トランプ大統領の発言がベトナム繊維・履物産業に「青信号」
「我々はスニーカーやTシャツを作るつもりはない。軍事装備を製造し、AIのような先端技術に注力したい」と語ったトランプ大統領の最近の発言が、ベトナムの繊維・履物業界にとって追い風になる可能性があると注目を集めている。
この発言は、現在実施中の90日間の相互関税猶予期間中に出たものであり、関係者の間では米国による関税強化の可能性が後退した兆候として受け止められている。
業界団体「米市場にとって繊維製品は依然不可欠」
ホーチミン市刺繍・縫製協会のファム・スアン・ホン会長は、「トランプ大統領の発言は、ベトナムを含む繊維・縫製業界のアメリカ向け輸出にとって“青信号”と捉えられる」と評価する。
ホン氏によれば、衣料品は依然として米国市場において必要不可欠な消費財であり、経済が不安定な中でも需要が大きく減ることは想定しづらい。もし米国がこの分野に高い関税を課せば、最終的に価格転嫁によって米国消費者が負担を強いられることになり、逆効果になる可能性が高いと指摘した。
ベトナムの優位性と警戒感
また、ホン氏はベトナムの優位点として、米国との安定した外交関係、熟練労働者の存在、そして政治的安定性を挙げる一方で、トランプ氏の通商政策は変動が激しく、楽観視しすぎないよう警鐘も鳴らした。
企業現場も戦略を再構築
縫製会社Donyのファム・クアン・アイン社長は、「米国が相互関税を一斉に適用すれば、国際貿易の構図は大きく変わるでしょう。柔軟に動ける国こそが主導権を握るのです」と述べた。
アイン社長は、ベトナムが地政学的な強みと米国との包括的な関係を活かし、安定した関税体制を維持できれば、競争における優位性を確保できるとの見方を示した。
履物業界も楽観視、物流と生産対応が急務
ホーチミン市革靴協会のグエン・ヴァン・カイン副会長も、今回の発言に前向きな見解を示し、「90日間の相互関税猶予は大きなチャンス」としつつ、価格競争力と生産の柔軟性が業界の強みであると語った。
加えて、ベトナムの繊維・履物産業は、港湾や物流インフラの整備、政治的安定などの面でもバングラデシュなど他国に対して優位にあるという評価もある。
6月が正念場、スピード対応が鍵に
専門家によると、関税交渉の結果は2025年6月中旬からベトナムの輸出企業に影響を与え始める可能性が高い。ベトナムから米国への海上輸送には通常30~45日を要するため、関税猶予期限の7月9日までに商品を届けるには、6月前半中の生産・輸送完了が求められる。
このため、多くの企業が現在、納期再交渉や新規市場の開拓を並行して進め、リスク分散を図っている。
最大の課題は「原材料の自立性」
一方で、多くの専門家が共通して指摘しているのは、ベトナム企業の原材料依存問題である。特に中国からの輸入原料に大きく依存している現状では、関税や地政学的リスクの影響を大きく受けやすい。
ファム・スアン・ホン氏も「国内での原材料供給能力はいまだに限られており、商機があっても原料がなければ応じられない状況にある」と懸念を表明した。
「原料の国産化は死活問題」企業代表が強調
ベト・タン・ジーンズ社のファム・バン・ビエット会長も、「原材料の自立はもはや選択肢ではなく、生き残りの条件だ」と強調し、サプライチェーンにおける国内資源の活用と生産体制の強化が急務であるとの認識を示した。
トランプ大統領の発言を契機に、ベトナムの繊維・靴産業は一筋の光明を見出しつつある。だがそのチャンスをつかむには、原材料の自立と物流のスピード対応が不可欠であり、ベトナム産業界は正念場を迎えている。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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