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ベトナムニュース【社会】マンションのペットをめぐる「大論争」

(C) VNEXPRESS

3か月前、チャン・ガーさん(28歳)の住むホーチミン市2区のマンションで、犬と猫のマンション内での飼育を認めるか否かの住民会議が開催された。

その結果、住民の76%がマンション内で犬や猫を飼う場合は、マンションの管理委員会が定めたルールを厳格に守るべきと回答した。このマンションのペットの飼い主が守るべき規則には、1戸につき2匹まで、ペット1匹につき500万VNDを供託金とする、ルールに違反した場合の罰金をそこから引き落とす、ペットごとに識別コードを付与するなど11のルールが存在する。このルールの中では5つが飼い主がすべきこと、4つがしてはならないことになっている。

「これは、住民たちの間での根強い論争の末に私たちが辿り着いた解決策です。SNS上のグループでは、この話題が出るたびに”大きな戦争”が勃発し、互いに非難の応酬となり住民を分断してきました。この問題をこれ以上放置することはできません。」とマンションの管理委員会の代表は語る。

ガンさんによると彼女の”可愛い家族”は、決まった時間に決まった場所でトイレをするように躾けられている。マンションを昇り降りするときは、周りの住民に影響が無いように貨物用のエレベーターを使用し、犬を腕に抱くか専用のケースに入れている。

そのため、マンションの住民会議で承認されたルールを読んで、ガンさんはショックを受けた。7月にガンさんは海外に出張し、帰国した時にはルールが決まっていた。面倒を起こしたくないのでガンさん夫妻は、4歳のコーギー犬のために、デポジットを払いカードを受け取った。

(C)  VNEXPRESS

ガンさん夫妻が夕方に犬の散歩をするときは、以前ほど快適ではなくなった。規定によれば、ガンさん夫妻のペットの犬は外出する際に口輪をつける必要があり、以前のようにマンションのロビーを通り抜けたり、芝生の上を走り回ったりすることはできない。ペットの飼い主の行動は全て警備員と監視カメラによって厳格に監視されている。

「うちの子は鼻が長いですがそれでも口輪をつけると息苦しそうです。他の家の鼻の短い子たちは、もっと苦しそうで拷問としか思えません。」とガンさんは話す。

マンションのルールが公布されてから、ペットの登録が済んでいない飼い主の住民は、マンションの昇り降りの際に警備員に停められて、言い争いとなる。その様子がSNS上に投稿されて、また新たなペット論争に発展した。

ガンさんのように新しいルールに苛立つ人もいれば、ゴー・ティンさん(38歳)のように賛同する人もいる。「このようなルールはもっと前から実施すべきでした。」とティンさんは話す。

ティンさんの隣人は犬を飼っている。ティンさん夫婦が赤ちゃんをやっと寝かしつけたら犬が大声で吠え、驚いた赤ちゃんが泣きだすということがこれまで何度もあった。さらに、赤ちゃんが床を這っているときに口輪も付けていない隣の犬が家の前を走り回ることも何度もあった。ティンさんは、もしその場に誰もいなければ、赤ちゃんがかまれて狂犬病になるのではないかと心配していた。

ガンさんのマンションのようにペットをめぐる住人の争いは、都市部のマンションではよくある話だ。VnExpressがハノイとホーチミン市のマンションの住人30人を対象に実施した調査によると、90%の住民が、自分のマンションではペットが禁止されているが、実際にはペットを飼っている住人がおり、住民同士の諍いの種となっていると回答した。

ホーチミン市社会人文科学大学、都市研究学部のチューン・ホアン・チューン部長は、マンションにおけるペットの飼育に関する論争は、他の問題と比べれば大きな問題ではないと指摘する。しかし、マンションの自治会や管理委員会が適切に対応しないと大きな問題に発展する可能性もある。

チューン部長は、このような論争の原因は、一部のペットオーナーの意識が欠如しているために、他の住民の生活に影響を与えていることにあると指摘する。

ガンさんのマンションの管理委員会の代表者もこの考えに同意し、ペットを飼っている人がすべて共有スペースのあり方を理解しているわけではないと指摘する。エレベーターや共有スペースに犬や猫の糞が頻繁に現れ、他の住民の怒りをかっている。マンションのスタッフや警備員は、ペットの糞を始末する責任はないが、それでも掃除せざるを得ない。

ニャーベー県のマンション管理委員会のメンバーであるフィン・フー・フーンさんは、自分の住むマンションはペットが禁止されているが、エレベーターの中やロビーで頻繁に犬や猫の糞が発見され、住民の不満の種となっていると語る。

「マンション内でペットを飼うのはとても迷惑です。臭いや鳴き声の問題がありますし、大型犬ならとても危険です。もし、自分の思い通りに生活したいのなら、マンションではなく一軒家に住むべきでしょう。」とフーンさんは話す。

飼い主の意識の問題に加えて、ベトナムのマンションは公共空間が少なく、住民の密度が高いことも問題だとチューン部長は話す。マンション開発の投資家は、犬や猫のためのスペースに配慮することは殆どないので、飼い主はペットを早朝や夕方に路上や公園に連れ出して排泄させることになる。「隣人がペット好きの場合もありますが、それでも生活環境に悪影響が出れば嫌がるでしょう。」とチューン部長は話す。

チューン部長の意見は、2019年の住宅国勢調査と2020年の都市統計年鑑のデータと一致する。ハノイの人口密度は、予測の2外近く伸びている。各区の平均人口密度は1万833人/㎢だ。特に歴史ある市内中心部は人口密度が高く、基準を大きく上回っている。この地域では2030年までに人口を80万人まで減少させる必要があるとしているが、現時点では120万人以上の人口を抱えている。

さらに、統計によるとホーチミン市の人国密度はハノイよりも高いとされている。

ガンさんが住んでいるマンションの管理委員会代表者は、建物を建てる際に投資家は、ペットのための公共スペースやインフラを考慮していないことを認めている。「法律上も、マンションのルールでもペットは禁止されていなかったので、以前は住民の自由でした。今回のルールによって急に規制されるようになってペットの飼い主たちは気分を害しているようです。」と管理委員会の代表者は語る。

チューン部長によるとマンションは、一軒家とは違い多くの住民が共同生活をする場所なので、犬や猫を飼うことは、衛生面や環境面で適切とは言い難いと指摘する。各家庭のペットが伝染病を引き起こしたり、住民に噛みついたりする可能性があり、特に幼い子供のいる家庭は神経質になる可能性がある。

VnExpressが400人を対象に実施した調査では、回答者の63%がマンションでのペットの飼育は絶対に禁止すべきと回答した。回答者の35%は、他の居住者に影響を与えないという条件付きでマンションでのペットの飼育に同意すると回答し、ペットは個人の権利だとして全面的に飼育を認める意見は2%しかなかった。

チューン部長は、もしマンションでのペットを許可するのであれば、適切な安全管理基準が必要で、犬や猫の活動に適した場所に専用エリアを配置する必要があると指摘する。各マンションの管理委員会は、危険を減らし景観や他の住民の生活に影響を与えないようにするために、ペットの行ける場所を規定しなければならない。当然ながら、このようなルールの設定には住民の過半数の同意が必要になる。

チューン部長が提案したようなペットの飼育方法に関するルールを制定したガンさんのマンションの管理委員会代表者は、ルール適用当初は、反対意見も出るだろうがしばらくすれば、彼らもルールの効果を実感し適応するようになると信じている。

ニャーベー県のフーンさんのマンションでは、ペットに関する激しい議論の後、10月末に会議を開催し、投票によってマンションでのペット飼育の是非を決定することになった。

「実際、マンション内では理性よりも情緒が優先される場合もあります。住民のおばさんは、私に「私は年を取って犬しか友達がいないの。もしペットが禁止なんてことになったら、淋しいわ」と言いました。」とフーンさんは話す。もし住民の51%がペットの飼育に同意すれば、フーンさんと管理委員会は、飼い主の意識を向上させ、住民同士の諍いを避けるためにルールを設定する必要がある。

同じ10月末にガンさん夫妻は、マンションのペット飼育ルールに納得できないので、現在のマンションを引き払い引っ越す予定だ。

「ペットが買えるということで以前の家からこのマンションに1年以上前に引っ越してきましたが、今は以前のように快適なマンションではなくなりました。」とガンさんはため息をついた。

出典:11/10/2022 VNEXPRESS
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