ここ1ヶ月の間にガン・ゴックさん(27歳)は、ガソリンスタンドを探し回ったり給油の列に並ぶのを避けるためにバイクタクシーに500万VNDを費やした。
ゴックさんはホーチミン市8区在住で、仕事の関係上、市内の各区を頻繁に移動する必要がある。10月10日の午後、ゴックさんが3区から戻る時にガソリンが少なくなっていたので、家の近くのガソリンスタンドに向かうとそこには大勢の人だかりができていた。30分ほど待っても順番が来なかったので、ゴックさんは別のガソリンスタンドを探しに行ったがどこも”ガソリン切れ”の看板がかかっていた。そこで、7区まで行けばガソリンがあるかもしれないと思い7区へ向かったが途中でガス欠になってしまった。
「こんな状況になったのは生まれて初めてです。」とゴックさんは話す。その日の夜11時ごろにようやく給油することができたが、売ってくれたのは5万ドン分のガソリンだけだった。それからの毎日は、列に並び続けてようやく給油できるという日々が続いた。
ゴックさんは、常にガス欠に悩まされるようになったので、仕事に集中するため、自分のバイクでの移動を諦めてバイクタクシーを利用することに決めた。「お金がかかることはわかってましたがやらざるを得ませんでした。」とゴックさんは話す。ゴックさんによると自分のバイクで移動する場合のガソリン代なら100万VNDもかからないのに、これまでにバイクタクシー代として給料の1/4にあたる500万VNDを費やしている。
最近になってゴックさんをはじめとした多くの市民がガソリン不足による影響を受けている。
10月31日にVnExpressが実施した簡易調査では、7区のグエンティダップ通りにある3軒のガソリンスタンドのうち1軒はガソリン切れの看板を掲げており、残り2軒には給油を待つ人の列ができていた。国道1A号線では、近くにある2軒のガソリンスタンドのうち1軒はガソリン切れでもう1軒は、1台3万VND分のガソリンに制限して販売していた。
11月1日に開かれた社会経済会議で、商工局のブイ・ター・ホアン・ブー局長は、ホーチミン市人民委員会に対して市内の108ヶ所のガソリンスタンドがガソリンが不足しており、4か所が停止または閉鎖の申請をおこなっていると報告した。特にクチ県、ホックモン県、ビンチャン県、ビンタン区、12区などの郊外では、状況はさらに深刻だ。
10月27日にホーチミン市商工局のグエン・ティ・キム・ゴック副局長も市内のガソリンスタンドの9~10%が断続的にガソリン不足の状況に陥っていると述べている。
ホーチミン市経済大学のホー・クオック・トン教授は、COVID-19と世界的な紛争が多くの労働者の収入と生活に影響を与えていると指摘する。それに加えて物価の上昇圧力、ガソリン価格の上昇、そしてガソリン不足がさらに市民の生活を圧迫している。
「ガソリンスタンドで長時間待ち続けたり、ガソリンの供給が制限されている状況は、時間と金銭の損失を引き起こし、消費者心理に大きな影響を与えます。多くの市民が給油の列に並び続けて、それでも給油できないかもしれないという状況で収入と生活に影響を受けています。」とトン教授は話す。
このような状況を受けて市民は状況に適用するために我慢したり習慣を変えたりする必要があるとトン教授は指摘する。「しかし、どのような方法で適応したとしても、時間やお金の損失は出ます。現在のガソリン不足による社会的な損失は非常に大きなものです。」とトン教授は説明する。
トン教授は、損失は金銭だけでなく、時間、労力、失われた機会など多岐にわたり、それが心理的な影響を及ぼし、最終的には社会的リスクを生み出すと指摘する。
配車アプリでバイクタクシー業を営むグエン・バン・ヒウさん(40歳)も大きな影響を受けている一人だ。ヒウさんの収入は完全にバイクに依存しているが、ここ最近は30分列に並んで3万VNDしか給油できないという日々が続いている。顧客から連絡があっても給油の順番待ちで動けなかったり、指定された場所まで行くだけのガソリンが無いために行くことが出来ず、2時間程度アプリをオフにせざるを得なくなった。
「給油の順番待ちは時間を浪費し、アプリを切れば収入に大きく影響します。でもアプリを切らないと待たせることになるので申し訳ないです。」とヒウさんは話す。この状況になって1ヶ月近く経つが、常にアプリを切ってガソリンを探し回っているので、ヒウさんの収入は、他の同業者同様1/3程度に落ち込んでいる。
この状況に適応するため、タンビン区に住むグエン・チュン・トゥアンさん(40歳)は、給油を日々の最優先事項に設定した。「まだガソリンがあっても常に給油しています。少しでも時間があればガソリンスタンドに立ち寄るようにしているのです。」とトゥアンさんは話す。
ビンズン省ジーアンに住むドー・バン・ディエンさんは、3週間前から通勤を電動自転車に切り換えた。子供達も両親にバイクで送り迎えしてもらう代わりに自転車で通学するようになった。「時間の節約と環境保護に繋がります。」と銀行で働くディエンさんは話す。
SNS上の『自転車通勤』グループでは、ここ最近のガソリンの価格上昇とガソリン不足によって自転車通勤に切り換えたというメンバーの投稿が増えている。このグループを管理するハノイ在住のレ・フーン・チーさんによると、7月からこれまでにメンバーが1000人以上増えている。
「このグループのメンバーが全員自転車通勤しているわけではありませんが、ガソリンが不足するようになってから自転車に対する関心は確かに高まっています。」とチーさんは話す。
ホーチミン市の外資系IT企業で働くグエン・ホアイ・ナムさん(30歳)は、仕事を在宅勤務に切り換えた。ナムさんによると10月上旬は危機的状況だった。ナムさんの自宅はニャーベー県にあり、毎朝10㎞程離れた10区の会社まで通っていた。バイク通勤だったので、ナムさんはいつもガソリンを満タンにしていた。
10月9日、ナムさんは仕事が終わってすぐに帰宅すると途中のガソリンスタンドは混雑しているだろうと考え、その日は残業して帰ることにした。充分に遅い時間まで待ってからガソリンスタンドに立ち寄ったが、予想外にも多くの人が給油の列に並んでいた。ナムさんは、その日の給油はあきらめて翌日の早朝に給油することにした。しかし、翌朝も状況は変わっていなかった。「結局5万ドン分のガソリンを給油するのに30分以上待たされ、その日は会社に遅刻しました。」とナムさんは嘆いた。
毎日、給油のためにガソリンスタンドに並ばなければならないことにいら立ちが募り仕事にも影響が出たため、ナムさんは会社に在宅勤務の許可を申請した。
トン教授はガソリン不足による悪影響を抑える普遍的な解決策は存在しないと指摘する。「それぞれの人が不要不急の外出を避ける、公共交通機関を利用するなどそれぞれの解決策を模索する必要があります。」とトン教授は話す。
冒頭のゴックさんは、この状況が長引けば毎月500万VNDかかるとしてもバイクタクシーを利用せざるを得ないと話していた。
出典:02/11/2022 VNEXPRESS
上記を参考に記事を翻訳・編集・制作