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ベトナムビジネス特集Vol149
本気で育てるベトナム人材
我社のスキルをその腕に

ベトナム人への教育や研修。近年では日本本社とベトナム現法、地場の企業や教育機関等とも連携しながら職業訓練を施す企業が増えている。初期投資と時間は必要だが、将来を見据えた人材育成戦略だ。その先端的な取組みを紹介する。

特定技能制度でベトナムへ
人材教育機関と大学が協力

 日本発祥のハンバーガーチェーン「モスバーガー」を展開するモスフードサービス(モス)が始めた、教育投資カリキュラム、「ベトナムカゾク」。その1期生15人が今年6月から日本で働いている。

 彼らは2019年4月に新設された在留資格「特定技能1号」の取得者であり、通算5年の在留と就労が認められている。対象となる14職種のうち「外食業」の特定技能試験に合格、日本語能力試験(JLPT)N4レベル以上を保持しており、特定技能の在留資格が認められた。

「モスバーガーの国内店舗は1254あり(2022年7月末現在)、外食チェーンでは珍しく、店舗で勤務しているアルバイトや社員に外国人の方は少ないです。ただ、ここ数年はアルバイトにベトナム国籍者が一番多く、留学生を中心にとてもよく働いてくれています。3年前に特定技能制度ができたことがきっかけでベトナムに注目をするようになりました」

 ベトナムの送出し機関を支援する日本人行政書士と接点ができ、日本で外国人技能実習生として働いた体験のある人材を、教え子として紹介できることになった。海外での特定技能試験はハノイから始めるという日本政府の発表もあり、田口氏たちは2019年3月に初めてハノイに入った。

 紹介を受けたベトナム人約50人に会社説明会と面接を実施し、接客業の現場で誰も不幸にならないために、「厳格」と語る適性試験と面接を実施して20人が合格した。

 ただ、田口氏は別行動を取っていた。ベトナムで日系企業への支援で実績があるスガヌマグループベトナムから、様々な人脈を紹介してもらっていたのだ。

 そのひとつがハノイ大学の日本語・日本文化コラボレーションセンターで、ファム・トゥー・フオン所長との面談だった。モスフードサービスには外食に必要な社員教育や衛生管理、店舗運営研修のノウハウがあり、ベトナムの若手に教育投資したいと語ったところ、帰国後にぜひ協力したいと連絡があった。

「実はフオンさんがどのような方を全く知らずに、その場の雰囲気から思い付いて話したことです(笑)。しかし、思いがけずハノイ大学との連携と採用活動が並走したことで、ベトナムカゾクが走り出しました」

国立ダナン観光短期大学で開始
元実習生と大学生の2ルートに

 フオン所長はその後、提携するには外食産業に近い大学がより良いだろうと観光短期大学をいくつか紹介。モスは理念が共有できて製造研修設備が揃っているダナン観光短期大学に依頼し、2019年10月にモス、スガヌマグループベトナム、ダナン観光短期大学の3者間にて教育連携協定を締結した。

 大学は学生の募集と授業に使う教室や設備、スガヌマグループベトナムはN4試験に合格するまでの日本語教育、モスは特定技能試験の合格対策と特定試験合格後の「MFC」(モス・フードビジネス・カレッジ)講座を提供し、教育費用はモスが負担することとした。

 ダナン観光短期大学でのカリキュラムはベトナムの新学期が始まる2019年9月に開始し、新入学生と新2年生を対象とした。合計で12ヶ月の教育を予定していたが、2020年2月から新型コロナが拡大して当初依頼した地場日本語学校による日本語教育の進捗が遅れ、計画は大幅に遅延した。

 一方、2018年にハノイで採用した20人は、日本での技能実習経験が3年あり、N2かN3の取得者。同じく新型コロナ禍で日本入国の目途が立たない中、モスの若手社員がオンラインで1回2時間、合計80回以上の講義をして、日本語能力に磨きをかけた。特定技能の試験対策もオンラインで実施し、試験前には社員がハノイに行って、2日の集中試験対策講義を行った。

 彼らは2020年2月に日本で特定技能試験を受験して17人が合格。ただ、新型コロナで日本での受入れが延期となり、ベトナムで仕事をしながら渡航を待つことになったが、2人は家庭の事情などで諦めて離脱した。

 現在、2期生の13人は既に大学を卒業し、3期生の7人も今年8月で卒業。彼らは仕事やアルバイトをしながら平日夕方や休日にオンライン授業を受けており、N4の合格を目指している。その後は特定技能試験の試験対策講義、試験受験、MFC研修と続く。

「大学内にMFC研修用のキッチンスキルラボを作る計画で、今年9月末にはMFC研修担当社員がダナンに赴任する予定です」

1期生は東京都内の7店舗へ
2期生に加えて1.5期生も採用

 ベトナムカゾク1期生となったハノイ採用の15人は、当初より2年以上遅れた2022年4月18日にようやく渡日。約1ヶ月半のMFC研修を受けた。ハンバーガーの調理や接客のロールプレイングといった現場研修が多く、1日8時間を週5日、毎日日本語でのレポート提出もあるという日本人の新入社員と同じ内容だ。各フェーズで検定試験もあり、合格するまで繰り返す。

「無事に全員が合格しました。皆さん手先が器用で真面目、日本語能力も高い。活躍が楽しみです」

 1期生の年齢は24~31歳、女性が13人で男性が2人。フルタイムの正規雇用者として、現在(取材時)は東京都内の7店舗で働き、日本人と同様のOJTで実務を学んでいる。

「仕事に慣れて自立できれば、新しい店舗や欠員が出た店舗への異動が始まります。これも日本人社員と同じです」

 ハノイから始まるはずだった特定技能試験は、未だベトナムで実施されていない。そのため2期生は近隣のカンボジアやタイなどで受験する予定で、その後の1ヶ月半のMFC研修を考慮すると、渡日は来年早々になる予定だ。そのため、1.5期生とも呼ぶ人材をハノイで採用し、1期生のような日本就労を準備しているという。

 5年間の特定技能ビザの終了後は、アジアを中心に約550店舗ある海外店での勤務もあり得る。ただ、キャリアの選択は当人たちに任せるという。

「飲食事業を独立して立ち上げたり、家族とカフェを始めたり、将来はアジアの外食を背負って立つ人材になってほしいですし、そのための教育投資を継続していく計画です」

最後に手を挙げた若手企業
「日本語IT学科」を運営

 企業のプロダクト開発や新規事業開発支援、ITを使ったソリューション提供のほか、教育事業も展開するSun Asterisk。社員数約1800人のうち、およそハノイに1200人、ダナンに200人、ホーチミン市に60人と、ベトナム拠点が8割を占める。

 話は8年前にさかのぼる。JICA(独立行政法人国際協力機構)はハノイ工科大学と提携して、海外で高度人材を育成する高等教育支援プロジェクトを、2006年から2014年に運営していた。将来の日本のITエンジニア不足を見越して、外国人を現地で育て、日本で活躍してもらう狙いだ。

 プロジェクト終了前、卒業生が活躍していた大学側は継続を希望し、日系企業に声をかけた。教育事業はリターンまでの期間が長いと多くの企業が難色を示す中、最後に手を挙げたのが2012年創業のFramgia(現Sun Asterisk)だった。

「当時の経営者がベトナムのIT教育に一石を投じたいと、必死に社内を説得して回ったそうです」

 それもそのはずで、大学は無償での協力を依頼していた。一方、お金のない学生に負担させたくない。そこで同社は学生が就職する企業から人材紹介料を得て、それを主に人件費となる運営費に充てる方法を考えた。利益が出るまでは長期戦だが、本業が好転していたこともあって、2014年9月から運営を引き継いだ。

 ハノイ工科大学の1学年は約3500人。そのうちIT学部が約600人で、この中の「日本語IT学科」は定員が240人だ。

「この日本語IT学科を運営しています。当初の定員は120人でしたが、大学の意向もあって240人に増えました」

 この教育プロジェクトは日本での就職を目指すハイレベルなIT人材の育成を目的としており、「HEDSPI」(Higher Education Development Support Project on ICT」と呼ばれる。一般的な日本語授業(600時間)とITに関する日本語授業「実践IT授業」(250時間)が基本で、合計850時間は必修単位であって落とすと卒業できない。

社会で役立つ日本語教育
前提はIT企業での就労

 ハノイ工科大学は5年制で、一般的な日本語授業は1~4年前期、実践IT授業は3~5年前期まで学ぶ。前者の講師は25人で日本人が9人、後者はベトナム人と日本人が4人ずつだ(取材時)。

 一般的な日本語授業はひらがなやカタカナから始め、文法、会話、リスニングとレベルアップする。JLPTのN3を目指すが、日本企業から内定を得た学生の5割弱はN2やN1を取得している。

「日本人とのコミュニケーションが目的です。JLPTでは『読む』と『聞く』は身に付いても『話す』は弱いので、シャドーイングなどで会話力を高めています」

 実践IT授業はIT企業での就労を前提としており、専門用語や業界用語から、要件定義を開発に落とし込む際の報告の仕方、顧客を満足させるプレゼンテーション、質問へのロジカルな回答など、体験的なカリキュラムとなっている。

 講師は経験5年以上のITエンジニアで、アプリ開発、システム開発、組込みソフト開発、ブリッジSEなどの経験者。以前にIT企業でプロジェクトマネジャーをしていた眞田氏もその一人だ。

 新しい技術やトレンドが次々と登場するので、カリキュラムは毎年アップデートしている。新しい内容を授業に反映させることに、講師たちは頭を悩ませるという。

「学生のための自己犠牲を問わない講師ばかりです。苦労はさせていますが、そういうマインドがないと生き残れない環境なのです」

 プログラミングやアルゴリズムは教えていない。ほかの科目にあるし、母国語で勉強したほうが早いからだ。また、現在は対面授業だが、新型コロナ禍ではオンライン授業だった。現在はどちらにも対応できるように設計している。

 Sun Asteriskでは経済産業省の支援を受けながら、同様のプロジェクトをダナン工科大学(2016年)、ベトナム国家大学のハノイ校技術工学大学(2017年)、ホーチミン市校情報通信大学(2019年)にも展開。ベトナムで約2000人の学生に教育を提供中だ。

日本企業が驚くジョブフェア
内定者向けの入社前授業も

 同社は就職のためのジョブフェア「xseeds Hub選考会」も開催している。ベトナムで3日間あり、会社説明会1回、面談2回、食事会1回が基本。企業の参加費は60万円(新型コロナ禍はオンライン開催で10万円)、採用決定時の成功報酬は一人につき110万円(全て税別)。これらが日本語IT学科の運営費となっている。

 テト正月と夏休みを除く1年に10回の開催で、新学期の9月から11月を希望する企業が多いが、上限は10社と決めている。1回当たり参加する学生は、5社開催で80人前後、10社開催で150人前後という。採用率は90~100%と非常に高く、これまで130社以上の企業が参加し、約400人の内定者を出している。

「最初は開発企業が多かったのですが、最近はDXを推進したい製造業の募集も増えています。『これほど優秀なのか』と驚く方が多いです(笑)」

 内定者に向けた授業が320時間ある。主に4~5年生が対象で、日本でのビジネスマナーや働き方、IT業界で働くマインドなどを教える。入社後の1年は定着支援のサポートをしており、卒業者の相談にも乗っている。

 今年6月にはハノイ工科大学と共同で、ICT教育を推進する「EdTech Centre」を校内に開設した。協力する民間企業として、実績と信頼のある同社が選ばれたのだ。ハノイ工科大学とその他の教育機関向けの、オンラインプラットフォームとコンテンツの開発と運営を行う。

「弊社やハノイ工科大学のコンテンツが既に上がっています。プラットフォーム開発はほとんど終わっていて、意見を聞きながら改修していきます」

 Sun Asteriskはマレーシア、インドネシア、ブラジルでも教育事業を展開し、経済産業省の支援でアフリカの大学でも始める予定だ。

「ITはインターネットとパソコンさえあればどこでも仕事ができ、非常に可能性がある業界です。我々は色んな国の人たちに平等にチャンスを与えたい」

将来のベトナム進出も視野
日本語と建築知識を教える

 日本の労働力不足は数多くの業種に及んでいるが、一般住宅、特に木造住宅の建築を担う大工も人手不足が続いている。主に木造注文住宅を請け負う岡山県のライフデザイン・カバヤも同様であり、2019年にベトナム⼈の⼤⼯育成・職業訓練を始めた。

「7年前にベトナムに注目し始めて、(木質系材料の)CLT事業の営業に出向くなどの行動を起こしていました。その状況の中で2019年5月、社長が大工の育成・職業訓練事業を立案したのです。日本の若者の大工就労人口の減少は避けようもなく、海外に目を向けざるを得ませんでした。今後の発展性と、真面目で親日的な国民性を踏まえて、ベトナムに注目して最終的に選びました」

 将来的な事業展開も理由のひとつだ。ベトナムでは富裕層のリフォームなどで木造建築のニーズが高まっており、同社の技術が活かせると考えた。3~5年後を見据えたときに、スタートは早めに切る必要があったという。

 提携したのは建築建設系大学トップクラスのハノイ交通運輸大学。2017年に「日越研究開発センター」を立上げて日本の企業や大学と連携を図っており、同社もここにアクセスした。

 大工の訓練校となるLifeDesign Kabaya Vietnamを2019年10月にハノイに設立。大学では新学期となる2019年の9月にセミナーを開催して4年生を募集した。最初にエントリーシートで書類選考、面接で大工となる体力、木造への興味、当人のやる気などを確認し、11月に1期生となる3人を採用。カリキュラムがスタートした。

「志望動機を聞くと、『親族に家具職人がいて憧れていた』、『日本の技術力の高さに関心があり学びたかった』などがありました」

 当初のスケジュールは在学中の6ヶ月で日本語の基礎、日本での基本的なマナー、建築や技術の基礎を学ぶ。卒業後はLifeDesign Kabaya Vietnamに入社して1年間で日本語、日本でのビジネスマナー、より高度な建築や技術を習得する。その後は日本で3年間の現場実習となり、社員⼤⼯として大工技術を実践的に学ぶ。

 しかし、2020年から拡大した新型コロナで変更を余儀なくされた。

延期の間も学習と実習を継続
日本で大工の実習がスタート

 日本語教育は地場の日本語学校に委託し、1日に1回45分の授業が4回あり、それが週に5回。独自カリキュラムの建築課程は1年半かけて学べるように項目を分割し、日本で必要となる建築知識を基本に、大工の技術が身に付くように教科を決めた。講義は現地ベトナムでの対面講義かオンライン、日本からのオンライン講義という3パターンで、1回1時間、週に2回実施した。

「ベトナムでは木造建築に触れる機会が少ないので、木の特性やイメージがつかみにくいようでした。その対応と、専門用語の日本語からベトナム語への翻訳・通訳が難しかったです」

 当初は2021年春に渡日して現場実習となる予定が、新型コロナで延期となった。3人はLifeDesign Kabaya Vietnamで日本本社の工事監督から週に2回、木造建築に関するオンライン講義を受けていた。

 日本語の勉強も欠かさなかった。1期生の1人は「勉強と実習が私の仕事と考えていました」と語る。

「新型コロナ禍でも彼らの日本語習得スピードは速く、自分で相当な勉強をする努力家タイプだとわかりました。ただ、建築用語を覚えることは大変だったようです」

 ライフデザイン・カバヤの社員大工1期生は、予定より1年遅れた今年4月末に渡日。5月31日から現場実習が始まり、先輩社員と同社専属の大工が協力して教育と指導をしている。先輩大工の一人は「国境を超えて日本の木造住宅の技術を直接教えられるのは、僕たちにとって大きいやりがい」と語る。

 ただ、彼らが特別扱いされているわけではない。OJTでの指導は日本人社員大工と変わらない内容での実習計画であり、単に大工技術だけでなく、同社の高い技術と品質管理を徹底して引き継がせる。

 現場実習3年間の目的は、大工として構造仕舞から仕上げまでの一貫した施工ができるようになること。2022年6月からは、労働安全衛生法の学習と道具の取扱いが始まっている。

「3人はとにかく真面目で、日本語も問題ないレベル。先輩社員のフォローがあるためか、日本でも不安なく生活しているようです」

2期生は今年10月に日本へ
ベトナムで建築部門の設立も

 ベトナムでは2期生が成長している。1期生と同様にハノイ交通運輸大学が2020年9月に学生を募集し、応募者の中から2人を採用。11月から講義が始まった。ただ、新型コロナで大学が閉鎖されていたため、ほとんどがLifeDesign Kabaya Vietnamで実施された。

 カリキュラムの内容は1期と変わっていないが、前回の経験からオンライン授業の内容が豊富になっている。既に卒業した2期生はLifeDesign Kabaya Vietnamで日本語や建築知識を学んでおり、今年10月に渡日する予定である。

「今年9月には3期生を募集する予定で、採用人数はやはり2~3人を考えています」

 ベトナム⼈の⼤⼯育成・職業訓練は長期的な事業として継続する予定だが、ベトナムでの事業展開などを勘案して単年度で決定している。そのため最終的な累計人数は設定していない。

 1期生が現場実習を終えた後について同社は、特定技能1号として日本で大工として技術を高める方向と、ベトナムに戻って技術が活かせるように、ベトナムでの仕事の整備も考えている。1期生の一人は夢をこう語る。

「木造住宅の技術や知識をしっかりと学んで、ベトナムに帰ってLifeDesign Kabaya Vietnamの建築部門を設立し、そこで働きたい」

 LifeDesign Kabaya Vietnamは職業訓練校と同時に、ベトナム人のCADエンジニアが約20人いるCADセンターとしての事業が大きい。ベトナムで本格的に木造注文住宅事業に進出する際の、その第一歩を彼らが作るのかもしれない。

「大工育成としてのカリキュラムは日本で始動したばかりで未知数ですが、弊社のベトナム事業への貢献はかなり期待できると感じています」