受注量が減り、製造原料が不足しているため、多くの工場は年末にかけて新規に労働者を採用するのではなく、延べ数千人規模の労働者を削減しなければならなくなっている。
10月上旬にホーチミン市クチ県で有名ブランドの靴を製造しているVietnam Samho社は大口の注文が打ち切られ、工場の稼働が30%も下がり、3000人の従業員の仕事が無くなった。一部の従業員は別の工場へ配置転換されたが残りの従業員は手持無沙汰の状態になった。10月中旬にこの会社は、ホーチミン市労働・傷病兵・社会局に対して1400人の従業員の解雇案を提出したが、今のところ回答は出ていない。
同社のグエン・タイン・アン労働組合長は、今年の初めに工場は多額の費用をかけて1500人の従業員を新たに採用したが、現在状況は完全に逆転していると話す。「会社は従業員を減らしたくはありませんが、現在の状況を補うだけの新規受注を探すことは非常に難しい状況です。」とアン組合長は話す。
従業員は適切な選択をおこなえるように工場の生産状況について通知を受けることができる。それによって、200人の従業員が10月分の給料を満額受け取ることを条件に自主的に退職届を提出した。残りの従業員は会社と契約の保証条件を交渉したり、政府機関からの解決案を待っている。
アン組合長によると人員削減の対象となっているのは、今年入社したばかりの従業員が多い。規定によれば、これらの従業員は会社からの退職手当も、失業保険からの支払いも受けることが出来ない。「彼らは非常に困難な状況に陥るでしょう。」とアン組合長は話す。
同じくホーチミン市ビンタン区にあるT.H社も過去2か月新規の受注案件が無かったため、12月までに1400人の従業員を削減する計画を立てている。同社は100%台湾資本の会社で、主にヨーロッパ市場向けに靴を製造しており、工場には1800人以上の労働者を抱えている。
現在、区の労働組合と同社の労働組合は規定に基づき、従業員の給料やテトボーナスを完全に実施することを求めて、企業の経営陣と交渉をおこなっている。労働組合側は、会社に対して妊婦や幼い子供を育てている従業員の解雇を行わず、必要な場合は、従業員の職探しをサポートするように求めている。
上記の2社は、受注減によって従業員の削減を余儀なくされている多くの企業の中の一例に過ぎない。ホーチミン市労働組合の政策法務部長であるグエン・タイン・ドー氏によると、現在、縫製、履物、電子部品の製造工場は、原材料の確保が難しく製品を出荷できないために困難な状況に陥っている。各工場は、従業員の作業を定時で終わらせ残業は行わず、ローテーションで休暇を与えたり従業員の削減をおこなっている。
「ホーチミン市労働組合は、各地方自治体に対して対応策を検討するために地域内の雇用状況を詳細に報告するよう求めています。」とドー部長は話す。一部の区や県の報告では、1000人以上の従業員を削減した企業もあれば、数百人、数十人規模で削減した企業もある。
ホーチミン市雇用サービスセンターのデータによると、10月だけで1万440人の失業者が失業保険の申請をおこなっている。2022年10月までの失業者数は12万8000人近くに達しており、前年同期と比べて26%も増加している。
ホーチミン市ビンタン区のタンタオ工業団地内にあるTashuan社でも約100人の従業員が失業の危機に直面している。新規の注文が無く財政的に厳しいため、会社は10月24日以降の従業員の出勤日を週に数日としてローテーションを組むことを決めた。また、この会社では11月5日以降、新たな注文が入るまで2か所の工場を閉鎖すると通知している。
会社側の説明では、従業員の仕事を確保するため、これまでに経営陣が新たな仕事の注文を受けるための努力を続けてきたが、上手くいっていない。その結果、この工場は3か月間稼働を停止せざるを得なくなった。この期間、会社を辞めたい従業員には会社が社会保険の手続きをサポートする。別の仕事が見つからない従業員に対して会社は基本給の50%に相当する250万VNDを毎月支給する。ただし、3か月経っても新しい注文が入らない場合、会社は規定に基づき従業員を解雇する。
労働者の削減は極力避けたい事態であり、多くの企業が頭を痛めている。ホーチミン市7区タントゥアン輸出加工区にあるVexos Vietnam社のファン・ティ・チャウ総務部長は、この1ヶ月工場は原材料不足により商品を出荷できていないと話す。現在の従業員数を維持するのであれば、労働者の残業時間は以前より少なくなる。
チャウ部長によると会社の中には必ず一定の流動人材がおり、自主的に退職届を出す人もいる。そのため、会社は期限までに自主退職した従業員には2か月分の給与を支給するとしている。会社に留まるか出ていくかは従業員の選択次第となる。会社は、退職した従業員の代わりになる従業員は採用せず、必要な業務時間を残った従業員の残業時間に充てる考えだ。
「しかし、経営陣は従業員の3%までしか退職を認めないようです。工場は、仕事を確保し、従業員の収入を維持し、労働者を残すために操業を続けています。」とチャウ部長は話す。
ホーチミン市企業発展促進センターでタントアン輸出加工区の職業紹介コンサルティングを担当するフイン・ティ・ホン氏は、例年の同時期に比べて企業の求人需要は20~30%減少していると話す。例年、この時期になると各工場は多くの受注を抱え残業時間も長くなり、採用活動を活発に行い、更に期間労働者まで採用していた。しかし、今年は多くの工場で定時の8時間労働となっており、受注減や原材料不足によって従業員の削減をおこなう工場も出ている。
ホン氏が相談を受けたケースでは、会社から労働契約を終了されたケース以外に、多くの労働者が残業が少なくなり収入が減ったことを理由に自主的に退職していた。ホン氏によると現在の企業の苦境は特定の企業ではなく業界全般に広がっており、残業時間を維持できている企業は少ないため、労働者に対して現在の状況では新しい職場を見つけることは難しく、見つかったとしても状況はほぼ同じであることを理解しておく必要があると注意喚起をおこなっている。労働者は、残業時間が減ったことによる収入不足を補うためには、レストランや配車アプリなど工場以外の仕事を副業で行う必要がある。
従業員をできる限り維持したいというのは、クチ県で約2000人の従業員を抱えているTriple社も同様だ。同社のグエン・ダック・トーイ組合長によると、同社の受注量は減少しており生産を縮小しなければならなくなっている。しかし、同社は管理職30人を削減しただけで、労働者の雇用は維持している。「今年の初めに労働者の募集に苦労した経験から、工場は注文が回復するまで労働者を維持しておきたいのです。」とトーイ組合長は話す。
出典:30/10/2022 VNEXPRESS
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