娯楽の少ないベトナムで、余暇の過ごし方は大切なポイント。ただ、時間を持て余している人も多いのでは? 仕事の第一線で活躍しながら、プライベートライフの充実させている人を紹介! 憧れませんか?
Bassit Naoki
Boxer Ryuhi
Salsa Dancer Mizuyo
Kart Racer Ryuichi
Disc Jockey SE-J
SOULが熱いんだ 俺の音を聞いてくれ
ベーシスト×ITエンジニア
工藤直毅
LCLにアニメファン殺到!
「『お遊び』じゃない真面目な遊びは、いつでも気持ちいいじゃないですか。それがバンドをやってる理由ですかね」
ホーチミン市に住む日本人が2013年に結成したバンド、「LCL」(Link Connected Liquid)。「ベトナム人にウケることをやろうぜ」と始めたアニメの衣装でアニメソングを熱唱するスタイルが、その通り若者に大受けした。男性5人、女性2人の構成で、工藤さんはベースの「Naoki」だ。
Summer Anime ExpoやManga Festivalなど日本文化イベントに出演し、Japan Vietnam Festivalでの演奏経験も。殺到したのは小学生から大学生のアニメ好きベトナム人学生。演奏後に控室まで下がる間にファンが押し寄せて、部屋まで1分の距離に15分かかったなどの逸話もある。
毎週のようにイベントで演奏し、ファンを増やしていった。今はやりたいことができてバンドの活動は月1回ほどのペースに落としたが、最盛期には1公演3時間30曲を、金曜から日曜日の昼夜計6回というハードスケジュールも。
工藤さんがギターを始めたのは中学生の頃。高校でバンドを組み、音楽学校で子どもに教えたこともある。「楽器を見ているだけで幸せ。触れて、弾くのはもっと楽しい」と語るほどの音楽好きだ。ホーチミン市のカフェにライブを見に行き、そこで声を掛けられてLCLに参加した。
「セミナー講師などで人前に出ると体が震えるのですが、楽器を手にしているとイエーとか叫びます(笑)」
「生まれて初めて」が大好き
そんな工藤さんはITエンジニア。小型ロボットのソフトウェアやIoT関連を開発している。プログラミングだけでなく自動認識、通信、ネットワークなど広範な知識が必要な仕事だが、ほぼすべてを独学で身に付けた。
「仕事も半分くらいは趣味みたいなものなので、趣味の時間は努力して作ったりしないです。ただ、やりたいことは多いので、無駄な時間は意識的に避けてます。今までやったことがない 『生まれて初めて』というのが大好きなので」
この左ジャブを ベトナムのために
ボクサー×会社経営
若林勇飛
スパーリングに熱中して6年
「パンチだけの世界、が単純に好きです。闘争のエキスを抽出した、決定的な攻撃力と防御力を持つのがパンチだと思っています」
ジムでのトレーニングはスパーリングのみ。筋トレ、縄跳び、ランニングは自宅など別の場所で済ませ、「最小の時間で最大の効果」を狙う。週末に1~2日、60~90分の間で、3分程度のスパーリングを5回が目安。相手は同じジムに通う仲間で、どうしても相手がいない場合はサンドバッグを叩く。
カナダの大学に留学中、キックボクシングに出会った。その後ボクシングの世界へ。20年ほどのブランクを経てベトナムで再開したのは、自宅の近所にジムにがあり、ふらっと覗いたのがきっかけ。それから6年、本人曰く「深みにハマっていった」。
「1年に200ラウンドを続けて6年間で1200ラウンド。回数を意識しているのは、重ねたスパーリングの数がボクシングの深さだと思っているからです」
スパーリングは皆、実力の7割程度で行っているとか。相手によってタイプが異なり、ファイタータイプは疲れが多くなるそうだ。それでも、殴られるからこその面白さがあるとも語る。自宅ではスマホで撮影した自分の動画を見て、イメージトレーニングを欠かさない。
若手ベトナム人に負けなし
昨年8月までベトナムで7年間、JICA(国際協力機構)の専門家として「経営塾」などに携わった。任期終了後もベトナムにいたいと会社を設立し、就職フェアの運営などコンサルタントとして再スタートを切った。
試合にも出る。大型のスポーツクラブが各ジムに声をかけて行う試合で、時間は2分×3ラウンド。最近は3試合に出場して2勝1分けの成績、相手は20代半ばのベトナム人たちだった。得意なのは左ジャブで、最近は右アッパーと組み合わせている。
「この歳になってボクシングをやっていると思わなかった。ただ、6年続けて、若い頃より強くなっていると思います」
このまま踊り続けたい サルサも、仕事も
サルサダンサー×ドクター
松本瑞代
見た目の良さは関係ない
「おばあちゃんになっても踊りたい。なぜって? サルサが好きだから。とっても楽しい!」
ラテンが好き、ジャズが好き、踊りが好き。ラテン・ジャズからサルサを知り、「たまらない!」と踊り始めたのが10年ほど前。2014年に来越後、サルサの上手な友人に誘われて再開した。週末にサルサスクールに通い、個人レッスンも、今はフロアで踊る。サルサにはダンスにルールがあり、ステップアップできることが魅力と語る。
「テクニックは必要でも、それだけだとつまらない。特に女性は顔と身体の表現力が大切ですね」
男女のペアで踊るのが普通だ。相手は店に来たお客で、ベトナム人が7割、外国人が3割。ベトナムに来た頃は友人が少なく、寂しい思いもした。そんな時にサルサを契機に仲間が増え、普段会えないベトナム人のコミュニティにも入って刺激になっている。
ペアとなる男性は、上手い人なら相手のレベルだけでなく気持がわかり、初対面同士でも意思の疎通ができるとか。テクニックがあってもそれを誇示するような人は面白くなく、「相手に合わせられる人」に人気が集まるそうだ。
「それは仕事も一緒でしょ。見た目の格好良さとか関係ないですね」
誰でも踊れてうまくなれる
松本さんの仕事は歯科医。外資系のデンタルクリニックに勤め、奥歯や歯周病の治療、インプラントなどを担当。同時に自分でビジネスがしたいと、主に日系企業のエグゼクティブにビジネスコーチをしている。ヒアリングと会話で相手の強みも弱みも引き上げる、心理カウンセラー的な仕事だ。
仕事も多彩なら趣味も多彩。サルサ以外にもトライアスロン、ダイビング、サーフィンがあり、トライアスロンは「精神の限界値を上げるため」に挑戦し、ダイビングはインストラクターの資格を持つ。
「サルサは年齢などに関係なく誰でも踊れるし、キャリアを積めばうまくなる。これからもずっと続けたい」
ブレーキじゃない 心のアクセルを踏め
カートレーサー×セールスマネジャー
新村竜一
日本で本当のカートレーサー
「カートの楽しさは映画と同じかな。現実から逃避して、すべてを忘れて、走ることしか考えられなくなる。走ればわかりますよ」
ホーチミン市7区に本格カート場 「Kart1」がオープンしたのは2017年11月。新村さんは「ベトナムの外国人で自分が一番早くこの計画を知ったはず」と語る。なぜなら、ドンナイやバリアブンタウを回るなどして、カート場を探し続けてきたからだ。
実は新村さん、元カートレーサーだ。出身地域の中部地区レースで1996年に総合優勝し、その後全日本カート選手権に挑んで最高位4位。元F1レーサーの佐藤琢磨氏は同期だ。25歳で引退した後はレース運営会社に入社して、裏方からレースを支えた。
「カートに乗るとレーサー時代と同じ感覚になれて、インにタイヤを何センチ寄せるかなどを考えています」
将来は子どもたちの指導も
最初は1人で走っていたが、今ではFacebookで集めた仲間と一緒に走る。休日の昼頃にカート場で集合し、お喋りを楽しんで、準備をして走り、会ってから終わるまで1時間ほど。なぜならKart1では走行時間が5分、10分、15分と分かれるが、5分を選ぶからだ。
「集中して走るので5分でもメチャきつい。終わった後は筋肉痛で腕が震えます。嘘だと思ったらやってみてください」
新村さんは大型ショッピングセンター内において、児童向け遊戯施設を運営する会社に勤める。肩書はセールスマネジャーだが、日本品質の維持が仕事で、スタッフに接客を教えたり、オペレーション力を高めるなど、他店との差別化を図っている。
来年4月には、ベトナム初のF1レースがハノイで開催される。新村さんも観戦に行く予定で、これから仲間を集めるそうだ。F1をきっかけにベトナムでモータースポーツが注目され、カート場などの環境が増えるかもしれない。
「将来はレーサーに憧れる子どもたちの指導をしたい。そんな思いが頭の片隅にあります」
自分の選曲で、 一期一会の人が踊る
DJ×商社マン
横山精二
精二からDJのSE-Jへ
「自分の選曲でお客さんが踊ってくれるのが一番うれしい。選曲が悪いとお客は帰るので、目に見えて結果は出ます。特に西欧人の方…(笑)」
ハノイのDJ、「SE-J」はこう語る。5つ星ホテルのメリアハノイを中心に、レストラン、クラブ、ダンスフロアなどで週末の夜にプレイする。店の雰囲気、客層、オーナーの要望などに合わせて曲を選び、お客を楽しませる。横山さんはDJとしての役割を、「空間を作ること」と語る。
また、横山さんはDJという趣味を通じて、「普段で会えない人と出会えること」や「仕事ではできない挑戦ができる」のが楽しいと言う。
「昨年のヒューマンビートボックスのアジア大会で優勝したベトナム人ビートボクサー、Trang Thai Son氏とイベントでコラボできましたし、この6月には日本から来られるプロのアーティストさんたちと『Ring Link!』というイベントをすることが決まってます。僕は、まだまだアマチュアなんですが」
頭と感性の使い方が新鮮
苦労するのは、初めての場所で、求められているものがわからないとき。プロのDJは引出しが多いので対応できるが、今の自分には難しいという。
「全然、曲と能力が足りません。DJにはセンスが必要で、頭や感性をすごく使います。この頭と感性の使い方が仕事と違って、すごく新鮮。いい循環になってます」
仕事は非鉄系専門商社のダイレクター。経営を見ながらベトナム人スタッフを指導し、日本人は彼だけなので営業にも出向く。多忙で刺激的な仕事に思えるが、「さらなるチャレンジがしたい」と未経験のDJに挑戦した。睡眠時間を削ってYoutubeで覚え、様々な場所で経験を積んだ。そして、ハノイで珍しい日本人DJに注目が集まっていった。
「ファッション、映像、プロジェクションマッピング……別の分野の方々とタイアップして、新しいモノをハノイで創造できればと思ってます」