7月16~19日にホーチミン市1区のレバンタム公園で「ホーチミン市観光フェア2020」が開催され、4日間で約20万人を集めた。しかし、数日後にはダナンから新型コロナ感染が急拡大して旅行業界を直撃。その後の取材と共に報告する(8月上旬現在)。
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国内旅行促進の観光フェア
「ホーチミン市観光フェア」は16回目となる。ただ、今回は新型コロナ感染で打撃を受けた観光業を促進させる目的があり、近年にない大規模なイベントとなった。「ベトナム人は国内旅行を」というスローガンの元に、特に夏休みシーズンの国内旅行をアピールするものだった。

フェアには50の市と省から計96の旅行会社、ホテル、サービス、食品関連などが参加し、ホーチミン市とメコンデルタ・南東部の料理を出す「フードフェスティバル」も併催。全約200ブースがレバンタム公園のほぼ全域を使って出展され、ブース料金は支援により最大で70%割引されたという。
会場ではツアー旅行、ホテル宿泊、食品、飲料、名産品などが販売され、ミニゲームやプレゼント抽選会などのイベントも開催。フェアの目玉である国内旅行はツアーで売られ、割引キャンペーンやバウチャープレゼントなどプロモーションが盛りだくさん。訪れた人たちは各ブースで熱心に話を聞いていた。

フードフェスは屋台村となっており、カフェ、揚げ物、焼き物、スイーツなど、各地のローカルフードも並んだ。例えば、ソクチャン省の「バンボー」は米から作って甘みを抑えたスポンジケーキ、日本風屋台ではなぜかニッチな「はしまき」。日本の飴細工のような店もあり、作っている職人に話を聞くと原料は飴ではなく米だとか。
ハジャン省いっぱいのブース
公園の中央スペースには旅行会社が集まり、お客を呼び込みながらブース内でツアーの説明と販売をしていた。ここで何社かに話を聞いた。
SACO TOURは主にハジャン省への観光をアピール。少数民族の衣装で接客し、地元の茶や菓子も販売するなど、雰囲気作りに気を配っているのが伝わる。

「主に5つ星クラスの高級ツアーをアピールしています。100万VND以下の超衝撃的な価格もありますよ。低価格であっても旅行内容には自信があります」
フェア終了直後に連絡すると、全部でおよそ150のグループツアーが売れて、各グループには約30~80人の参加者がいるという。一番の売れ筋はダナンツアーとフーコック島ツアーだそうだ。
来場したのはグループで旅行したい若者、夏の旅行を控えた子ども連れの家族、従業員の休暇旅行を考える企業、高齢者など様々で、特に幼い子供と高齢者が目立っていたそうだ。
「約30人のお客様は家族や友人でのグループ旅行、企業のプライベートツアーを予約して、観光フェア終了直後に出発しました。一般的なツアーでなく、他の目的地も体験したいお客様のために、独自のツアーも設計していました」
出展の目的はSACOブランドを宣伝して、多くの人にツアー商品を知ってもらうこと。会場販売でのみ割引となるツアーなどもあり、来場者を引き付けていた。
グリーンツアーでアピール
コーポレートカラーのグリーンでブースを強調していたのはDatVietTour。旅行会社は多くの来場者と対座するためにブースの奥行きが広く、代表的なツアーを壁に張り出していた。ここも同様で、Free & Easyなどの独自商品も強調していた。

旅行者の好みに合わせてツアーを作っているが、緑の色が表すように注力しているのは「グリーンツアー」。ポイ捨てをしない、プラスチックの使用制限などを顧客に伝えているという。スタッフがきびきびと働いていたのが印象的だった。
「4日間で4000人以上に来ていただき、ツアーチケットは1000枚以上が売れました。ツアーは約40種類ありましたが、一番人気はキエンザン省ナムズー島へのツアーです」
すべてのツアーで平均10%の割引、格安ツアーもあり、ツアー購入者へのラッキードローでは豪華ホテルのバウチャーが渡された。来場者で多かったのは30代半ば以降の家族連れだったそうだ。
ホーチミン市観光フェア2020終了後の報道によれば、期間中に9300件以上の取引が成立し、そのほとんどは北西部、北東部、中央部、メコンデルタ、東南部地域への旅行ツアーだったそうだ。総売上は約400億VND、来場者は4日間で約20万人となり、大成功のうちに終了した。
振替え、バウチャー、払戻しで対応
しかし、それから1週間も経たない7月25日、約3ヶ月ぶりにダナンで新型コロナの市中感染者が確認された。その後はダナンで感染者が急増するとともに各地域に広がり、飲食店などの閉業や自宅隔離、特定地域の封鎖などが再び始まった。

せっかく急回復を見せていた観光業界にも大きなダメージとなり、ダナンだけでなく各地へのツアーもキャンセルが相次いだ。その実際と対応を旅行会社に取材した。
大手旅行会社のVietravel。フェア期間中は5000件以上のツアー販売に成功したが、その後の新型コロナ第2派は観光産業全体への「地震」になったという。
同社はまず7月26~31日のダナンに出発するツアーの延期・キャンセルを開始。8月初旬までに夏の旅行予定者である約2万人のキャンセルを行った。前回の新型コロナ発生からの経験を活かして、緊急かつ顧客へのタイムリーな対応ができたという。
8月1日~9月15日が出発日の場合は、9月15日以降に出発するツアーへの変更を推奨。キャンセルの場合は別のツアーやオプションサービスの選択、支払い金額と同額のバウチャーの受取り、払戻しもできるという。
「政府や自治体の隔離勧告がない地域に関心を持つお客様もいます。ただ、弊社は旅行者に積極的に連絡を取り、他の機会での旅行をバウチャーで保留するように勧めています。お客様の健康が最優先事項です」
感染対策として本社や全国のオフィスで、社員やゲストの体温測定、手洗い、マスク着用などを徹底し、ツアー客には医療用マスクと乾燥消毒液を提供。輸送、レストラン、ホテル、観光地などのサービス提供パートナーについても、消毒液の手配、手洗いや消毒の掲示板などを用意させているいという。
最初の感染拡大期と異なり、この第2派で観光業界は非常に困難な時期に入るという。顧客は慎重になって市場の回復は遅くなり、感染のあった地域、ホテル、レストランなどの再起動には時間が必要だという。
「そのため、2021年初の6ヶ月間は市場を刺激する『ゴールデンタイム』になると予測しています。企業がプロモーションや割安商品で観光客を引き付けるには、政府のサポートと減税が必要です」

期待するのは2021年の「夏のラウンド」。新型コロナの流行が抑制され、観光業界と観光客の安心が、完全に回復することを期待している。
フェア終了後もサイトで掲載
老舗企業のVIAN TRAVELは、コーポレートカラーのオレンジのポロシャツでフェアに出展。第2派の影響を聞くと、ダナンを中心にツアーの60%以上が延期またはキャンセルとなったそうだ。キャンセルにはツアーの延期、同額の旅行バウチャーへの変換、払戻しなどで対応している。
「ダナンへのすべてのツアーを積極的にキャンセルしました。同時に、7月下旬~8月上旬のツアーは100%の返金ポリシーで対応しました。損益ではなく顧客を維持するためです」
自社のスタッフやドライバー、ツアーガイドに対しては、体温測定、手指の消毒、常にマスク着用、2m以上のソーシャルディスタンシングを指示し、不要な場合は出社せずに自宅待機とした。
60%以上がキャンセルとなったが、残りのツアーは予定通りに進める予定だ(8月上旬現在)。しかし、感染を抑制する処置は取る。バスの乗客数は10人乗りと16人乗りに制限、家族または同じグループでの行動とし、体温の測定、乗客が乗り降りする度にハンドルや手すりなど車内を定期的に清掃・消毒し、ツアー終了後には車両も清掃する。
「観光業界は精神的な影響力が強いので、政府から感染抑制の発表があると、人々は旅行したくなるものです。そうすれば観光産業は急速に回復します。2021年は良い年になるよう、抑制の早期の発表に期待しています」

ホーチミン市観光フェア2020の終了後も、年末までは専用Webサイトでプロモーションツアーなどを掲載している【kichcaudulichtphcm.vn】。このサイトを見るとわかるが、ユニークなツアーが目白押しで、割引がとても多い。来年は地場旅行会社のツアーに参加してみたくなった。