ベトナム観光局のレポートによればテト休暇期間中の観光客数は前年から50%近く増加したが、観光収入は30%減少した。この原因としては、旅行トレンドの変化、買い控え、統計手法の問題などが考えられる。
ベトナム観光局のレポートによれば、今年のテト休暇期間(1月20日から26日)の国内旅行者数は約900万人で昨年から47.5%増加した。しかし、このうち宿泊を伴う旅行者は200万人にすぎず、37.5%減少し、宿泊施設の平均稼働率は45%に留まった。観光収入も17兆5000億VNDで、前年から約30%減少した。
旅行業界の専門家であるVietcircle社のファン・ディン・フエ社長は、2022年末から2023年初めにかけて観光客数は増加の傾向を見せていたが、ツアー旅行客や長期宿泊客は減少し、観光収入と宿泊施設の稼働率が低下したと分析する。観光局のレポートもこの分析を裏付けている。
「明らかに個人旅行の割合が増加しており、旅行者の支出額を算出することが困難になってきています。」とフエ社長は話す。フエ社長によれば、国内旅行では近場が好まれ、2泊以上は滞在せず、自然と触れ合える郊外の観光地が人気になっている。
フエ社長は、一つの例としてニンビン省への旅行を挙げる。今回のテトのニンビン省への旅行者数は、昨年と比べて25倍も増加したが、殆どの観光客はハノイから車で1時間程度のバイディン寺院などを訪問する日帰り客だった。ホーチミン市から近いダラットやブンタウも似た傾向がみられた。一方でメコンデルタ地域の各省の場合、観光地が農業、農村、寺院などに関連していることもあって、旅行者が増加した。
また、景気が完全に回復していないことによる買い控えの兆候も明らかにみられる。新型コロナへの警戒感は依然として残っており、あらゆる分野で購買力は以前の状態までは回復していない。
Exotic Vietnam社のチューン・ホアン・フーン社長は、新型コロナの感染拡大以降、旅行需要は非常に大きいものの、観光客の財布のひもが固くなっていると指摘する。「米を量って塩漬けをつまむ(状況に応じてバランスをとるの意)」ということわざを引用してフーン社長は、本当に財力のある旅行客は殆どが海外旅行を選択していると説明した。これは、多くの大手旅行会社の旅行ツアーのうち、海外旅行ツアーの登録者数が70%以上を占めていることからも明らかだ。
一方でフエ社長は、現在ベトナムには国内旅行者数に関する共通の統計基準がまだ存在しない点も問題だと指摘する。多くの地方自治体が、どんぶり勘定の数字を挙げてくるため、統計の精度は高くない。
ホーチミン市観光局旅行管理室の元副室長であるグエン・ドゥック・チー氏もこの意見に同意し、統計のデータ見れば明らかだと指摘する。今回の統計では、テト期間中の国内旅行者のうち宿泊施設の利用者は5分の1しかおらず明らかにおかしな数字になっている。
「実際には旅行社の宿泊割合がそんなに低いことはありえません。恐らく、900万人の国内旅行者数の中には帰省する労働者などが含まれてしまっているのでしょう。グエンフエ通りの新年の花飾りを見に来た述べ100万人以上も旅行者数に足し合わせたりすれば、統計の数字がおかしくなるのです。」とチー氏は指摘する。
チー氏は、通常宿泊を伴う旅行が全体の50~60%だと類推するなら、宿泊者数約200万人から国内旅行者の数は400万人程度だと推測されると説明する。もし観光局の統計のとおりだとすれば、9人が旅行に行ってそのうち2人しか宿泊しないということになり、残り7人は全て日帰り旅行かキャンプ旅行の旅行者だということになり現実的ではない。
旅行業界の市場調査とデータ分析を専門におこなうOutbox Consultingのダン・マン・フック氏は「ベトナム人旅行者の国内旅行需要は2022年と比べて減少傾向がみられており、今回の統計データは正確性に欠けると思われます。」と指摘する。
「旅行者数が増加しているのに観光収入や宿泊者数が減少しているのは、統計データが不正確なことが原因だと思います。」とフック氏は指摘し、多くの地方自治体の観光局がテト期間中の娯楽施設訪問者を旅行者数にカウントしているのではないかと話す。
「これは、ホーチミン市のような大都市に国内で最も多くの旅行者がいることの説明になります。なぜなら、動物園に遊びに行った人も旅行者にカウントされているのですから。このこと自体は間違いとは言い切れませんが、ベトナムの旅行業界を分析する際に誤った方向に導く可能性があります。長期的には、我々は統計手法を見直す必要があるでしょう。」とフック氏は提案する。
出典:02/02/2022 VNEXPRESS
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