一日中、両親や親戚から結婚を促され、今年中に結婚しないと婚期を逃すと占い師にまで言われたので、トゥー・チャンさんは愛してもいない人と知り合って4か月後に結婚した。
ハナム省出身の28歳のトゥー・チャンさんは、結婚してから夫の両親が近所ではケチで有名だということを知った。家には洗濯機があるが夫の両親は手で洗濯するように要求し、洗濯機は脱水の時だけ使用する。ある日、夫婦が扇風機をつけたまま寝たところ、夜明けに義父が部屋に飛び込んできて、扇風機のコンセントを抜いた。部屋に遅くまで電気がついていると、義理の両親は、電気代を節約するために早く寝なさいと注意してくる。
小さな出来事の積み重ねでチャンさんは、イライラするようになった。しかし、彼女が夫に相談すると、夫は両親の行動は合理的であるとして、チャンさんの意見を聞いてくれない。実家を出て夫婦で生活しようと提案したものの拒否されてしまった。口論の末、夫は妻に手をあげた。
結婚から2か月後、トゥー・チャンさんは、荷物を纏めて夫の実家から逃げ出した。「詐欺にあったような気がします。これ以上夫と一緒に過ごすくらいなら離婚した方がましです。」とチャンさんは話す。
チャンさんの結婚は急だった。昨年の半ばごろ、COVID-19の感染拡大によって失業したチャンさんは、両親と暮らすために実家に戻った。田舎に何日かいると、親戚や近所の人たちからしきりに結婚を勧められた。
ある日、チャンさんは母親に連れられて占い師に会いに行き、「今年中に結婚しなければ婚期を逃すでしょう。」といわれた。チャンさんはショックを受けて、実家から4㎞程離れたところに住む男性と結婚することを受け入れた。「彼の仕事は安定していたし、優しかったので、焦って結婚を決めました。」とチャンさんは話す。
「完璧な関係への5つの簡単なステップ」という本の著者である心理学者のチャン・キム・タイン氏は、婚期を逃すことを恐れて結婚を急ぐというのは、ベトナムでは、よくあることだと話す。ベトナムの若者たちがこのような性急な決断を下すのは、世間が狭いことと、子供を産み、自分の家庭を築き、頼れる人がそばにいてほしいという自然な生理的欲求が原因になっている。
両親や周囲の人々からのプレッシャーも若者たちを準備の出来ていない結婚に追いやっている可能性がある。タイン氏には、以前一人の女性クライアントがいた。この人の母親は、近所の人が「いい家庭だけど、子供は婚期を逃して独身だ。」とか 「あそこの娘はいい年をして、まだ独身では家族の対面を汚している。」といった噂話をしているとして娘に結婚を迫った。
上記の理由に加えて、ホーチミン市の心理学者であるグエン・ティ・タム博士は、自分が独身の間に同世代の友達が次々に結婚しているのを見ることも、プレッシャーにつながると指摘する。
「心理学的には、成人期は18歳から35歳まででしょう。この時期の最も重要な特徴は、恋に落ちて、異性と親密な関係を築き、キャリアを築くことです。若者は30歳を過ぎると、安定したキャリアがあっても愛が無ければ、孤独や不安に陥りがちです。」
多くの人は、婚期を逃して自分にあった人を選ぶことができなくなることを恐れて結婚する。34歳でバクザン省に住むトゥー・ハンさんは、自分より20歳年上の独身男性と事実婚状態だ。
ハンさんは、会社の管理責任者として1000万VND以上の給与をもらっており、夫は地域の役所の文化担当として数百万VNDの給与を得ている。ハンさんの収入は、夫と夫の年老いた両親の生活費を賄うには十分だ。夫の子供は、既に成長して別の場所で暮らしている。
ハンさんは子供が欲しいが、結婚してから3年経っても子供ができない。ハンさんは、費用は全部出すので夫に一緒に病院に行こうと誘うが、夫は真面目に聞いてくれない。お互いの意見の不一致から喧嘩になり、ハンさんは数日間家を出たが、夫が迎えに来て家に戻った。
ハンさんの家族は3人兄妹で、兄は妻と離婚し、姉は夫と長年別居している。両親は年を取っており、ハンさんはあまり心配をかけたくない。ハンさんは、近所の人が「何でずっと実家にいるの?戻らないの?」と聞いてくると息が苦しくなるのを感じた。今年の初めになってハンさんの夫から癌が見つかった。ハンさんは仕事をしながら、夫とその両親の面倒を見るようになった。「結婚の奴隷になって、泥沼から足が抜けなくなったような気分です。」とハンさんは話す。
ホーチミン市12区に住む32歳のグエン・ホン・ミンさんは、自分にふさわしい人を見つけたと思ったが、そこには愛のない悲劇が待ち受けていた。ミンさんはオーストラリアに留学していたときに外国企業で働いている3歳年上のドゥック・アインさんを紹介された。
「私たちは、同じような境遇で育ち、学歴や収入も似ていました。最初のデートの時、彼は私をまるでプリンセスのように扱いました。その時、彼こそが私の人生の完璧な一部だと思いました。」とミンさんは話す。
ミンさんは、自分はもうそれほど若くなく、真剣な交際が必要だと考え、彼に結婚を促した。結婚後、夫がコーヒーショップを開くために、全額資金を提供したが、うまくいかなかった。現在彼は、同僚の女の子と長期出張に出かけるのが大好きな、ただの遊び人になってしまった。
「私は捨てられた犬のようです。」とミンさんは話す。ミンさんは、心療内科の治療や、お互いの両親の介入によって何とか結婚生活を続けようとしたが、少し時間がたつと夫はまた遊びに行くようになった。35歳の今、ミンさんは一人で子供を育てている。
アメリカの機関であるナショナル・ファザーフッド・イニシアチブが、離婚の原因を調べるための調査を実施したところ、トゥー・チャンさんやホン・ミンさんの場合と同様に、回答者の41%が結婚する前に充分な準備が出来ていなかったと回答した。これらの人は、家族として他人と生活を送るのに必要なスキルが不足していたので、パートナーと仲良く生活することが難しいと感じている。
グエン・ティ・タム教授は、結婚を後悔しないために若い人がまずすべきことは、ライフプランを立てることだと指摘する。仕事のキャリアだけを考えるのではなく、一人一人が社会との関係性の構築に投資し、潜在的なパートナーと出会うチャンスを自ら作り出す必要がある。さらに、最も重要なこととして自分の残りの人生を共に過ごしたいと思える人をしっかりと時間をかけて探すことが必要だ。
「結婚のために、信頼関係を築くまでに2年間は必要です。その時間の中で、お互いの性格、家族の文化、過去の経歴などを理解します。様々な質問をして、その人の性格や考え方を受け入れられるかどうかを考えるようにしましょう。」とタム教授は話す。
キム・タイン氏も同様の意見で、若者たちに正しい時期に適切な人と結婚するようにアドバイスする。適切な人とは、お互いが心から愛し合っており、お互いの人格を尊重し、健康、精神、経済的に十分な能力を備え、お互いの性格、趣味、考え方、文化、週刊、価値観を共有できる人を指す。正しい時期とは、結婚するのに十分な年齢で、結婚生活に入る心の準備が整った時のことだ。
現在、トゥー・チャンさんは都会に戻ってきた。結婚に失敗した後、チャンさんは結婚の泥沼から早い時期に抜け出せたことは幸運だったと考えている。「少なくとも私と彼の間にお金や子供の問題は残っていません。今回のことは一生に一度の経験だったと思います。もし将来、誰かと出会っても同じような結婚のプレッシャーは感じないでしょう。」とトゥー・チャンさんは話す。トゥー・チャンさんの両親は、彼女が離婚した後で、自分たちの間違いに気づき、今後は子供の人生には口出ししないと約束してくれた。
ホン・ミンさんの場合は、子供のためにこのまま結婚生活を続けることに決めた。涙を流しながら過ごした3年間の結婚生活の後、彼女は、もう一度人生をやり直す気力がなくなったと話した。一方のトゥー・ハンさんは、人生の最後の日まで夫と過ごすだろうと話した。「夫との感情のもつれは元に戻りませんが、彼はもう長くないので、それまでは面倒を見ようと思います。」とトゥー・ハンさんは話した。
出典:28/03/2022 VNEXPRESS
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