前回は、ベトナムにおける「働きがい」への関心の高まりと、離職の要因としての「職場の人間関係」の悪化の存在をお伝えしました。
こうした人間関係の改善には、ミドルマネジャーによるマネジメントの力が不可欠です。特に、部下をサポートする姿勢、チーム内の連携の促進は、組織作りの土台となる大切な要素です。
一方で、このような支援型のマネジメントだけでは「働きがい」は高まりません。弊社のベトナム組織の調査によると、ベトナム人従業員の会社への期待が最も低い3項目は、「ノウハウの共有」、「理念・戦略の浸透」、「上司からの情報提供」です。
これらの項目は組織としての成果創出に重要な役割を果たす要素です。「働きがい」の醸成のためには、むしろ、会社として目指す理想像や大切にしている価値観を職場内で共有し、共感を得ることが重要になります。
ある企業では、福利厚生の充実で従業員満足度を高めていましたが、不満は減ってもエンゲージメントの上昇は頭打ちになりました。そこで、各職場でお客様の期待に応えることに注力したところ、今では難しいプロジェクトにも手を挙げる従業員が増え、挑戦的な風土に変化しました。
このように、目指す姿の実現に向けて職場でお互いに助け合う中で承認欲求が満たされ、努力し困難を乗り越えることにより、達成感や成長実感を味わえるのです。では、ベトナム人従業員の視点を組織の成果創出に向けるには、何に気をつけるべきか。
次回は、ベトナムにおける組織経営で陥りやすい落とし穴について詳しく解説します。