ホーチミン市建設局が提案する、ガソリンバイクの電動化改造の合法化アイデアをめぐり、過去に流行した「ガソリン車のハイブリッド改造」が再び議論となっている。しかし、この改造は安全面・法的側面の課題から、かつて短期間で消えた経緯がある。
安全面から法的枠組みまで多くの問題
2024年末、SNS上で “バイクの前輪に電動モーターを取り付ける” という「ハイブリッド改造」が話題となった。ユーザーは電動モーター付きの前輪を購入し、通常のガソリンバイクの前輪と交換する方式である。
市場にはWave Alpha、Lead、Vision、Air Blade、Nouvoなど多様な車種向けの電動モーター付き前輪が販売されている。バッテリーはガソリンバイクのシート下の収納スペースに置かれ、ハンドル部分には電動モーター用のスイッチが追加される。
この改造により、走行は前輪の電動モーターで可能となり、電力が切れるとガソリンエンジンへ切り替えて走行できる。費用は当時3万〜5万ドンとされ、ガソリン代の節約が売り文句であった。
一方、専門家は以下のような安全リスクを指摘している。
- 前輪が重くなり、速度が高い状態では方向転換が難しくなる
- 本来後輪駆動で設計されているバイクを前輪駆動にすることでカーブ走行時に操縦性が極端に低下する
- 前輪に駆動力がかかると急カーブでハンドルが取られやすく、事故につながる
- サスペンションやフレームは追加の重量や力を想定しておらず、ブレーキ距離も伸びる
- シート下スペースに大型バッテリーを置くのは設計上の想定外であり、火災リスクにもつながる
また、ガソリンバイクへの電動モーター追加は法的枠組みが存在せず、認証や検査制度もない。このため、流行はすぐに下火となった。
「電動化の移行期は終わった」専門家は全面反対
ホーチミン市開発研究院(HIDS)のレ・タイン・ハイ技師は、この「ハイブリッド化」には一切賛成できないと断言する。
同氏によれば、このアイデアは“移行期の応急的な解決策”にすぎず、現在はすでに電動化政策が明確化しているため意味が薄れているという。
現在、ベトナムでは以下の環境が整っている。
- 電動バイクの普及が進み、価格帯も広く選択肢が多い
- 多くのメーカーが「ガソリン車下取り・電動車乗り換え」キャンペーンを実施
- わずか100万〜300万ドンの追加で新しい電動バイクに乗り換え可能
- 国とホーチミン市も電動化政策を強力に支援
ハイ氏は、「旧型ガソリン車を改造するより、新しい電動車を買った方が安く、便利で、安全である」と指摘する。
さらに、ベトナムにはガソリン車を電動モーターへ改造する具体的な法規がなく、試験制度も未整備である。法整備を待つ間に、電動バイク市場はさらに進むため「政策と現実が噛み合わなくなる」と警告する。
ハイブリッド化は排気ガス削減にも不十分
最大の問題は、ガソリン走行と電動走行の切り替えが利用者任せであり、行政が排ガス量を管理できない点にある。通常は電動で走るはずだが、実際には「ガソリンで走る」可能性を誰も管理できないからだ。このため、環境政策としても不完全であると指摘されている。
ハイ氏は結論として、「2輪車のグリーン化は“直接EV化”が原則であり、ハイブリッド化への移行は不要である」と強調した。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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