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ベトナムで活躍する日系企業|
リーダーたちの構想 第18回
ベトナムスズキ

来年進出25周年を迎えるベトナムスズキ。6月に発売した「エルティガ」が好評だが、今後も新モデルを導入予定だ。2度目の赴任で現職となった高原社長は、「お客様が求めるものを作り、販売していく」と語る。

マーケットインを意識した変革

―― ベトナム進出は1995年と早いですね。

高原 第1次ベトナム投資ブームの時代です。翌年の1996年から四輪と二輪の組立てを開始し、次いで海外工場からの輸入車の取扱いを始めました。現在では四輪と二輪の生産、販売、アフターサービスを行っています。

 設立当初はスズキ双日、ベトナム工業省の子会社との合弁でしたが、2011年に100%資本となりました。

―― 現在進めていることは何でしょうか?

高原 ひとつはアフターサービスの質の向上で、まずは部品在庫の確保と、部品価格の見直しです。車が修理やメンテナンスで使えない時間をできるだけ短くしたい。現場に部品がなかったり、エンジニアのスキルが十分でないと修理に時間がかかるので、それらを改善しています。部品価格もプロダクトアウト型からマーケットイン型に変更し、よりお求めやすくしました。

 スキルに関してはホーチミン市内のSUZUKI WORLDや全国に39ある販売代理店で、定期的にトレーニングを行っています。昨日はスキルコンテストを開催して、最優秀の10人を表彰したところです。将来はお客様のメンテナンス、修理の利便性を向上させるため、トレーニングセンターを兼ねたサービス拠点を増やしていきたいと思っています。

―― 6月に「エルティガ」の新モデルを発売しました。

高原 はい。小型多目的車(MPV)のエルティガは好評で、発売開始後の2日間で3000台以上の予約が入りました。本モデルは世界的にも人気車種で、供給数が足りていないため、納車を待っていただけるお客様のみに販売していました。少しでも納車を早めるべく、関連会社と交渉しています。

 人気となった理由はその品質・性能に対する魅力的な価格であり、それが弊社の強みです。スズキには華美でなく、日常の生活の中で快適にお使いいただける、お客様にとって価値ある車を作っていこうとするDNAがあります。当社は徹底した作り込みをすることで、最高のコストパフォーマンスを実現していると思います。

 日本ブランドでも特に親しみやすいブランドを目指していますが、ただそれがベトナムのお客様にうまく伝わっていなかったと感じていました。そのため、現在マーケティングの手法も見しています。

―― どのように見直したのですか?

高原 以前はGoogleやFacebookなどを使ったダイレクトマーケティングが中心でしたが、スズキの車に関心のない人へのアプローチも始めました。この3ヶ月ほどは広告媒体を多様化し、お陰様で多くの方に当社のブランドに親しみを持っていただけるようになりました。

 現在複数の銀行と協力して、ローンの最初の6ヶ月の金利をゼロとしています。10月に開催されたVietnam Motor Showでは保険会社と提携して、車両保険をプレゼントするなど特典を設けた結果、多くのご注文をいただきました。

 他にも車両の登録費を一部サポートするなどして、よりお求めやすくなっていることを広告しています。また、毎週金曜日夜9時から始まるVTV2の「Drive me home」というクイズ番組のスポンサーにもなりました。正解者に「セレリオ」や「スイフト」をプレゼントしています。とても面白い番組なので、お時間がございましたらぜひご覧ください。

今後のブランド戦略

―― 思い切った転換ですね。今後はいかがでしょうか?

高原 ベトナムのお客様は世界でも最も大切なお客様であるという認識をベースに、最新モデルを紹介していきたいと思っています。

 加えて、ベトナムのお客様の嗜好に沿った装備や機能を付けていきます。特に安全面は充実させたいと考えています。そのためモーターショーでは来場者の皆様に、望ましい最新機能に関してヒアリングを行いました。

 質問は主に「お金を払ってでも欲しい機能は何か?」ですが、その結果を踏まえ、順次装備を追加していくことを検討中です。

―― どのような装備ですか?

 申し訳ありません。現時点で詳細をお伝えすることはできませんが、今後発売を開始するモデルは、より一層ベトナムのお客様の声を反映したモデルになります。

 お客様のニーズは国別で異なりますし、道路事情などによっても状況は違ってきます。また、高機能装備はいくらでも追加できますが、道路状況等で有効に使えない機能もあります。こうした事情を踏まえて、ベトナムでのニーズを洗い出しています。

 また当社はご購入後も末永くスズキファンになっていただきたいと考え、セールス担当やサービスマンがお客様とコミュニケーションできる場を作るようにしています。納車式では写真を撮ってお渡ししていますが、その後もイベント等でご意見などを聞いており、お客様とのお約束は必ず守ることを徹底したいと思っています。

 私にとってブランドとは、当社の製品を使っていただいたお客様の記憶の蓄積であり、売って終わりでは確立できないと考えています。従いまして、販売後のお客様のケアを充実させて、今以上にご家族やご友人にご紹介いただけるようなブランドになりたいと思っています。

―― 二輪についてはいかがすか。

高原 弊社はスポーツタイプを中心に、モデルラインアップの充実を図っています。二輪も同様で、いかに長く快適に使っていただけるか、スズキのファンになっていただけるかを最も重要と考えています。

 ベトナムでのシェアは残念ながら高くはありませんが、当社のエンジン性能、耐久性に信頼を置いてくださっているお客様も大勢いらっしゃいます。スズキファンの皆様のご要望に少しでお多くお応えできるよう、モデルラインアップや販売体制の見直しを図っていきます。

―― 最後に、ベトナムのモータリゼーションをどう感じますか?

高原 ハノイやホーチミン市では、既にモータリゼーションが始まりつつあると感じます。ただ、都市部の駐車場等のインフラはまだ十分でなく、引き続きバイクに乗る方もいらっしゃると思います。そのためベトナムでは、一気に車社会になるのではなく、インフラが整うまでバイクと車を使い分けるお客様がいると思います。例えば、街中はバイクで移動し、週末の遠出や郊外に住む方などは車を使うなどですね。

VIETNAM SUZUKI CORPORATION
高原敏晋 Toshiyuki Takahara
大学卒業後に大手総合電機メーカーに入社。その後、2004年にスズキ株式会社に入社。2006~2010年に営業責任者としてベトナムに赴任。日本での国内営業やアフリカ担当を経て、2019年4月にベトナムに再赴任。9月より現職。