7月11日の「世界人口デー」に合わせた式典で、ベトナム保健省のダオ・ホン・ラン大臣は、同国が過去最低の出生率、出生時の性別不均衡、そして急速な高齢化という3つの重大な人口課題に直面していると警鐘を鳴らした。
出生率の低下は世界的なトレンドであり、国連によれば1960年代以降で出生率は世界全体で半減しており、現在では多くの国が「人口維持水準」(2.1人)を下回っている。
国連人口基金(UNFPA)の調査では、14カ国の出産可能年齢にある人々の約20%が「希望する子どもの数を持てない」と回答した。その理由は身体的問題ではなく、経済的制約や社会不安など外的要因にあるという。
高齢化の備え、世代間で異なるニーズ
経済専門家で国民経済大学のジャン・タイン・ロン教授は、「現在の高齢者(80歳以上)と、将来の高齢者(30〜40代)では背景もニーズも大きく異なる」と指摘する。
前者は戦争や貧困を経験し、年金制度の恩恵を受けてこなかった世代であり、国家の責任として公的扶助が必要である。一方、後者の若年層は職を持ち、社会保険制度へのアクセスもあり、自己防衛が可能な世代とされる。
しかし、2019年の調査では、30代では「老後はまだ遠い話」と楽観的な声が多かったが、40代になると不安感が急増し、収入、健康、貯蓄への懸念が現実味を帯びてくる。
ロン教授は、「若いうちから“高齢者になる準備”を始める必要がある。そのためには国家が適切な政策と啓発を行うことが不可欠だ」と強調する。
2045年、高齢者2,600万人の時代へ
ベトナム政府の推計では、2045年には60歳以上の高齢者が2,640万人に達する見込みだ。同時に、労働人口は減少傾向にあり、若年層の生産性向上や人的資本の強化が急務となる。
「高齢化に備えずに経済成長だけを追い求めても、近い将来に“成長の壁”にぶつかる可能性がある。人口構造の変化を前提とした包括的な社会設計が不可欠だ」と専門家は警鐘を鳴らしている。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
ベトナム進出支援LAI VIEN