ベトナム最大級となる美容業界の展示会、「Vietbeauty & Cosmobeauté Vietnam 2023」が7月27~29日にホーチミン市7区のSECCで開催された。3日間の総来場者数は8700人以上。美容の最新事情を見ていこう。
外国企業が狙うベトナム市場
従来は2つの展示会だったVietbeautyとCosmobeautéが2022年に統合されてVietbeauty & Cosmobeautéとなり、今回で第2回目の開催となる。
25の国と地域から400社以上の出展企業が集まり、1000以上の美容ブランドが紹介された。外国企業の出展が多いのはベトナムの化粧品のほとんどが海外ブランドであり、外資にとって魅力的な市場だからだ。
販売されている化粧品の約9割が輸入品と言われており、中でも韓国はベトナムへの最大の化粧品輸出国。この展示会でも最も出展数が多い外国企業であり、ホール中央にブースを集めて存在感を示していた。次いで出展数の多いのは台湾企業、中国系企業。国際パビリオンは韓国と台湾に加えてタイと日本が目立っていた。
来場者で多いのはやはりベトナム人の若い女性。関連業界の女性が同僚と視察、純粋な興味で友人と来訪など、複数で来場する人が多かった。
OEMでベトナム企業を開拓
化粧品等のOEMで開発、製造、パッケージデザイン、流通までを一貫して請け負う株式会社コスモビューティーは2回目の出展。前回は合計約300組の来客と盛況で、今回はブースを1コマから3コマに増やした。この日は2日目で、初日は100人程度が訪れたそうだ。
ホーチミン市に3工場があり、日本で受注した製品の生産と輸出をしている。ただ、今回の出展の目的は、日本の工場でOEM生産した製品をベトナムへ輸出する事業の顧客開拓だ。日本の化粧品、特に「Made in Japan」はベトナムで大きなブランド力があるという。
「これまでのノウハウを活かして、ベトナムのお客様のご要望に合わせた、日本品質のオリジナル商品をご提供できます」
中国でも日本生産の化粧品が人気だが、いわゆるチャイナリスクもあって別の候補となる国を探した。親日で、日本製品を好み、時差を考えずに打合せが可能な、成長国のベトナムが選ばれた。
広々として明るいブースでは浴衣を着たスタッフが来場者に接客。「ほかのブースでは中々見られない」という炭入り洗顔フォームや環境にやさしい天然スクラブなどを多数陳列したこともあってか、質問する来場者が絶えなかった。
ターゲットとする顧客には個人も含まれる。不動産などで高収入を得た富裕層などは日本製品が高額でも売れることを熟知しており、商品はインフルエンサーを使ったTikTokなどでの拡散を考えているそうだ。
「それなりの事業規模となるのである程度のデポジットは発生しますが、それでも始めたいという方が多いです」
「サプリはないの?」から出展
コスモビューティーのブースでは、健康食品を生産・販売するニッショク株式会社も出展した。美容系の展示会に出展すると「サプリは扱っていないのか?」と聞かれることが多いため、今回は青汁やサプリを販売するニッショクとの共同出展とした。
ブースの一角に「サプリメントコーナー」を作り、青汁やコラーゲンドリンクなどを展示。出展は初めてで、コスモビューティーを代理店としてベトナムに進出する計画だ。ベトナム人への商品アピールと知名度アップのために来越した。
「ベトナム人で日本の健康食品は人気ですし、弊社の青汁は飲みやすさが特徴で、優位性はあると思います。ベトナムに精通しているコスモビューティーさんと一緒に販路を広げたいです」
ブースがホール入口近くにあるためか、来場者が多いという。
日本ブランドの輸入販売代行
販売⽬的で輸⼊する化粧品や健康食品は、事前にベトナム保健省の医薬品管理局(DAV)に申請する必要がある。そこでベトナムの子会社であるPA Vietnamを輸入元として申請を代行し、流通や販売までを請け負うのが株式会社PAエンタープライズだ。
出展の目的は主にバイヤーとの商談と取扱い商品のアピール。バイヤーは新規開拓よりも既に卸している100店舗ほどの取引バイヤーとの商談で、展示ブランドは「Bb LABORATORIES」、「Towashiro」、「mypa」。
「ベトナムで販売して2年目です。東南アジア市場を拡大したく、人口も若い世代も多い、成長著しいベトナムに期待しています」
Bb LABORATORIESの商品は、日本でも人気のプラセンタエキスの原液やオイルクレンジングなど。来場していた販売元である株式会社ビービーラボラトリーズにも話を聞いた。
「このような代理店販売は他国でも展開しており、これからはベトナムで広げるつもりです。認知度を上げたくて出展しました」
一番大きな海外市場は中国、次が台湾で、香港、シンガポール、マレーシア、オーストラリアなどでも販売している。
Towashiroは女性の肌の黒ずみなどをケアする商品で、2022年12月からベトナムの女優Phan Minh Huyenさんがブランドアンバサダーを務めている。バストアップのための商品など、Vietbeauty & Cosmobeautéに向けて開発した商品も展示していた。
このブランドはベトナムで人気のようで、割引販売した会場での売行きも好調。「最終日に余った分をすべて買う」と言った来場者もいたそうだ。
mypaはPAエンタープライズが運営するベトナム女性向けWebサイトの名前で、クレンジングバームなどを置いた。
次世代のエイジングケア成分
日本から出展した木森株式会社は、化粧品、健康食品、ヘアケア商品などのOEM生産をする企業。日本の工場で生産し、ベトナムに輸出する計画で、ベトナムでの新規顧客を探していた、。
Vietbeauty & Cosmobeautéへの出展は初めてだが、ベトナムで販売されている商品もあり、そのひとつであるUVブロック用の「Taiyo(たいよう)」などを陳列していた。
ブース内のボードでは、次世代のエイジングケア成分として近年脚光を浴びている「NMN」(β-ニコチンアミドモノヌクレオチド)を強調した。NMNを原料として配合したサプリを製造できるという。
「具体的な商談には至っていませんが、『ホテル用のアメニティを探している』、『ベトナムの化粧品は匂いがきついから日本製が欲しい』などの声を聞いており、展示会終了後にまとめてコンタクトを取るつもりです」
コットンの品質をその手に
化粧用コットン「Lily Bell」ブランドを前面に押し出し、爽やかな白のブースで出展していたのがスズラン株式会社。ガーゼやコットンなど衛生材料のメーカーで、脱脂綿やガーゼを病院などの医療機関に納入した実績から、ベビーケア用品、一般衛生用品、コスメ分野にも進出した。
日本のほかに中国に主力工場を持ち、ベトナム工場では化粧用コットンに使う脱脂綿や不織布を生産している。
「コットンパフやコットンシートなどLily BellはベトナムでEC販売などをしていますが、もっと顧客層を広げたくて出展しました」
ブースでは様々な種類のコットンを展示し、その場で手に取ってもらったり、ギフトとして渡していた。
富裕層向けの日本商品
在日ベトナム人向けにベトナムや東アジアの食材・食品を販売するECサイト「Sesofoods.com」。運営会社は2020年設立のSE-SO株式会社で、会員数は約4万人と日本最大級に成長した。同社の創業者が今年1月に設立したのが、初出展のViPro Japan株式会社だ。
ベトナムの進出コンサルや市場調査から始まり、ベトナム市場での販売チャネル拡大などを依頼されるようになった。出展の目的は取り扱う日本商品の、ベトナムでの販路拡大と商品アピールだ。
商品のひとつは「中国で激売れしている」というfracoraの美容ドリンク「プラセンタ液150000」。ベトナムでも人気が出始めて、毎月約5万本を売り上げるという。日本でおよそ5000円、ベトナムではECで150万VND程度とかなり値が張る。
「30~40代の富裕層の奥様方が、スパや美容サロンを終えた後に飲むと聞いています」
ベトナムに店舗や販路を持つ大手企業のリップクリーム、ヘアトリートメントなども陳列した。これらメーカーからは事前に販売許可を得て、バッティングを避けているそうだ。
また、日本と輸出入をするための提携企業がベトナムにあり、販促のためのKOLやYouTuberも確保している。
「お客さんは興味を持ってくれて、メイドインジャパンのブランドに根強い人気を感じました。カンボジアからわざわざ来た方々もいたんですよ」
美容市場に参入チャンス
国際的な調査会社のStatistaによれば2023年のベトナム化粧品市場は5億2890万USDに達する見込みで、2023年から2028年の年間平均成長率は3.21%と推定されている。また、ベトナムの中流階級の女性は2022年、メイクとスキンケアに1ヶ月平均45万~50万VNDを費やしている。
韓国や台湾の企業は数が多くて勢いもあるが、日本のブランドと品質も十分に対抗できるはずだ。来年は出展数を増やして、ガンガンアピールしてほしい。