ベトナム商工省によれば、ベトナムの自動車販売価格は、タイやインドネシアの約2倍で、アメリカや日本の価格よりも高く、その理由は税金と各種費用にある。
商工省が最近財務省へ送った報告書の中で、ベトナムの自動車産業の発展を阻害する要因についての言及があった。商工省によれば、現在ベトナムには自動車の製造、組立企業が40社以上存在し、9シート以下の自動車の国内需要の約70%を賄える生産能力がある。
世界的な大手自動車メーカーもベトナムで製造と組立活動をおこなっており、その一部には、グローバル製造チェーンに深く組み込まれているものも存在する。また、トラックやバスにはタイやフィリピンに輸出されているものもある。
現在、ベトナム国内の自動車製造能力は、32万3892台に達しており、商工省によれば、2035年を見据えた2025年までの自動車産業発展戦略で設定された目標の22万7500台の1.4倍以上になっている。
国内で製造・組立された自動車台数は、国内需要の65~70%を満たしている。しかし、商工省は、ベトナムの自動車市場規模は大規模な製造をおこなうには小さく、現地調達率が低く、販売価格が高いと指摘している。
現在、ベトナムの自動車販売価格は、タイヤインドネシアの約2倍で、アメリカや日本など自動車産業が発展している国よりも高い。
商工省によれば、ベトナムの自動車販売価格が他国より高い理由は、税金と手数料にある。法律の規定により、自動車には輸入税(国内で製造組立されたものを除く)、特別消費税、付加価値税など各種税金がかかる。その他に、自動車には登録手数料、車検費用、道路整備費用、ナンバープレート登録料、自賠責保険料など様々な費用が発生する。
商工省が挙げたもう一つの理由は、国内の製造量が少なく、企業の設計効率をはるかに下回っていることだ。国内で製造・組立されている自動車の品質は輸入品より劣っており、原材料のサプライヤーや部品メーカーなどの裾野産業も整っていない。
2022年末までに、ベトナム国内の自動車メーカーの製造と組立を合わせた供給能力は75万5000台に達した。このうち外資系企業が35%を占め、残りの65%は国内メーカーとなっている。
商工省によれば国内の自動車製造・組立業者は、自動車業界の基準を満たせておらず、殆どが簡単な組立作業に留まっている。製造ラインも主に溶接、塗装、組立、検査の4つの工程で構成されている。
現時点で、国内製造比率はバスが60%、トラックが34~40%で目標を達成しているが、自動車は25%で、目標を5~10%下回っている。
商工省は、国内の自動車産業の成長が阻害されている理由として、内的要因と外的要因があると指摘する。具体的には、国内需要が限定的な中で、多くの組立業者と様々なモデルが国内市場に分散して存在していることが、メーカーが大規模な製造ラインへ投資することを難しくしている。また、国内の裾野産業が十分に発展しておらず、海外の自動車製造チェーンに参入できていない。
現在のベトナムの一人当たりのGDPは、モータリゼーションが起きるとされる4000USDには達しておらず、大多数の国民が車を所有するレベルには至っていない。一方で、周辺のタイ、インドネシアなどは、自動車関連の大規模投資プロジェクトの誘致政策を進めており、ベトナムの自動車産業への競争圧力を強めている。
さらに、9シート未満の自動車の場合、現地調達できるのは、タイヤ、シート、ミラー、ハーネス、バッテリーなどに留まり、現地調達化率は充分とは言えない。一方で、自動車部品の主要原材料となる特殊鋼、アルミニウム合金、プラスチック、工業用ゴムなどの80~90%は輸入に頼っている。金型の原材料も殆どが輸入品だ。自動車の製造、組立、修理のために毎年、各企業は約50億USDの部品を輸入しているとみられている。
「国内の製造能力は停滞したままである。現在のベトナム政府の自動車産業発展政策は現状にそぐわず、自国生産に積極的ではなく輸入品に依存しているため、製造の主体性と競争力が低下している」と商工省は評価している。
自動車産業へのFDI誘致において、外資企業が現地調達率を高めるための厳格なメカニズムが存在せず、組立のみに焦点が当てられている。また、国内の交通システムの脆弱性が市場の需要に大きな影響を与えており、経済の自動車使用需要は拡大していない。
しかし、ベトナムは、東南アジアにおける潜在的な自動車市場であり、今後年間平均20~30%の成長が見込まれている。2020年にベトナムは、フィリピンを抜いて、ASEANでタイ、インドネシア、マレーシアに次ぐ第4位のマーケットとなっている。
出典:09/03/2022 VNEXPRESS
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