっておらず、一部の医療機関は医療負担が大きすぎるために感染者数の報告が滞っている。
「COVID-19をゼロに戻すことはできない以上、入院者数と死亡者数のみを公表することに注力すべきでしょう。」とフー博士は述べた。
しかし、現在のところ毎日の新規感染者数の発表を止めるという保健省の提案は実現されていない。
出典:05/05/2022 VNEXPRESS
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