ヨーロッパの多くの国が多様な業種や年齢に門戸を広げている中で、ベトナムの労働力輸出は、これまでのアジア諸国からヨーロッパにシフトしつつある。
カレッジの最終年に海外出稼ぎを考えた24歳のブイ・ホアイ・ブーさん(24歳)は、多くの海外の労働市場を調べた結果、ドイツを選択することに決めた。ブーさんによれば、これまで長年にわたりベトナム人労働者を惹きつけてきた日本、韓国などはもはや魅力が薄れており、手続きも複雑だ。「ドイツ行きを選びました。初期費用は他の国と大体同じ1億5000万VNDです」とブーさんは話す。
労働・傷病兵・社会省傘下の海外労働局が展開している看護職以外に現在ドイツに労働者を派遣する認可を受けた企業は存在しない。そのため、ブーさんはまず料理留学を選択し、留学期間中の70%をレストランでの実習とし、残りの期間は無償で学校に通った。
1週間に学業と実習をおこなえる時間は40時間以内と決められている。レストランでの実習期間には月給1000ユーロが支払われる。各種の税金や社会保険を差し引くとブーさんの手元には800ユーロが残る。家賃と食費に500ユーロかかったとしても、ブーさんの手元にはまだある程度のお金が残るので、毎月ブーさんはベトナムに300万~500万VNDを送金している。L
ブーさんによれば、最低賃金の2400~2600ユーロと比べると実習期間の収入はかなり低い。ただし、実習期間は2年間のみで、学校を卒業して資格を取得すれば、正社員としてより多くの収入が期待できる。
伝統的な労働力輸出市場である日本、韓国などが魅力を失いつつある中で、ブーさんのようにドイツに職業学校に留学してから就職するという回り道をするのではなく、ベトナムと協力して正式に労働者を採用しているロシア、ルーマニア、ポーランド、ハンガリーなどに出稼ぎに行くベトナム人も増えている。
送り出し機関Sonaのグエン・ドゥック・ナム会長は、これまで同社の主な取引先は日本と韓国だったと話す。しかし、これまで長年にわたり同社は、ヨーロッパの市場開拓に力を入れてきた。日本は年齢制限があり、韓国は手続きが複雑だが、ルーマニアなどの一部のヨーロッパの国は、かなり寛容に受け入れているのがその理由だ。一般労働者であれば、高いスキルは求められず健康な年齢層であればチャンスがある。
同社では、毎年200~300人の労働者をヨーロッパのいくつかの国に送り出している。給与額は、業種によって異なるが、派遣費用は、語学や職業訓練の費用を除いた契約期間に基づく1ヶ月分の給与を超えないとされている。
ホーチミン市の労働輸出企業Tracoの採用担当者であるグエン・ティ・フーン氏は、この2~3年で、労働者は日本よりもヨーロッパで仕事を見つけたいと考える傾向が強まっていると話す。その理由は、急激な円安と日本の生活費の高騰にある。その一方で、ヨーロッパの多くの国は、労働力を渇望しており、移民労働者誘致政策を大きく転換している。
例えばドイツでは、スキルのある労働者を惹きつけるために政府は、外国人が市民権を取得できる条件を以前の8年から5年に変更した。これにより、労働者は5年働けば永住権を申請して家族を呼び寄せることが出来るようになった。また、外国人労働者もドイツ人と同等の労働条件と福利厚生を享受できる。さらにドイツは、今年1月にベトナムとの協力関係を拡大するために労働・雇用分野における覚書を締結している。
海外労働管理局によれば、一部のベトナム企業がヨーロッパの10カ国以上に労働者を派遣している。受け入れ国のニーズに応じて労働者は異なる仕事に従事し、給与も異なる。現在、ヨーロッパで最もベトナム人労働者を受け入れているのはルーマニアの4100人で、このうち90%が建設業と製造業に従事している。一般労働者の最低賃金は650USDで、スキルがあれば800~1000USDとなる。勤務時間は、週5日、1日8時間となっている。
ロシアの企業は、製造業、食品加工、産業機械オペレーターを必要としている。平均月収は500~700USDで、労働時間は月22日、1日8時間とされ、残業代は別に支払われる。同様にブルガリア、ハンガリー、ポーランドなども製造業、農業などでスキルのある労働者を求めている。基本給は、業種によって500~700USDで、残業代は別途支払われる。
ヨーロッパの労働市場では、殆どの場合労働者には、宿泊場所と食事、通勤用の交通費が提供される。最初の渡航時と労働契約満了時の帰国用の航空運賃も企業が負担する。国によって契約期間は2~3年だが、延長されることもある。渡航時に必要な費用は主にサービス費用とビザ代だ。サービス費用は、労働契約の1ヶ月分の給与を超えてはならないと規定されている。
海外労働管理局の情報・宣伝部に勤めるグエン・ニュー・トゥアン副部長は、ヨーロッパには現代的な生活環境、安定した収入、良好な労働条件、長期にわたって働ける可能性があるなどベトナム人にとって魅力的な条件が備わっていると説明する。
しかし一方で、ヨーロッパで働く場合、労働者は、非常に寒い気候、冬季に仕事が少ない、日本や韓国に比べて大きな文化の違いなどの問題に直面する。さらに、ベトナム人労働者は、ヨーロッパ域内の他の国の労働者や発展途上国からの労働者と同じレベルで競争する必要がある。
また、トゥアン副部長によれば、ヨーロッパに人材を送り出している企業は、労働者が第3国に逃亡するという大きな問題にも直面している。その為、送り出す労働者の選別は非常に厳格であり、明確なルールが設けられている。逆に言うと、「簡単に仕事が見つかって高収入」というい謳い文句の仲介業者を労働者が簡単に信用してしまうと、騙される危険性が高くなる。
トゥアン副部長によれば、少なくとも今後5年間は日本と韓国がベトナムの主要な労働力輸出市場であり続ける。ヨーロッパ諸国はEU外からの労働者の受け入れを始めたばかりで、受入れには慎重で、現在はテスト段階にすぎない。「ヨーロッパで働きたい労働者は、仲介業者を慎重に選ぶ必要があります。不審な点があれば海外労働管理局のホットラインに電話して確認し、詐欺にあわないようにしてください」とトゥアン副部長は述べた。
出典:2024/04/02 VNEXPRESS提供
上記記事を許可を得て翻訳・編集して掲載