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ベトナムで活躍する日系企業| リーダーたちの構想第52回 MSIG Insurance (Vietnam)

日系損保会社初の100%出資保険会社として設立されたMSIG Insurance (Vietnam)。近年は提携企業と共にリテール分野に注力しており、デジタル分野の強化にも取り組む。近藤賢一副社長兼ホーチミン支店長が語る。

ベトナム人向けリテール商品

―― ベトナム進出と事業展開について教えてください。

近藤 1994年にハノイ、1995年にホーチミン市に駐在員事務所を開設しました。その後、2009年にMSIG Insurance (Vietnam)(三井住友海上ベトナム)を設立し、ハノイ本社とホーチミン支店で営業を始めました。現在のスタッフはおよそハノイで100人、ホーチミン市で60人です。

 当初は日系企業向けの損害保険が中心でしたが、非日系外資系企業へ対象を広げるため、2005年に日本本社が台湾の損保会社を買収しました。主に台湾・中国系企業にアプローチをしています。

 ローカル企業向けには設立時から銀行窓販部があり、提携したローカル銀行での窓口販売が中心でした。ただ、こうした窓口では他社の保険商品も販売しています。特にベトナム人のお客様に弊社の保険をより知っていただきたいと始めたのが、「パートナーシップビジネス」です。

 2017年頃からこのプロジェクトを計画し、2019年より提携企業との協業によるリテール販売をスタートしました。

―― どういった内容でしょうか?

近藤 ローカル銀行の窓販と並行させた、EC事業者、クレジットカード会社、ノンバンク、旅行会社などでのオンラインを中心とした保険の販売です。こうしたB to B to C事業を強化するための専門部署を作りました。

 ECサイトでは家電製品やスマートフォンなどの購入者に、輸送中の破損などを対象とした動産総合保険を紹介していただきます。クレジットカード会社やノンバンクでは自動車ローン時の自動車保険や住宅ローンでの火災保険、旅行会社ではツアー旅行での旅行保険を販売してもらうなどです。

 弊社のような損害保険会社は生命保険以外の保険を広く扱えるので、個人向け商品も様々にアレンジできます。ただ、保険販売にはライセンスが必要となります。提携したパートナー企業を招いて講習を開催するなど、ライセンスの取得をサポートしています。

 パートナー企業は約30社あり、毎月のように増えています。以前は日系企業向けが売上の約9割でしたが、現在ではパートナーシップビジネスが約3割にまで上昇しています。個人向け保険は法人向け火災保険などと比べると1件当たりの単価は少ないものの、幅広く販売することで規模の利益が出せます。

 注目しているのはアプリなどデジタルでの保険販売で、日本より普及のスピードが速いと感じます。ベトナム人の保険への意識や考え方が変わりつつある中で、DXへのキャッチアップが欠かせません。

―― ベトナムの損保業界について教えてください。

近藤 ベトナムには損害保険会社が32社あり、他国に比べて数は多いです。ただ、国営を母体としたローカル企業のシェアが高く、2021年のデータで上位6社が約60%のシェアを占めています。弊社のシェアは外資系企業の中ではトップクラスですが、1.8%にとどまっています。

 一方では非常に伸びしろを感じています。例えば、2021年の元受保険料(契約者から直接受取る保険料)は損保業界全体で約3180億円。日本の20分の1以下なのですが、前年比で3.7%の増加です。

 この背景には保険に対する認知度の低さがあります。そのため保険への加入率も低く、損害保険に入っていないベトナム企業も多くあると思います。それが今、企業の利益や個人の収入の増加もあって加入者が増加しており、まさにこれから保険が普及する、とても魅力的な市場なのです。

 このような状況では自社の商品を幅広くアピールする必要があります。それがパートナーシップビジネスを始めた理由の一つです。

ベトナム特有の事故・災害リスク

―― 法人向け商品にはどんなものがありますか?

近藤 主要な商品ではまず火災保険です。ベトナムでは指定された業種の事業主は強制的に火災・爆発保険に加入する義務もあって、根強いニーズがあります。同じ強制保険では建設工事などに適用される工事保険があります。ほかには輸送中の貨物の損害を補償する貨物保険、主に自損事故のために使う自動車保険などです。

 火災保険ではサービスの一環として、事故発生前の防災診断に力を入れています。専門の調査員が工場や倉庫などの現場を調査して、火災、労災、物流ルート、貨物などの危険性を指摘します。弊社でも行いますが、大規模な施設の場合はタイのグループ会社から調査員を派遣しています。

 ベトナム特有のリスクには、落雷や漏電など電気系統による火災事故、中部を中心とした台風や洪水による天災事故があります。調査員は機械や設備、地形などを調べてアドバイスしており、工場などの建設前から調査を始める場合もあります。

 ほかの特有なリスクは輸送中の自動車事故や貨物事故、労災事故などです。労災保険で圧倒的に多いのは出退勤時のバイク事故で、毎日のように報告があります。弊社ではこのような事故を減らすために交通安全講習を実施しています。

―― ベトナムで苦労する点はありますか?

近藤 弊社に限ったことではありませんが、保険金の支払額が年々増えていることです。理由は請求者の増加というより医療費や自動車修理費の上昇です。医療費など1年で10%近く上がっているように感じます。

 人件費などが理由のいわば物価の上昇ですが、同じ率だけ保険料は上げられないので他社さんも困っていると思います。

 また、ベトナムでは日本や先進国と異なり、保険会社同士でお客様の情報が共有されません。そのため保険料が上昇した場合は、他社で加入すれば安くなるケースが生まれます。加えて、新規顧客を対象に値引きをする企業もありますから、保険会社を変えるお客様が多いのです。

 ただ、弊社のような日系企業からベトナム企業や外資系企業に移るお客様の中で、相当数の企業が戻ってきています。日系企業は総じて継続的な長いお付合いを考えていますから、そうしたサービスや配慮が評価されるのだと思います。

―― 今後の計画を教えてください。

近藤 法人向けの損保事業は当然として、パートナーシップビジネスを広げたいです。支払う手数料は増え、講習やキャンペーンなどの経費も掛かるでしょうが、それでも販路の拡大は重要課題です。

 それと、オンライン販売などデジタル分野の強化です。弊社はハノイとホーチミン市のほかにハイフォン、ダナン、フンイエン、ビンフックに事務所がありますが、とても全国はカバーできません。

 ベトナム全土への販売チャネルという意味でも効果的な手段であり、今後は社内のIT人材を増強するなど、事業を急ピッチで進めるつもりです。

MSIG Insurance (Vietnam)
近藤賢一 Kenichi Kondo
大学卒業後、住友海上火災保険株式会社(当時)に入社。法人とリテールの営業職に携わった後、イギリスに駐在。帰国後にフィリピン駐在を経て、シンガポールにてASEANとオセアニアの営業推進に従事。2020年4月より現職。