今回からコラムを担当する谷原と申します。ベトナム企業の経営向けご支援を通して見えてきた「人と組織」の変化について、経営目線で実践的に紐解いていきます。ベトナムは非常に大きな転換点を迎えていると特集記事の中で触れましたが、「人」や「組織」に関しても同様です。そして、この変化に適応できるか否かがベトナムでの経営の鍵になると考えています。
直近5年でベトナム若年層の就労感は大きく変化をしており、これまで主流だった「安定志向」から、「働きがい」や「意味のある仕事」への関心が急速に高まり、転職へのハードルも著しく低くなっています。
背景には、成長意欲・社会貢献性・スキルの活用といった価値基準の変化があります。こうした状況の中で従来型のマネジメントスタイルでは、入社してもメンバーが転職してしまう、採用すら人が集まらないという状況に陥ってしまいます。
そして、最も注視すべきは、「職場の人間関係」が離職の主な要因となっている点です。実際、当社の調査でも、ベトナム人が企業に期待する要素の上位は「職場内の関係性」、「上司のサポート」、「会社全体の風通し」など、すべて「関係性」に関わるものであり、エンゲージメントの不足が人的流出を招くリスク要因となっています。
もはや給与や制度だけでは人は定着しません。企業として問われるのは、「何のために働くのか」や「誰と働くのか」に応えられる組織づくりです。
次回は、これらの変化にどう向き合い、競争優位を築いていくべきかを、データを元に深掘りしていきます。