経済の専門家たちはホーチミン市が2025年に域内総生産(GRDP)の二桁成長を目標に掲げたことは大きな挑戦であり、政策上の困難を克服し、需要を刺激するためには多くの解決策が必要だと指摘する。
これは、1月2日に開かれたホーチミン市発展研究所(HIDS)が主催した”2025年から2030年までホーチミン市が二桁成長を遂げるためのソリューション”と題するセミナーで、多くの大学や研究機関の関係者が発言した内容だ。
推計によれば2024年のホーチミン市のGRDPは7.17%となっており、目標の7.5~8%を下回っている。2025年、ホーチミン市は10%の経済成長を目標としており、HIDSに目標達成に向けたシナリオの提案を求めた。
ホーチミン市は、過去20年近くにわたり2桁成長を記録していない。過去5年間でホーチミン市の成長率が最も高かったのは2022年の9.03%だが、これは新型コロナの影響で2021年の成長率が6.78%と低い水準にとどまったことが理由だとみられている。
中央経済管理研究所(CIEM)のチャン・ドゥック・アイン副所長は、二桁成長は”壮大なチャレンジ”だと述べた。なぜならホーチミン市は依然として裾野が広く、高付加価値産業の割合は小さく、輸出、卸売・小売、輸送の中心地として周辺地域の成長に依存しているからだ。
「経済成長の目標は、国全体の状況を踏まえて設定するべきで、昨年の7.17%を受けて7.5~8.0%の成長目標は現実的だが、二桁の成長は厳しいでしょう」とアイン副所長は述べた。
サービス業はホーチミン市の経済構造の65%を占めているが、昨年のこの分野の成長率は約7%に留まった。そのため、ホーチミン市が10%の経済成長を達成するためにはサービス業の成長を急速に促す必要があるとフルブライト・ベトナム大学公共政策科のグエン・スアン・タイン博士は指摘する。一方で、サービス業と輸出に関して今年の見通しは不透明なままだ。
「2025年の輸出の伸びが昨年より低くなる可能性があり、この分野に大きな期待を寄せるべきではありません。アメリカと中国向けの輸出は、昨年末にかけて減速傾向を示しました」とタイン博士は述べている。
一方で専門家たちは、ホーチミン市が政策上の障害を取り除き、資本の流動性を高め、消費者と投資家の信頼を取り戻すという一連の重要な課題を解決できれば、この目標は全く実現不可能というわけでないと指摘する。
ホーチミン市人民委員会によれば、ホーチミン市が今年二桁成長を達成するためには、600兆VNDの開発投資資金をまんべんなく動員する必要がある。このうち市の予算からの資本が112兆VND、社会資本が488兆VNDとなっている。
ベトナム国家銀行ホーチミン支店のグエン・トゥック・レン副支店長は、公共投資の支出を加速し、行政改革を進め、不動産プロジェクトの問題解決など、地方が積極的に対応できることに集中するのが一番の近道だと指摘する。「資金の流れを停滞させず循環させるためには、不動産が最も重要なキーワードになります。資金が流入することで効果が生まれるでしょう」とレン副支店長は述べた。
この点に関して、ホーチミン市統計局のグエン・カック・ホアン局長は、ホーチミン市は、2000年から2006年にかけて不動産の力強い成長によって二桁の成長を記録したと述べた。「不動産分野の発展は、他の26分野にプラスの影響を与えるでしょう。不動産がポイントだと認識する必要があります」とホアン局長は付け加えた。
同時に専門家たちは、ホーチミン市が長年にわたり”窮屈なシャツを着ている”つまりインフラのボトルネックに直面していると指摘する。輸送コストの高騰に加えて、住宅や事務所、工場などの不動産の供給不足による値上がりが投資家の目には収益機会の減少と映っているとホーチミン市経済大学のホー・ホアン・アイン教授は指摘する。アイン教授は、民間の投資資本とFDIが昨年少なかったのは、これが1つの要因になっていると述べた。
中央経済委員会情報予測センターのグエン・トゥ・アイン所長は、二桁成長を達成できるかどうかは、国の資源を強力かつ効果的に投入できるかどうかにかかっていると述べた。「公共投資を促進させ、道路や港湾などのインフラ整備に加えて、2026年から2030年の成長基盤を築くためにデジタルインフラ整備も重要なポイントです」とアイン所長は述べている。
専門家たちは資本の流動性を高めるとともに、引き続きサービス業の成長を促進し、製造業も忘れてはならないと指摘する。中央経済管理研究所(CIEM)のチャン・ドゥック・アイン副所長は、観光業の促進、特に文化イベント、フェスティバル、エンターテイメントによって海外からの旅行者の誘致を積極的におこない、観光産業を刺激し続ける必要があると述べた。アイン副所長によれば、ホーチミン市は、昨年フェスティバルや音楽祭などの積極的な開催によって成功を収めている。
2025年は、ホーチミン市が南部開放とベトナム統一50周年を祝う年であり、毎月5~6のイベントが開催される予定だ。専門家らはこれらのイベントは、政治的意味合いもありながら文化イベントであり、観光と消費を刺激する公共投資の一形態でもあると考えている。
グエン・スアン・タイン博士は、信頼を強化するために、ホーチミン市が市民の社会保障政策を支援し、金融市場を安定させることを提案した。過去2年間法的リスクへの懸念から外国人投資家の活動は低迷しており、政策と投資環境の改善を通じて早急にこの問題を解決する必要がある。
さらに2030年までの段階で、ホーチミン市は構造改革と生産性向上に向けた投資、つまり経済効率の改善に取り組む必要がある。その中でホーチミン市は、イノベーションセンターを設立し、自動化、新素材開発、半導体、クリーンエネルギーなどの技術移転を目指す。
もしくは、ホーチミン市が将来的に国際金融センターとして発展することも外国人投資家を呼び込む要因となりうる。行政改革を継続し、消費と投資を誘致する大規模なイベントを開催する。「これらのソリューションを成功させられれば、二桁成長には及ばずとも、急速な成長を遂げられるでしょう」とグエン・ドゥック・レン副支店長は述べた。
出典:2025/01/02 VNEXPRESS提供
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