ベトナムビジネスならLAI VIENにお任せください!入国許可、労働許可証、法人設立、現地調査、工業団地紹介などあらゆる業務に対応します!お気軽にご相談ください!

特集記事Vol157
海外初、東南アジア初!
なぜ選ばれたベトナム?

海外初、東南アジア初の拠点としてベトナムを選ぶ日系企業が増えている。彼らは数ある国の中で、この地のどこに優位性や将来性を感じたのか。昨年設立された企業3社を取材し、最新の業界動向を含めて語ってもらった。

ABC-MART VIETNAM
General Director
山田 圭氏

韓国出店でシェアトップに
東南アジア向け店舗を開発

 靴を中心に衣料や雑貨などの小売、靴の自社ブランドの製造・販売をするエービーシー・マート(ABC-MART)。1990年に上野と渋谷でスタートした小売事業は海外ブランドとの提携を強化し、国内に1081店舗(取材時:以下同)と業界大手である。

 同社の海外展開は韓国に始まる。自社ブランド「HAWKINS」などを韓国で生産管理していた背景もあり、韓国ソウルの中心地であるミョンドンに1号店を出店した。

「靴製造、小売は資金と時間も必要な事業。その困難さを知り、共に長期ビジョンが描ける企業でないと組めません」

 靴はパーツが多くて生産工程が長く、サイズも1アイテムで10程度必要になる。手間のかかる事業だからこそ人材が重視され、特に海外であればパートナー企業が大切だという。

 2002年に韓国に出店して現在は305店舗に増えた。同社のようなマルチブランドシューズストアでは米国のFoot Lockerと欧州のJD Sportsが世界大手であり、韓国には両社が進出しているが、ABC-MARTがシェアトップだそうだ。

韓国にある「ABC-MART GRAND STAGE)」

 2009年には台湾にもABC-MARTを出店。現在67店舗で、毎年5~6店舗を増やしている。台湾には上記の競合2社は進出しておらず、ブランドショップが中心だ。ABC-MARTの海外売上比率は現在、20~25%まで上昇している。

「東南アジア進出は韓国と台湾が軌道に乗った2016年から動き出し、2018年に海外での事業拡大に向けての業態として『ABC-MART GRAND STAGE』を銀座、原宿、ソウルにオープンしました」

 18~24歳の自分のスタイルを持つ若者を対象に商品をライフスタイルシューズとファッションに絞り、内装を統一し、デジタルでのタッチポイントを作る。複数のブランドによるミックスコーディネートをスタッフがサポートするサービスだ。

店内に陳列された商品

海外店舗初の日本人スタッフ
徐々に見えてきた若者の姿

 2018年に海外事業部を設立して東南アジアのリサーチをスタート。当初はタイ、シンガポール、マレーシアが候補で、市場規模も大きく競合も出店しているタイを進めていたが、2020年からの新型コロナでタイへ渡航できなくなった。

「そんな中、同時期に新型コロナを抑えられていたベトナムが急遽候補に挙がりました。きっかけは、靴の生産と海外ブランドの小売事業をしていた台湾系パートナー企業とのつながりで、東南アジア1号店をベトナムに決めました」

 市場への参入ハードルの高さも決め手となった。事業ライセンスの取得が難しい。都市部のメイン通りから外れるとコピー商品が安く販売されている。有名ブランドの商品が買えるほど平均所得が高くない。一方で、競合が少ないなどのメリットもあった。

 つまり、ハードルが高い分、数店舗が成功すればその後がスムーズに展開でき、将来的な東南アジアでの事業拡大が可能と判断したのだ。そこで海外展開で初めて、日本からのスタッフが乗り込んだ。

「韓国と台湾では進出当初からローカライズを進め、経営も戦略も現地のスタッフに任せています。ベトナムは気合の入れ方が違う(笑)」

 2022年10月にホーチミン市1区のParksonに1号店を、2023年3月には2区のThiso Mallに2号店を出店した。商品は12ブランドあり、自社製品の「HAWKINS」や「ABC SELECT」、日本製の「PATRICK」と、ベトナムではABC-MARTでしか展開がない商品も多く揃えている。

日本製の「PATRICK」

 ターゲットは18~24歳の「本物志向の若者」。彼らの所得は決して高くないので今は富裕層や中間層の子どもたち、観光客を顧客に想定しているが、この5ヶ月で見えてきたことがあるという。

 まず、副業をしている若者が多いためか、所得データよりも多くの収入を得ていると感じる。彼らはセールやクーポンに敏感で、常に情報をチェックしており、上手に安く購入する。他国とは異なり、高い商品を好む。

「商品の価格帯をHi、Mid、Loに分けると、ベトナムではLoは140万VND程度、Midは180万~200万VND、一番上のHiは250万VND以上。日本はコスパ重視でMidやLoが良く売れますがベトナムはHiとMid。買うと決めたら高品質な本物が欲しいのでしょう」

今の一番人気は「NB 530」
年内に3店舗を出店予定

 売れ筋のブランドはNikeやadidasだが、アイテムでは「New Balance 530」。日本や韓国、タイで凄い人気で、ベトナムの若者にも同様だ。正規の価格で買えるのはABC-MARTだけだそうで、190万VND(取材時)。

若者に人気の「New Balance 530」

 ABC-MART VIETNAMは中国、シンガポール、日本など海外ブランドの東南アジアオフィスを通して直接輸入しているが、ベトナムでは多くのブランド商品は当地の代理店企業が輸入している。そのため、価格や展開商品がほかの東南アジア諸国と異なり、消費者に正しく届いていないという。ただ、これからベトナムも、東南アジアの一つの市場として大きく変化することが予想される。

「その頃には平均所得が上がって購買層が増えて、ライフスタイルシューズ市場が拡大する。これが長期ビジョンなのです」

 今後は年内にハノイを含めた3店舗を開店して合計5店舗とし、来年からは年間に5店舗ずつ増やす計画だ。日本や韓国から流行と情報を得られるのが強みで、ベトナムでのブランドやアイテムは少しずつローカライズを進めていく。

 東南アジア初の出店はタイからベトナムに変わったが、それが良かったと振り返る。タイなら売上は早い時期に伸ばせても、その後で頭打ちになったと感じるからだ。また、仮にタイで成功しても、次の進出先がベトナムになった場合、ハードルをより高く感じて攻略が難しいのではと語る。

「都市鉄道ができればバイクに乗らない人たちの足元が大きく変わって、ライフスタイルシューズのニーズが大きく伸びる。そんな日が待ち遠しいですね」

Net Protections Vietnam
General Director
西浦 司氏

ECで利用される「後払い」
未払いリスク保証で顧客支援

 後払い決済サービスを提供しているネットプロテクションズ。後払い決済サービスはBNPL(Buy Now Pay Later)事業とも呼ばれ、ECサイトなどで良く使われている。ユーザーがECサイトで商品購入後に選ぶ決済方法には、クレジットカード払い、コンビニ払い、商品着払いなどがあるが、後払いもそのひとつだ。

 同社のサービス「NP後払い」のサービスフローを説明すると、ユーザーが商品を購入すると同社が立て替えて加盟店(顧客)に代金を支払う。そしてユーザーには請求書を送り、商品到着後にユーザーから代金を入金してもらう。ユーザーの入金期限は商品注文から約14日以内の1回(全額)払いで、支払い方法は銀行振込、コンビニ払い、LINE Payといった電子ウォレットなどから選択できる。

 同社が代金の未回収(貸倒れ)のリスクを負う分、加盟店からは商品金額のうち一部を決済手数料として得るビジネスであり、ここで重視されるのがユーザーへの与信だ。

「クレジットカード会社では指定信用情報機関(CIC)などに与信を依頼するのが一般的ですが、弊社では外部の機関を使わずに独自の与信で判断しています」

 2002年からBNPL事業を始め、日本での年間サービス利用者は現在約1500万人、累計取引件数は約3億件という。この膨大なデータをもとに与信システムを組んでいる。後払い決済事業を始めた理由は「障壁があってできない取引をなくしたい」という思いからで、同サービスはクレジットカードを持っていない人を含め、幅広い人がサービスを利用できる。初回ユーザーはクレジットカードや銀行情報などを持っていなくても、基本的に利用可能だ。

「未回収となったユーザーは回収ができるまで使えなくなります。ただ、日本では約60%のユーザーがクレジットカードを保有しているものの、情報漏洩の不安や番号入力の煩雑さから後払いを選ぶ人も多いのです」

「NP後払い」の基本的なフロー

 とはいえ、家電やスマホなどの高額商品を転売目的で購入し、代金を支払わない場合も想定できる。そのため「NP後払い」では1回の利用を5万4000円(税込)までとし、少額取引でのサービスを提供している。

アジア進出を目的に台湾進出
確信を得て2020年に動く

 2018年には台湾での後払い事業「AFTEE」をスタートした。当初より東南アジアへの進出が目標で、その成功体験を作る最初のステップとして選んだのが台湾だ。既に複数の日本のEC企業が進出していて日系企業のプレゼンスも高いことから、事業を早く立ち上げられると考えた。

 「AFTEE」の加盟店には台湾ECトップ10の5社が含まれ、ユーザー数を100万人近くにまで伸ばすことに成功している。決済手数料などの仕組みは日本と同じだが、ユーザーには会員制度があり、取引回数が多くなって信用が積み重なると、利用できる上限の金額が増えていく。また、支払回数は1回ではなく最大で24回(24ヶ月)と長くした。

「代金の未回収率は日本より若干高いのですが、これまでの経験から下降する率が予想できています」

台湾「AFTEE」の画面

 ベトナムへの進出は台湾での成功が確信できた2020年から検討していた。新型コロナの拡大で現地調査に一時行けなくなったが、事業ライセンスを取得し、2022年4月にホーチミン市にNet Protections Vietnamを設立した。なぜ当初から東南アジア初の進出国がベトナム一択だったのか。

「理由は大きく3つあり、急成長しているEC市場の規模、後払い事業に対する規制の少なさ、競合他社の少なさです」

 東南アジア諸国を人口の大きさで考えるとインドネシア、ベトナム、タイの順となるものの、タイは既に成熟市場であったため今後の伸びが期待できなかった。インドネシアは進出先として有望だったものの、競合他社の多さから選択肢から外れた。

 現法設立から約1年の準備期間を経て、約20社のベトナム企業と後払い事業を始める予定で、今年4月~5月に初のローンチを迎える。台湾と同様に分割払いが可能で、入金方法は電子ウォレット、コンビニ払い、銀行振込などから選べる。

 日本のユーザーは女性が約6割と多く、20~60代と年代は幅広い。台湾は女性が約6割で20~40代が中心。ベトナムはEC利用が増加中とはいえ日本や台湾より市場が成熟していないことから、20~40代が中心になると予測している。

MoMoやクレカは競合でない
主流でなくても期待はされる

 現金払いが主流だったベトナムは、新型コロナの影響もあってMoMoなどの電子ウォレットが広く普及し、クレジットカードの保有率も上がってきた。後払いサービスもキャッシュレス決済の一つだが、西浦氏は電子ウォレットやクレジットカードはほとんど競合にならないと語る。

「現在クレジットカードやMoMoを使ってるユーザーを取り込もうとは思いません。なぜなら、現状に満足している人はクレジットカードではない『後払い』を使う理由がないからです。お買い物をするなかで、現状の決済手段に困っている人にぜひ使ってほしいです」

 商品の信頼性が低いという事情もあって、ベトナムでは商品代引き(COD)も多い。商品配達時にユーザーが受け取らない(返品する)ケースもあるが、後払いには支障がない。取引がキャンセルとなれば立替えの支払いも発生しないからだ。

ベトナム版の利用開始画面
ベトナム版の金額確認画面

 当面の目標は3年以内に事業を成立させること。ユーザーや加盟店の満足度を高め、事業に見合った収益を得て、未回収率を下げる見通しを立てていきたいという。設備投資が必要な製造業などと比べて参入のイニシャルコストは低いものの、黒字化までには長期的な視野と準備が必要とのことだ。

「後払いは支払い方法の主流にはならないかもしれません。ただ、確実にベトナムで期待できる『お買い物の手段』となるはずです」

株式会社ASNOVA
代表取締役社長
上田桂司氏

簡単で便利なくさび式足場
幅広い用途でニーズが上昇

 工事現場で建物の外壁などに組まれる仮設機材の足場。その中でもくさび式足場のレンタルサービスに特化したのがASNOVAだ。足場には様々な種類があって用途が分かれ、超高層マンションなどでは枠組足場、45m以下の低中層マンションや住宅ではくさび式足場が多く使われている。

くさび式足場

 老朽化が進むマンションの修繕工事、住宅のリフォーム、、自然災害の復興復旧、近年ではDIYを好む個人客からの注文もあり、くさび式足場のニーズは右肩上がりだ。施工性や運搬効率の良さも好まれる一因だ。

「枠組足場の組立てには職人のスキルが必要ですが、くさび式足場はさほど経験がなくても簡単に組み立てられます。現場での職人の数を減らせることも人気の理由でしょう」

 足場の種類によってレンタル会社もその顧客も異なる。枠組足場を取り扱うのは大手レンタル会社であり、顧客の大半はゼネコンなど大手企業だ。ASNOVAの顧客は主に中小企業で、大半が足場施工業者、現在は約2500社と取引がある。

 足場はパーツの組合せで、現場の用途に合わせてブロックのように組み立てていく。1つのパーツの価格は100~3000円ほどで、平均単価は1000円弱。同社の足場の保有金額は約130億円だ。毎年およそ15億~20億円を主に足場の購入に投資しており、今期は24億円となる予測だ。

「レンタルの費用は1軒の新築住宅の4面に足場を架けたとして、3ヶ月で10万円弱。個人へのレンタルでは1日、1週間単位もあります」

くさび式足場の組立て

5年でレンタルの意識が変化
3月に機材センターを出店

 海外進出のきっかけは、一般社団法人仮設工業会が10年ほど前に開催した、ベトナムへの仮設資材の視察ツアー。上田社長も参加しており、現地の大手仮設機材メーカーの社長と話す機会を持った。

「ベトナムの足場は販売一辺倒だったが、必ずレンタルに切り替わると言われました。実際、発電機などの資材はレンタルが進んでいましたが、足場だけは購入されていたのです」

 ベトナムにもレンタルの時代が来ると考えて準備を進め、テストマーケティングから始めた。2017年にくさび式足場の資材を600tほどベトナムに輸出して、パートナー企業に市場調査を頼んだ。絞られたターゲットに使用してもらい、くさび式のニーズの有無、客層、単価への反応などを聞いた。

 ASNOVAの社員も年に数回ベトナムに足を運んで、品質の評価、借り手の採算、くさび式の感想といった声を集め、20社ほどのベトナム企業にアンケートもした。質問には足場の寿命なども含まれ、ベトナム製の流通品は5年で折れるという意見が多かったという。

「この5年間での一番の変化はレンタルへの意識です。次々と現場があるので足場を保有する企業が多いのですが、初期に比べてレンタルの認識は高まり、くさび式の認知も上がりました」

 それでもくさび式足場を知らない人は多く、使用に抵抗される場合もあったが、心配はしていない。くさび式足場に事業を集中した15年ほど前の日本も同様であり、使えば施工や管理のしやすさなどが伝わって、普及が始まると信じているからだ。

「枠組足場はまとめて結束するのがとにかく大変で、私の感覚でくさびの5倍かかります。それが嫌でくさびを始めたというのもあるんです(笑)」

 新型コロナの影響と上場の準備で多少遅れて、2022年10月にASNOVA VIETNAMを設立。2023年3月にはバリアブンタウのPhu My 3工業団地内にPHU MY機材センターを出店した。

Phu My 機材センター

レンタルの足場が初出荷
品質と価格で強みを生かす

 機材センターは約4000㎡と広大で、今は敷地の一部を使っているが、機材の保有量が増えれば拡張を考えている。約380tのくさび式足場の移動が終わり、確認作業をしているところだ(取材時)。

 機材センターは事業の心臓部であり、ここでの整理整頓が事業全体も整えていくという。徹底したチェックは災害や事故、不正をも自然となくし、同社の棚卸の差異率は業界平均が3%の中、十数年で0.002%まで落としたそうだ。

「何千万個、何億個という部品の差異率を0にするのは無理でも、差異が出るたびに原因を追究しながら毎日の棚卸をした結果です。ベトナムも同じにしたいですが、3年はかかるでしょう」

 2022年にベトナム人の機材センター長を日本で2ヶ月半研修し、機材センターの管理を教えた。その彼がベトナムのスタッフを採用した。

Phu My機材センターでの作業

 ベトナムでは販売とレンタルの2つのライセンスを持つが、日本で培ったレンタル事業をまずは展開していく。ターゲットはローカル企業で、営業を続け、国際建設展示会のVIETBUILDにも出展した。ただ、昨年半ばまでの建設業界は資材や人件費の高騰があって、足場まで目が配れない状況だった。その後は不動産業界の不況があり、建設が滞る案件も増えてきた。

 しかし努力の結果、今年3月に初めてレンタルの出荷が始まった。最初の顧客は地場の工務店で、くさび式足場は住宅の外装のために使われる。建設件数の多いマンションで知名度を上げるために、サブコンや建設会社へと顧客を広げる予定だ。

 ベトナムにはローカル、日系、韓国系などの競合があり、足場メーカーが販売だけでなくレンタルする場合もある。ただ、同社では経年品の足場を輸入しているので仕入れ値を安くでき、レンタル価格を下げられるという。

「日本での事業の強みを出せると思います。初年度で借りてもらえる環境を整えて、くさび式足場とASNOVAの認知度を上げて、レンタルの実績を積む。ベトナムは非常に面白い市場だと思います」