ホーチミン市は旧バリア・ブンタウ省と旧ビンズオン省との行政統合により、産業発展のための空間と土地が大きく拡大された。これに伴い、新生ホーチミン市はグローバル都市を視野に入れた次世代型産業戦略の構築に動き出している。
東部国際大学のグエン・タイン・チョン博士は、新都市の産業発展に向けて、4つの戦略的提言を発表した。
旧来型工業団地を再編、都市中心部からの移転を
第1の提言は、工業団地の集約だ。統合前のホーチミン市内には26の工業団地と輸出加工区(総面積5,900ha)が存在しており、2030年までにその数を36か所(総面積8300ha)まで拡大することが計画されていた。しかし、ホーチミン市の既存工業団地の多くは30年以上前に整備されたもので、インフラの老朽化や住宅密集地との混在が課題となっていた。
一方、旧ビンズオン省は、将来的に2万5,000ヘクタールの工業用地を目指すなど、計画的な土地整備が進んでいたものの、港湾・空港・物流面に課題を抱えていた。また、旧バリア・ブンタウ省は港湾や重工業・エネルギー・石油化学分野の立地に優れていたものの、土地やインフラ整備に制約があった。
こうした背景のもと、再編後の新生ホーチミン市は合計68の工業団地(うち輸出加工区3カ所)、総面積2万5,849ヘクタールを擁するまでに拡大した。2030年には103カ所、最大で4万ヘクタール規模に達する見通しだ。
ホーチミン市はこの新たな用地を活用し、工業団地を専門分化・グリーン化・スマート化させると同時に、既存の工業団地を段階的に都市中心部から移転させたい考えだ。特に、交通インフラが整備されつつある北〜北西部および東〜北東部が移転先として検討されている。
あわせて、一部の老朽化した団地については、高度技術を担う産業団地やエコ工業団地への転換も視野に入れている。
交通インフラ強化で産業競争力を後押し
第2の提言は、地域接続インフラの整備加速である。現在も交通インフラの整備は進められているが、多くの幹線が未完成で、物流効率の低下や陸路への負荷が大きい。
高速道路(ホーチミン〜ロンタイン〜ザウザイ、ビエンホア〜ブンタウ、ホーチミン〜モックバイ)や環状道路3・4号線、国道13号線、ミーフォック〜タンヴァン道路の整備により、港湾・国境ゲートとのアクセスが飛躍的に改善される見通しである。
また、水路輸送の活用強化や、内陸コンテナ港(ICD)、保税倉庫、ロジスティクスインフラの整備も求められている。加えて、工業団地と港湾を結ぶ産業鉄道(クチ〜ドンナイ〜チャウドゥック〜カイメップ)の整備も検討されており、鉄道貨物輸送の最適化が期待される。
主力産業を明確化し、高付加価値型に転換
第3の提言は、主力産業の選定と高付加価値型産業への転換である。
現状、ホーチミン市の基幹産業は、①機械工業、②電気・電子・IT、③化学・ゴム・プラスチック、④食品加工の4分野で、加工製造業の約65〜70%を占めている。
一方、旧ビンズン省は木材加工、繊維、皮革、精密機械、医薬食品が強みで、旧バリア・ブンタウ省は重工業、石油化学、金属精錬、エネルギー産業に特化してきた。これらの地域資源を活用し、技術集約型・国際競争力の高い産業構造への転換を図る必要がある。
そのためには、まず市内産業の詳細な実態調査と統計分析を行い、現状に合った主力産業を定義し、サプライチェーン統合や関連産業の育成プログラムを実施しなければならない。
投資誘致政策と行政改革で成長加速
第4の提言は、国会が承認した特別政策(2023年・決議第98号)の活用である。これにより、市は他地域と比較して有利な政策枠組みを持ち、特にテクノロジー集約型産業やグリーン生産分野への投資誘致が求められる。
国家資本、民間資本、外国直接投資(FDI)の3つの資金源を最大限に動員しつつ、官民連携(PPP)を通じたインフラ開発と都市産業の統合を推進する。
また、行政手続きの簡素化、統治能力の向上、投資環境の改善などを通じ、特に中小企業や戦略的投資家と「伴走型支援」を行う体制の整備も急務となっている。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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