何か月にもわたって1日16時間仕事をしていたハノイ在住の男性(40歳)は、夜寝れなくなり、けだるさを感じて医師の診察を受け、自律神経失調症と診断された。
7月17日にマイフーン・メンタルクリニックのチャン・ティ・ホン・トゥー副院長は、この男性が3日間連続で寝ることが出来ず、体が衰弱し、手足が震え、酷い汗をかいていたので入院させたと話す。
この男性は、部長に昇進して以来、常に仕事のことを考え、”上司に自分の能力を証明し、部下にアピールする”ために必死で働いた。毎日、深夜1~2時ごろまで仕事をして、時には帰宅せずに会社で寝泊まりすることもあった。
その結果、この男性は、自分のことに興味や関心を持たなくなり、家族ともコミュニケーションをとらず、食欲もなくなった。この数ヶ月、男性は不眠症に悩まされ、常に不安感を感じ、不安定な生活を続けてきた。診察した医師は、メンタルケアと合わせて薬を処方し、プレッシャーを軽減するために仕事を調整するようにアドバイスした。
別のケースで、ベトナム幸福アカデミー精神科のグエン・ティ・フーン・ラン医師は、診察に訪れた男性(32歳)に働き過ぎによるうつ病の兆候が見られるとして、入院治療を勧めた。この男性は銀行で働いており、上司から常にKPIについてのプレッシャーを感じていた。
当初、この男性は、個人的な用件を脇において仕事の成果に集中していた。しばらくすると、この男性は仕事の成果達成に夢中になり、1日に15~16時間働くことが当たり前になっていった。「夢の中でも仕事のことを考えるようになり、仕事がないと虚しいと感じ、他のことには興味がわかなくなりました」とこの男性は話す。
男性は、眠れなくなると眠るためにアルコールを摂取するようになり、それによってさらにストレスが生じ、体が弱り、胃から出血することになった。男性は、自分を解放するために自分自身を痛めつけるようになり、最終的にうつ病と診断されることになった。
ワーカホリックは、現代社会では一般的になりつつある症状で、極端に仕事にのめりこむことで、個人の健康や生活に悪影響をもたらすものだ。
トゥー副院長によれば、多くの人は、当初は与えられた仕事を完了させるために個人的な事情を忘れるようにというプレッシャーを感じるが、時間が経つにつれて、機械のように長時間働き続けることが当たり前になる。ワーカホリックになるもう一つの理由は、真面目に一生懸命働くことで周囲から称賛されるようになり、他の社員の模範としてみられることで仕事を止められなくなるというものだ
ワーカホリックの兆候としては、頻繁に1日14時間以上仕事をしたり、必要以上に仕事を抱えすぎたり、他の人に仕事を任せると、孤独感や不安感を感じたりすることが挙げられる。仕事が最優先事項になり、家族、社会はもちろんのこと自分自身のことにも関心が無くなっていく。休みの日でも常に仕事のことを考え、不安やストレスを感じ、仕事をしていないことに罪悪感すら感じることもある。
ワーカホリックの人は、不眠症、疲労感、腹痛、不安感、うつ病など健康上の問題を引き起こす可能性がある。ワークライフバランスが崩れると、人間関係でのトラブルにもつながりやすくなる。多くの場合、自分自身を含め、家族や友人との関係を維持するための時間が割けなくなり、徐々に孤独になっていく。仕事から離れると孤独や虚しさを感じ、精神的に満たされたくて更に仕事にのめりこむという悪循環が生じる。
ワーカホリックの患者は、通常はメンタルヘルスケアと薬によって治療されるが、最も重要なのは適切な休養をとって心身をリフレッシュすることだ。1日の中で一定の仕事時間を設定し、正しいスケジュールに従って休憩することで、徐々に休憩することに慣れ、頭をリラックスさせることが出来るようになる。それに加えて、仕事時間の後に散歩したり、家族や友人と食事に行くなどの計画を立てるのも効果的だ。新しい習慣を作ることで、仕事への強迫観念を忘れることが出来るようになる。
「人間は、機械ではありません。ライフワークバランスを適切に保つことで、人々はより幸せを感じ、エネルギーを充填して効率よく仕事に取り組めるようになります」とラン医師は話す。
出典:2024/07/18 VNEXPRESS提供
上記記事を許可を得て翻訳・編集して掲載