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【社会】酒に溺れる夫と妻の戦い

(C) VNEXPRESS

真夜中にホアさんは家の戸締りをしてから、彼女の夫がいるに違いない居酒屋に向かった。居酒屋に着いて夫を呼ぶと、店で酔いつぶれて寝ていた。

この10年で、ハノイ在住のグエン・ティ・ホアさん(40歳)は、夫が夜中まで飲み歩いて、家までの帰り道もわからなくなるようなことに慣れ過ぎてしまった。

最初に恋に落ちたとき、彼がよく飲みに行くことは知っていたが、若者の楽しみだと思ってあまり深く考えなかった。結婚した後も、夫のズーンさんは相変わらず、接待や契約、人付き合いだといっては飲みに行き家で夕食をとらないことが多かった。

夫の飲酒癖が『不治の病』だと気付いたのは、8年前に最初の子供が生まれた時だった。その時、医師は手術の時間を告知したので、ホアさんは夫に早めに家に帰って、翌朝病院に連れて行ってくれるように頼んだ。夜になっても、夫が帰ってこないので電話したが電源が切られていた。ホアさんが夫の飲み友達にメッセージを送ると、夫が飲みつぶれて居酒屋の厨房で寝ていると聞かされた。

2人の子供ができた今、ホアさんは、夜中に夫を探しに行った回数を思い出すこともできない。飲みに行く前に場所だけ教えてくれれば、どんなに遅くなっても、ホアさんは夫が安全で事故にあってないことを確認するために、その場所を訪れた。

「全世界を背負わされているような感じで、疲れ果てて孤独を感じることがよくあります。 」とホアさんは話す。

バクニン省に住むハイ・イエンさんは、なぜそれほど酒が夫を魅了する魔力を持っているのかいつも不思議に感じている。

「私が病気のため、子供は学校で夫の迎えを待っていましたが、夫は子供を迎えに行くことを忘れて飲みに行きました。テトで帰省した時は、お酒ばかり飲んで、毎日前後不覚になっていました。お店で飲めば、酔っ払い過ぎて財布を盗まれても全く気づきません。」とイエンさんは話す。

酒に飲まれた夫は、1000万VNDを超える給料のうち妻に子育てのために数百万ドンだけ渡し、残りは「個人的な支出と大きな仕事のために必要だ」と説明した。生活費が足りなくなった時に夫にもう少しお金を渡すように話すと、夫はいつも「最近行き詰まっている」とか「お金がない」と言って逃げる。

半年ほど前、酔っ払ってバイクで帰宅しようとしたイエンさんの夫は、交通事故を起こし、胃の1/3を切除する大怪我を負った。「これでおとなしくなると思ったんですが、半年後にはまた同じように飲みだしました。」とイエンさんは飽き飽きした様子で話す。

イエンさんとホアさんの夫は、酒を飲むことは人生の一部だと考えているベトナム人男性の典型的な例であり、統計総局のデータによる1ヶ月の1人あたりのアルコール消費量を2019年の0.9リットルから2020年の1.3リットルに引き上げた張本人たちだ。

2019年、或る医学雑誌がベトナムのアルコール消費量の上昇率が世界で最も高いとの研究結果を発表した。それによるとベトナムのアルコール消費量は2010年から90%も増加しており、これは、2番目に高い上昇率を示したインドの2.5倍の数値となっている。この研究によると、ベトナム人男性は、10グラムのアルコールが含まれたグラスを1日平均5杯以上飲んでいる計算になる。もちろんこれは世界で最も高い水準だ。平均すると1年間に15歳以上のベトナム人は8.3リットルの純アルコールを接種している。これは、中国人の平均よりもかなり多く、シンガポール人の4倍だ。

WHOによる2015年の調査でも、ベトナムで飲酒する人の44%が『危険なレベルの過度の飲酒』に該当しており、そのほとんどが男性だった。

健康戦略・政策研究所が実施したベトナムのアルコール接種状況評価研究によると、飲酒している人の63%が男性で、知識人ほど酒を飲む割合が高い。

「ベトナムの飲み会文化では、テーブルに座ったら最大限まで飲む必要があります。もしそうしなければ、飲み仲間を見下していると思われ、ひどい時には、男とみなされなくなったりします。」と作家のホアン・アイン・トゥーさんは話す。彼によれば、これはジェンダーの固定観念であり、男性が男性自身を苦しめることにつながっている。

トゥーさんによると、アルコールの摂りすぎによる最も顕著な被害は健康への影響であり、行動をマイナスの方向に向かわせる。2019年の統計総局のデータによると、ベトナムでアルコールが原因とされる一般的な6種類の癌の治療にかかる治療費の総額は26兆VNDに上る。また、飲酒運転による交通事故の治療費も約50兆VNDとなっている。

更に、酒におぼれた夫は、家族の幸せを破壊する。2018年保健省傘下の予防医学局は、ベトナムの家庭内暴力の34%が飲酒者に起因するものだというデータを公表した。

イエンさんは、このことを誰よりも良く理解している。なぜなら、夫は酒に酔うとまるで別人のような顔つきになって、妻が注意すると家の中の家具を破壊し、子供たちを殴りつけたりする。イエンさんは何度も近所の人に助けを求め、その後数日は家に戻らないこともあった。

ホアさんの場合、夫のズーンさんは結婚した当初からよく飲みに出かけ、ホアさんは夫に何度も帰ってくるように電話したが、最終的には夜中に酔っ払った夫を迎えに行かなければならなかった。最初の頃は、夫も後悔した様子だったが、そのうち慣れてそれは妻の仕事の一つだとまで思うようになった。

甘やかしていては終わらないと考えたホアさんはより厳しく対応することに決めた。ある日、ホアさんが家の鍵を閉めて入れないようにすると、ズーンさんは近所のホテルに泊まった。夫に何度注意しても変わらない。ホアさんにとって夫はまるで家に存在していないかのような存在となった。

ベトナム社会科学アカデミーの調査結果によると、諍いや暴力(主に夫から妻に対するもの)が頻繁に起こる家庭の12%以上が、離婚している。

自身も男性である作家のホアン・アイン・トゥーさんによると、多くの男性は、飲酒による害とその後遺症をよくわかっているが、この習慣を変えることが出来ずにいる。その理由は、もちろん主に男性側にのあるが、このような無責任な生活を続ければ大事なものが失われるということを理解させるための妻の決心が足りないことも理由の一つだとトゥーさんは指摘する。

「夫が飲みに行って帰ってきても小言を少し言って、夫が黙ったり誤れば許すというのは女性の欠点でしょう。自分の行動に対するもっと具体的な態度を示さなければ、彼らは変われません。」とトゥーさんは断言する。

長年心理カウンセラーの仕事をしてきた専門家のチン・チュン・ホア氏は、結婚するすべての女性は、夫に対して家族に対する責任分担を要求することを絶対に忘れてはいけないと指摘する。飲酒に関しても妻は注意するだけでなく、自分自身と子供を守るために夫に最後通告を突きつける必要がある。

しかし、夫が酒におぼれてしまっている場合、この方法でも状況を改善するのは難しい。そのような場合、妻は、自分自身を嵐から救い出す方法を見つけ出さなければならない。一晩中起きて夫の帰りを待つのではなく、自分自身の健康に注意し、子供の世話に時間をかけた方が良い。家計はしっかりと押さえて、酒を飲むことに対して断固たる態度で臨む必要がある。そして、それでも夫の生活態度が変わらなければ、自分を救うために手を放すべきだ。

「酔っ払った夫に従わず、女性が自分の人生を自分で決める勇気を持ったとき、男性は初めて今までと異なる考え方を強いられることになります。」とホア氏は断言する。

最近になって、ズーンさんが、飲みに行って帰ってくると机の上に手紙と離婚届が置いてあるのを見つけた。手紙の中で、ホアさんは夫からアルコールの匂いがするたびに嫌悪感を覚えたと書いた。「外で飲んでフラフラに酔っ払って帰ってくるあなたが嫌いです。お互いを開放することにして、あなたは自分の思うように生きてください。」と妻の手紙の最後に書かれていた。

妻からの離婚の手紙を見て、ズーンさんは初めて真剣に家族を失いかけていることに気付いた。彼は、妻に謝罪し、戻ってきて償いをする機会を与えてほしいと頼んだ。ホアさんは、戻ってくることに同意したが、夫の生活態度が変わらなければ離婚するという決意を明確にした。

現在、ズーンさんは完全にアルコールをやめたわけではないが、頻度は依然と比べてはるかに少なくなった。1ヶ月に2~3回だけで、夜11時を超えることもない。「アルコール量は減りましたが、仕事の契約も友達も確かに何も失いませんでしたね。」と彼は認めた。

出典:30/03/2022 VNEXPRESS
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