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ベトナムで活躍する日系企業|リーダーたちの構想 第84回|MITSUBISHI ELECTRIC VIETNAM

三菱電機ベトナムの西隈社長

2011年に販売会社として設立された三菱電機ベトナムは、空調家電とFAを主事業として業績を伸ばしてきた。近年では省エネを進める時代の波が好影響を与えているという。西隈社長が詳細を語る。

広がるヒートポンプ給湯器

西隈 弊社設立前はベトナムでは代理店による間接販売が中心でしたが、市場成長が著しくより積極的に事業を拡大するため、販売会社として三菱電機ベトナムを設立しました。現在はホーチミン市の本社に加えてハノイとダナンに支社があり、従業員数は合計で200人強です。

 弊社事業には2つの柱があり、空調家電事業とFA(ファクトリーオートメーション)事業です。空調家電では家庭用のルームエアコンや扇風機から、業務用の大型空調設備やヒートポンプ給湯器などがあります。

 空調家電事業については、家庭用は小売店や量販店で販売しており、業務用は多くのホテルや病院、マンション、オフィスビルなどで幅広くご採用いただいております。加えて、製造業向けのご提案も積極的に行っております。

 近年では環境意識の高まりもあって、省エネ性能が高い高効率空調機器が求められています。大型ビルなどでは消費電力の約半分を空調関連が占める場合もありますので、高効率空調機器の導入は電気料金の節約にもつながります。

 この空調機器に使われているヒートポンプ技術を使った温水機器がヒートポンプ給湯器です。

MITSUBISHI ELECTRIC VIETNAMの製品

西隈 ヒートポンプ給湯器は、従来の燃焼型のボイラーなどと比較して省エネ効果が高く、CO2排出量も削減できます。この特徴から、燃焼型ボイラーからの置換えが徐々に始まっています。

 ヒートポンプ給湯器は、これまでのところホテルでの客室やプール用途、工場での洗浄工程、ベトナムで広がりつつあるONSEN(温泉)施設などでご採用いただいております。

 高効率空調機器と同様に、省エネや環境配慮を意識されている企業様から導入が進んでいますので、日系企業や国際的なブランドホテルなどから始まり、今後はベトナム企業にも採用が広がることを期待しております。

 また、当社家電製品で根強い人気を持つのが扇風機です。ベトナムの扇風機市場では多くのブランドがしのぎを削っていますが、弊社品は耐久性だけでなく静音性や安全性が高いことも特徴です。

 また、三菱電機は空気抵抗を減らして効率良く風を作る羽根の設計が得意で、省エネ性にも優れています。

MITSUBISHI ELECTRIC VIETNAMの自動化ロボット

FAは省人化と省エネ化

西隈 日本や韓国では数年前からフルオートメーション化が進み、ここ2年ほどで最先端のモノづくりの動きが始まりました。生産現場にAIやIoTなどのデジタル技術を導入し、製造プロセス全体の効率化や最適化を図っています。

 ここではまず作業内容をデータ化することが重要ですが、ベトナムでは自動化が進んでいない、データ収集ができていないなど、ITシステム導入以前の課題が多くあります。

 そのためか、弊社FA事業のお客様は、スマートフォンやディスプレイなどの大手韓国系メーカーのサプライヤーが多くなっています。日系企業もありますが、ベトナム企業はかなり少ないのが実態です。

 それでも生活水準の向上で人件費が高騰し、中華系や韓国系製造業の進出が進んだ影響で人材確保が難しくなるなど、生産現場の自動化や省人化は避けられない状況です。

 ベトナムの強みだった「安価な賃金による労働集約型」は大きな転換期を迎えており、これは北部に顕著な傾向だと思います。

 FA事業ではPLC(シーケンサー)などの制御機器、サーボやインバーターなどの駆動機器に多くの実績があり、ロボット化もご提案しています。究極の目的は工場全体のフルオートメーション化ですが、各工程での見える化といった部分最適化もあります。

 ご相談を受けてから工場をリニューアルするまでは、打合せに1年程度を要し、ラインは止められないので、作業に入って工事完成までが2~3ヶ月です。

 こちらを省人化のためのビジネスとすれば、最近注目されているのが省エネ化のためのビジネスです。

MITSUBISHI ELECTRIC VIETNAMのFA設備デモンストレーション

西隈 ベトナムが2050年に掲げているカーボンニュートラルは世界的な動きです。近年ではサプライチェーンの中での省エネやCO2削減が求められ、対応できない企業は製品を納入できない、契約を継続できないケースも考えられます。

 欧米系の大手メーカーにこうした傾向が強く、ベトナムの製造業も省エネは取り組まざるを得ない課題になっています。

 弊社では省エネを支援する製品として「電力見える化製品」をご提案しています。消費電力のセンサーや計測機器、単品の電力メーターから工場全体の消費電力を測定する機器など、ハードウェアもソフトウェアも取り扱っています。

 カーボンニュートラルに向けた機運は高まっており、今後もFA事業における省エネ化は拡大していくと思います。

MITSUBISHI ELECTRIC VIETNAMの社員表彰式

西隈 弊社というより三菱電機グループの動向ですが、ASEAN向けFA機器の生産体制を強化するため、2024年にMitsubishi Electric FP Automation Vietnamをフンイエン省に設立しました。工業用の低圧遮断器(ブレーカー)の生産を既に始めています。

 各国が力強い経済成長を続けるASEANでは、FA機器の需要拡大が見込まれます。そこで販売のみではなく生産拠点をこのベトナムに作りました。ブレーカーから生産を始め、ベトナム国内のほかタイ、インドネシア、マレーシアなどへ輸出していく予定です。

 三菱電機ベトナムとしては2つの主軸事業を拡大していきます。ベトナム政府が推進しているFDI誘致やベトナム製造業の脱炭素化、省エネ化、省人化は弊社の追い風になるはずで、様々なバリエーションを持つサービスが強みです。

 FA事業では特に北部で新設が続く工業団地、空調設備では外国企業の投資も拡大するデータセンターでもニーズが生まれそうです。

 ベトナム国内では省庁再編で各自治体の規模や予算が増えることで、国内投資が加速すると思います。主に公共投資によるインフラ整備で、実際に急ピッチで道路工事が進んでいます。米国による貿易関税など外的な不安要素はありますが、ベトナムにはまだまだ期待できると感じます。

MITSUBISHI ELECTRIC VIETNAMのエアコン

MITSUBISHI ELECTRIC VIETNAM
西隈 隆 Takashi Nishikuma
2012年に三菱電機に入社。東京本社に勤務後、2014年からインドの販売会社で空調家電事業を3年間担当。帰国後は海外営業部門に携わり、2020年6月にベトナムに赴任。2023年4月より現職。JCCHのホーチミン市部会長。

執筆者紹介

取材・執筆:高橋正志(ACCESS編集長)
ベトナム在住11年。日本とベトナムで約25年の編集者とライターの経験を持つ。
専門はビジネス全般。

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