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ベトナムビジネス情報Vol116|
やっぱりモーターショーは面白い!

Vietnam Motor Show 2019

ベトナム最大の自動車の展示会「Vietnam Motor Show 2019」が10月23~27日、ホーチミン市のSECCで開催された。自動車メーカーの力の入れ方が毎年高まるクルマの祭典だ。一般公開前のプレスデイの様子をお届けする。

2万㎡に100台が展示

Vietnam Motor Show(VMS)は昨年からベトナム自動車工業会(VAMA)とベトナム自動車輸入業会(VIVA)の共同共催となり、開催規模が大きくなった。今回はSECCの屋内だけでなく屋外にもパビリオンを設置、昨年と同じく15ブランドが出展して、約2万㎡の敷地に約100台のクルマが並んだ。

モーターショーでは初日にメディア関係者のためのプレスツアーが行われるのが一般的だが、奇しくも同日は日本で「東京モーターショー2019」のプレスデイだった。EVのコンセプトカーや世界初公開車種が並んだ東京モーターショーの先進性とは比較できないが、ベトナムならではの特徴も。それは、日本では参加せずにベトナムに出展した欧州メーカーが多いことで、それはアウディ、フォルクスワーゲン、ボルボ、ランドローバー、ジャガーだ。

出展が一番多いのは昨年と同じく日系ブランドで、トヨタ、レクサス、ホンダ、三菱自動車、日産、スバル、スズキ。そして今回の話題は国産ブランドのビンファストが初出展したこと。後述するが、屋外パビリオンでの発表となった。

プレスデイの恒例としてまずオープニングセレモニーがあり、最初にVAMAの会長であるトヨタ・モーター・ベトナムの木下徹社長が登壇した。

「近い将来、安定した経済発展と若年人口のアドバンテージにより、ベトナムは大きな市場となる可能性がある。我々は、生産、製品の品質、販売、サービス、ディラーネットワークを顧客の期待以上に高めていく」

続いてVIVAの会長であるアウディベトナムのLaurent Genet社長がスピーチをした。

「2019年も9ヶ月が過ぎたが、国内自動車産業にはいくつもの変化があった。このショーは輸入市場の伸長と同じく自動車組立ラインへの投資に貢献する、ポジティブなシグナルだ」

コンセプトカーも登場

プレスツアーは各ブランドのブースを次々と回り、各社が15分ほどで今回の特徴を紹介する。最初にショーやダンスがあり、その後にモデルが出てきてクルマを見せる。クルマは既に会場に展示されているが、「目玉商品」にはシートが掛けられ、最後にそれがお披露目される。そして、ダイレクタークラスが説明をして、最後に撮影タイムというパターンが多い。

ツアーの順に日本勢から紹介すると、最初はベトナム進出25周年を迎えたミツビシ・モーターズ・ベトナム(三菱自動車)。最後に披露したのはSUVのコンセプトカーでプラグインハイブリッドEVの「GT-PHEV Concept」。ベトナムでコンセプトカーを出展するのは珍しく、この車種を選んだ理由を堀之内兼一社長に聞いた。

「近年ではベトナムでも環境問題が重視されており、いつかは必要とされるクルマです。将来の電力不足の問題もあるので、いち早く環境に対するコンセプトを出したかった」

三菱自動車は昨年4月にダナン市商工局に同車とEVの「i-MiEV」、急速充電器を提供しており、堀之内氏も「特にダナンやホイアンなどの観光地で使ってはどうか」と提案する。

「ベトナムで販売するなら日本からの輸入になると思います。政府には環境対応車にインセンティブを付けるなど、購入しやすくしてほしい」

次のブースはレクサス、そしてトヨタへと続く。高級車のレクサスブランドでは、白を基調にしたアダルトなデザインのブース。対してトヨタブースはピンクなど原色が基調で、ブルーのつなぎやカラフルな衣装のダンスから始まった。

いくつもの車種が展示されていたが、最大の特徴はSUVとミニバンを合わせた「Tjクルーザー」が登場したこと。日本でファンから発売が熱望されており、期待されながらも今年の東京モーターショーに出展されなかった人気モデルだ。

木下徹社長は「品質こそが常に最優先」と語り、ブースにも掲げた「NO QUALITY. NO LIFE」を強調した。

次のブースはホンダ。会場内で2番目に広いブースを作ったホンダは、シビック、ブリオ、シティなどをゆったりとした間隔で展示。メディア各社がひときわ多く集まっていたと感じた。その中でホンダベトナムの鶴薗圭介社長が発表したのが、「第10世代アコード」だ。

1976年に誕生したアコードの10世代目に当たるもので、鶴薗社長はメモも見ずに身振り手振りで熱の入ったスピーチ。全国のホンダディーラーで発売されるとのことで、車体の色別で13億1900万VNDと13億2900万VNDという価格も発表された。

スズキがKawaii!

スバルは「レヴォーグ」やスポーツタイプの「BRZ」などを展示。VMSではSUV、セダン、ハッチバック、ピックアップトラックなど様々なタイプが並ぶが、小型のスポーツカーは人目を引いた。また、今回はSECCの屋外にいくつかのパビリオンが設けられたが、スバルはもこちらにも出展して、一般公開時には来場者に試乗会を実施したようだ。

日産自動車のブースではピックアップトラックの「ナバラ」、オフロード用SUV「テラ」、SUVの「エクストレイル」などを展示。今回のハイライトは壇上に上がったナバラ(Black Edition A-IVI)だ。ピックアップのプレミアムモデルで、引き締まったスポーティがデザインが目立った。

会場内のプレスツアーで最後に紹介されたのがスズキ。まずパフォーマンスがユニークで、子どもを含めたファミリーや、若いカップルのデートを模したダンス。もっと秀逸なのがモデルで、何と全員が「アキバのメイドさん」。メイド服で立つその横のスイフトやセレリオは色鮮やかなパステルカラーで、そのルーフには大きく「0%」のオブジェが……。よくわからないが、日本が世界に誇る「Kawaii」が満載なのだ。

今年9月に現職になった高原敏晋社長は次のように語る。

「スズキと言えばバイクを連想されて、自動車はあまり知られていません。そこで、親しみやすさを出したかったですし、使い勝手や取り回しの良さ、価格の安さもアピールしたいと思いました」

日系イベントの「FEEL JAPAN 2019」にもメイドモデルが出演して、受けが良かったので続けたとのこと。屋根の上の「0%」は、ローンの最初の6ヶ月が金利0%を意味しているそうだ。

「興味を持ったお客様が質問してくれると想定していまして、ローンを組める銀行のスタッフが待機しています。4つの色は特別仕様車で、人気が出たら作る予定です」

ビンファストにメディア殺到

日系以外は上述のようにヨーロッパ車が多かった。中でも最大の自動車展示スペースを取っていたのがメルセデス・ベンツだ。ダンスが終わると横長のステージ上で次々とクルマが動き、正面にずらっと並んでストップ。そこからモデルが降りてポーズを取る。出展されたのはSクラス、Eクラス、Cクラスなどのセダン、SUVのGLC、GLEなど。クルマが移動するのは僅かな距離で、当然低速なのだが、会場を動くクルマは新鮮に感じた。

ブースデザインとクルマの見せ方で目立っていたのはフォルクスワーゲン。ブース奥の少し高くした壇上にメインの「Touareg」、「Tiguan Allspace Highline」、「Passat BlueMotion」を並べて、モデルがアクティブに動く。いくつもの立方体を使ったネオンもセンスが良く、欧州メーカーはどこもそうだが、高級感を打ち出していた。

アウディはショーやパフォーマンスはなく、横に広いブースに「A8L」や   「Q3」を並べてクルマを強調。ダイレクターがその特徴を丁寧に説明するというスタイル。指揮者が飛び回りながらバイオリンやギターが演奏されるという、隣のブースのボルボとは対象的だった。

プレスツアーの最後は屋外に移動して、初出展のビンファストへ。展示したのはSUVの    「LUX SA2.0」、セダンの「LUX A2.0」、小型車の「FADIL」。会場が手狭という理由もあるが、ベトナム人プレスが殺到してクルマに近寄れない状態だった。途中から豪雨になって停電もしたが、それも気にしないくらいの熱狂ぶりだ。

外国車もそうだが、特に日本ブランドを見ていると、PHEVのコンセプトカー、SUVとミニバンの融合車、小型のスポーツクーペ、レジェンドカーの最新モデル、ピックアップトラック、原色の小型車と、他社とかぶらない特徴あるクルマを出展したような印象だ。性能もそうだが見た目のデザインが大きく違っており、VMSの幅が広がったように感じた。ベトナムのクルマはますます面白くなっていく。