ホーチミン市が進めるバイクの電動化計画に対し、配車アプリ大手グラブ(Grab)ベトナムが22日、短期間での移行が約40万人の登録ドライバーに深刻な影響を及ぼす恐れがあると訴えた。市の排出削減目標を支持しつつも、現場の実情に即した移行策が必要だと警鐘を鳴らしている。
グリーン化支持も、負担はドライバーに集中
ホーチミン市で開かれた「排出削減・空気浄化フォーラム」で、グラブのダン・トゥイ・チャン対外部長は「グリーン化は持続可能な発展への必然的な流れであり、グラブもその推進に積極的に取り組む。しかし、移行の負担は最も弱い立場にあるドライバーを直撃する」と懸念を示した。
同社はこれまで、国内電動車メーカーと協力し、配達・配車業務に適した電動バイクの開発・試験導入を実施。さらに、ホーチミン市青年連合の起業支援センター(BSSC)と提携し、無利子ローン(0%)による購入支援を行っている。
それでも多くのドライバーが「月100万〜200万ドン(約6,000〜12,000円)の分割払いすら重い負担になる」と訴えている。
補助制度の“壁”
グラブの調査では、対象ドライバーの約80%が電動バイクの使用経験がなく、60%以上が「現時点で移行は難しい」と回答。その理由として、高額な初期費用や金融支援へのアクセス困難が挙げられる。
ホーチミン市は、貧困・準貧困世帯のドライバーに300万〜500万ドン(約1.8万〜3万円)の補助金を計画しているが、市外出身者も多く、対象外となるケースがある。また、銀行融資には担保や安定収入証明が必要で、「日払い収入で証明が難しい」との声も上がる。
インフラ不足と車両性能の課題
「充電時間が長い」「1回の充電で走れる距離が短い」「修理費が高い」など、車両性能に対する不満も根強い。
さらに、約60%のドライバーが賃貸住宅住まいで、自宅充電が可能なのは3分の1程度。深夜に外で充電しなければならない状況が続けば、健康や業務に支障をきたす恐れがある。豪雨や洪水といった過酷な気候条件下での安全性にも不安が残る。
包括的エコシステムの構築を提言
ダン部長は「充電インフラ、公共交通整備、車両性能向上が揃わなければ、急激な移行は生活を脅かす」と強調。グラブとして次のような対応策を提案した。
- 公共充電インフラの早期整備(共用型)
- ハイブリッド車など段階的移行の容認
- 低利融資・補助金・税優遇の拡充
- 電動車への優遇策(専用レーン、駐車場など)の導入
「世界最大のEV市場である中国も、30年をかけて支援と規制を段階的に行ってきた。数年での急転換は現実的でない」とも指摘した。
グラブは今後、利用者・ドライバーへの情報発信強化や、エコ車両優遇策の導入を進め、ベトナムの脱炭素化に貢献する方針である。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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