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リーダーたちの構想第49回
Vietnam NOK

日本国内で約70%、世界で約50%のシェアを誇るオイルシールを始め、工業用ゴム製品を中心に幅広い部品を製造するNOK。生産拠点の一つであるベトナムNOKは新工場を増築したばかりだ。吉田社長が今後の戦略を語る。

EVシフトでガスケットを生産

―― 御社の事業内容を教えてください。

吉田 NOKの主力商品であるオイルシールとOリングの生産です。オイルシールとは自動車やバイクなど様々な機械の回転軸端部からのオイル漏れを防ぐ部品で、基本的にゴム・鋼板・スプリングで構成されます。ベトナムNOKは2004年の創業で、オイルシールは2005年から生産を始めました。

 Oリングは環状のパッキンで、外部からの水や空気を遮断して流体を密封する部品です。ゴムだけの製品で、こちらも2輪4輪車、建機、農機など幅広い業界で使われています。Oリングは2007年に生産を開始しました。

 全製品の約4分の3は日本中心の輸出、残りの約4分の1がベトナム国内向けです。ただし、オイルシールは、自動車用が多い日本向け輸出とバイク用が主のベトナム国内向けとの、ほぼ半々の割合です。Oリングは約9割を日本に輸出しています。

―― 今年7月に工場を増築しました。理由は何でしょうか?

吉田 工場はドンナイ省のアマタ工業団地にあり、オイルシール棟は約2万㎡、Oリング棟は約1万2000㎡でした。今般、約35億円を投じましてOリング棟を1万2000㎡増築し、合計で2万4000㎡としました。

 この背景には災害の多い日本からの生産分散、新型コロナ拡大によるサプライチェーン分断の阻止、生産拠点としてのベトナムの優位性などに加えて、ガソリン車からEV(電気自動車)への大きなパラダイムシフトがあります。EV化により自動車を構成する部品が大きく変わるからです。

 例えば、EVにエンジンやトランスミッションはありませんから、ここに使われるオイルシールは減ってしまいますが、ショックアブソーバーなど足回り用シールは残ります。Oリングについても同様です。

 しかし、逆にEV用でニーズが増えるのがガスケットです。ガスケットはOリングと同じゴム製品ですが、Oリングの断面が文字通りO型なのに対して、ガスケットは多種多様な形状で、構造も複雑になります。新工場ではOリングに加えてガスケットも生産していきます。

―― EVのどのような箇所にガスケットが使われるのですか?

吉田 EVにはバッテリーやコントロールボックスなど箱型の部品が多く、これらの内部にガスケットが必要とされます。ガソリン車のオイルシールは潤滑油であるオイルを密封しますが、EVのガスケットはダストや水などを密封しながら、振動対策も求められます。弁当箱の蓋をしっかり閉めるようなイメージです。

 現在の月産数は機構が少し複雑で構成部品数も多いオイルシールが約700万個、Oリングが約3000万個です。3年後にはOリングの生産能力を約5000万個とする計画です。ガスケットは形状が複雑でサイズも大きく、材料も新規になりますが、3年後には月産約200万個となる見通しです。

 私が赴任した2019年には自動車EV化のトレンドは予測できても、その具体的な移行スケジュールはまだ疑心暗鬼状態でした。それが、アメリカのテスラがシェアを伸ばし、中国の新興EVメーカーが数多く現れ、従来の完成車メーカーもEV事業に本気で注力し始めました。

 一方、ヨーロッパではガソリン車の販売を2035年までに禁止するなど規制の動きがあり、各国がカーボンニュートラルに舵を切るようになりました。EV化への流れが急に本格的になりましたが、EV大量生産時のサプライチェーンはまだ確立されていません。現在は大きな過渡期なのです。

判断の基準を明確にする

―― NOKグループで見たベトナムNOKの特徴とは何ですか?

吉田 NOKは基本的に地産地消で、生産国での域内販売をしています。アメリカ、中国、インド、韓国、タイ、インドネシアも同様です。しかし、ベトナムだけは日本に73%輸出しており、グループでは稀有な例です。

 この理由には安価な人件費もあるでしょうが、私は優秀な労働力が実現していると思います。NOKの製品は世界中で同品質を要求されます。お客様の品質監査も受けていますが、昨今ではリコールなどの影響もあって審査は厳しく、私が入社した約40年前とは天と地ほどの差があります。

 一方、国が違えば日本と全く同じものを作るのは非常に難しいため、最重要なゴムの原材料は日本から輸入しています。それでも、例えば水質も違えば気候も異なるため、原材料が同じ化学式でも量産純度が99.99%(日本)と99.8%(海外)とでは差が出るのです。

 しかし、我々は日本と同品質の製品を生産し、輸出し続けている実績があります。若くて真面目で、勤務態度も良いベトナム人従業員が、積み重ねて来た改善と築き上げた品質のおかげです。弊社ベトナム人従業員の会社へのロイヤリティは高いと思います。。

 私は従業員がずっと働きたいと思う会社にしたく、赴任時にも皆に説明しました。ただ、給与や福利厚生には限度がありますから、企業風土や信頼関係とのバランスだと考えています。

―― どのようなことを進めてきましたか?

吉田 赴任した最初の2ヶ月で、係長以上の全員に改善要望と提案有無を尋ねました。例えば、トイレが少ない、使いにくい。実際にチェックして改装し、数を増やして、洋式トイレの割合も増やしました。また、Oリング棟に食堂がなく、オイルシール棟まで行かなくてはならない。移動に時間がかかり、雨天では濡れてしまいますから、Oリング棟に仮食堂を作りました。段取り(一番下のリーダー職)の手当額が昔のままだったり、係長に夜勤手当が付かないことも改善しました。

 費用も掛かるので全てを一度にできた訳ではありません。ただ、海外での仕事は「物差し(判断の基準)」を明確にすることが大切で、誰にもフェアであるべきと己に課しています。

 弊社には約2000人の従業員がおり、マネジャー職となる副課長以上が約50人ですが、彼ら幹部職は赴任後に2人しか辞めていません。その理由も自営などですので、従業員に思いは伝わっていると信じています。

―― 今後の予定を教えてください。

吉田 生産の効率化を考え、工場での半自動化や自動化を計画的に進めています。ここで強みとなるのが内製力です。生産技術部で生産設備を製作しており、彼らは日本の半額で完成させます。これにより新工場でも億円単位で節約ができました。

 新工場ではIT化も進め、従業員出入口に顔認証自動ゲートを設け、渋滞緩和やセキュリティ強化だけでなく、出退勤と連動させた給与の自動計算にも活用します。社員食堂では3日前にメニューを登録してもらうことで、廃棄ロスを減らしていきます。実はこれらのシステムも内製しています。

 ベトナム人はYes/Noの返事が曖昧、交通ルールも守らないと言う人がいます。しかし、彼らが納得できるルールを適正に作れば、それらを長く守ってスキルを伸ばしてくれる。私はそう確信しています。

Vietnam NOK
吉田直文 Naofumi Yoshida
大学卒業後、NOK株式会社に入社。営業配属となり、2006年に栃木県の宇都宮支店長となる。2013年にアメリカ・ミシガン州のFNGP社(独フロイデンベルグとの合弁会社)に、NOKの代表として副社長で赴任。2019年5月より現職。