原材料が不足し、「3つの現場対策」によって労働力が激減している中で、ベトナムの即席麺製造企業は、市場のニーズに対応することが困難になっている。
ホーチミン市ビンタイン区在住のマイさんは、家族がいつも食べている種類の即席麺を買うために、食料品店を2、3軒は回らなければならない。一部の大手のスーパーマーケットでも、多くの種類の即席麺が在庫切れになっているようだ。
ビンタイン区で食品雑貨店を経営するトゥーさんによると、現在は3mienとOmachiの2種類だけが残っており、他の種類の即席めんについては、輸送費用が上がり仕入れが難しくなっているので、何時入荷するか全くわからない状況だ。
現在のような社会隔離期間中においては、食料品の買い出しも制限されており、即席麺、乾燥の春雨やフォー、缶詰などは人気商品になっている。しかし、最近これらの商品が在庫不足になっているようなのだ。
ベトナムの即席めん市場で最大のシェアを持つAcecook Vietnamの梶原社長は取材に対して、同社の製品を輸送している物流会社でCOVID-19感染が確認されたために、商品の輸送に支障が出ていると説明した。
「そのため、弊社では商品を輸送するのに十分なトラックが確保できず、卸売業者やスーパーマーケットへの輸送に影響が出ており、支店間の商品の積み替えにも支障が出ています」と梶原社長は話す。
Acecook Vietnamの梶原社長は、最近のCOVID-19感染拡大と『3つの現場対策』の実施のために、同社の生産量が通常時に比べて減少していることを認めた。
「現在、弊社工場で『3つの現場対策』に登録している労働者数は、全体の半数に過ぎません。そのため、通常時に比べて生産量は大幅に減少し、市場のニーズに対して十分な量の商品が供給できないという大きな問題に直面しています」と梶原社長は話してくれた。
同様に3Mien、Reeva、Boncha、Jocoなど各種ブランドの即席麺を製造しているUniben社もホーチミン市内での商品の供給に関して多くの困難に直面している。
「特に製造段階では、原材料が不足していることで製造量が減少し、多くの問題が発生しています」とUniben社の代表は話す。
さらに物流業者の問題によって、原材料の仕入や商品の流通にも問題が発生している。例えば、輸送トラックのQRコードの登録承認は非常に複雑で時間がかかり、ドライバーは常に検査を受ける必要があるが、各検問所で規則が統一されておらず混乱が生じている。
「例えば、ある検問所では、PCR検査を認めますが、他の検問所では認めません。ある検問所では簡易抗原検査を認めますが他の検問所は認めません。このような状況では、ドライバーはどのような検査を受ければいいのか全く分かりません」とUniben社の代表は話す。
ホーチミン市食品協会のリー・キム・チー会長によると、現在いくつかの食品製造企業は『3つの現場対策』を実施しているが、労働力を50%しか確保できず、人手不足のために減産せざるを得ないと指摘する。
「一方で、地方からホーチミン市へ輸送される食品加工用の原材料が停滞しており、最近になって即席麺などの供給不足という状況が発生し始めています」とチー会長は話す。
チー会長は一例として、以前であればバリア・ブンタウ省で収穫されたねぎは、その日のうちにホーチミン市内の食品加工工場に納入されていたが、最近では、輸送するための車の確保にすら手間取っている状況だと説明する。
「そのような場合、食品メーカーは、ネギが足りないだけで商品を市場に供給することが出来なくなります。食品加工工場が閉鎖すれば、一般の人たちはどこから食料を購入すればいいのでしょうか?」とチー会長は話す。
Acecook Vietnamの梶原社長は、『3つの現場対策』を実施するために、企業は工場と事務所スペースを従業員の生活できるスペースに改造する努力をしていると説明する。
「しかし、労働者の生活スペースの整備には時間が足りず、プライベートな空間を確保できなかったので自宅のような快適さはありません。さらに、長期間家族と会えなくなることで、労働者には不安が広がっています」と梶原社長は話す。
「現在、Acecook Vietnamでは、一部の主力商品に生産を集中させ、市場へタイムリーに供給できるよう努力しています」と梶原社長は付け加えた。
Uniben社の代表もビンズン省政府に対して、労働者が工場で仕事ができるように出来るだけ早急にワクチン接種をおこない、労働者が安心して作業をおこない、市場に十分な量の商品を供給できるようにすべきだと提案している。
食品加工業者が生産停止状況にならないために、ホーチミン市食品協会は、食品製造企業が商品の品質や安全性、基本特性に影響を与えないことを条件に、現在使用している調味料、香料、添加物などを別の物に置き換えたり使用量を調整することを認めるように提案している。
また同時にホーチミン市が農業農村開発省に対して各省や市と連携して、農産物の需要と供給に関する情報を分析し、円滑な流通を確保するように提案するよう求めている。
さらにチー会長は、現在、食品関連企業の約70%が、原材料費の高騰と労働力確保コストの上昇の影響を受けており、損益分岐点の確保がやっとの状況だと言及した。「即席麺は、市場価格安定化リストには含まれていませんが、各企業は損失覚悟でCOVID-19と戦うホーチミン市のために、価格を維持し続けることに同意しています」とチー会長は説明する。
8月3日に開かれた農産品の生産と消費を繋ぐためのオンライン会議において、農業農村開発省のレ・ミン・ホアン大臣は、「社会隔離措置適用当初、我々は食品や医薬品の流通だけが重要だと考えていましたが、そこには、感染拡大防止と経済成長という2重目標の達成が抜けており、生産農家の経済を支える視点がありませんでした」と問題点に言及した。
ホアン大臣は、農産品加工業者の生産活動は、短期的な経済への影響だけでなく、業者に農産品を供給している何百万人もの農民の生活にも影響があることを再度検討しなおす必要があると述べた。
「もし、食品加工施設が閉鎖されれば、それは農民の生活に直接影響を与え、食品加工業のサイクルを破壊する可能性さえありえます。そのため、各地方自治体は、農産品加工業界の労働者に対してワクチンを優先的に摂取する必要があります」とホアン大臣は述べた。
出典:04/08/2021 ZING NEWS
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