ベトナムが中所得国の罠に陥らないためには、生産性向上のための構造改革と積極的なイノベーションが必要だと専門家は指摘する。
30年に及ぶ改革と発展により、ベトナムは貧困国から脱却し、上位中所得国の水準に近付いた。ベトナムは2030年までに上位中所得の新興国となり、2045年には高所得の先進国となることを目指している。
「2024年から2030年は、ベトナムの変革にとって決定的に重要な時期になります」と国民経済大学のファン・ホン・チューン学長は、2月22日に開かれた”ベトナム発展の30年:過去を見つめ新たな課題へ取り組む”と題した講演で述べた。
実際のところ、ベトナムの課題はいかにして急速かつ安定した成長を続け(今後20年間で年平均7%の成長)、高所得国グループに仲間入りできるかにかかっている。そのためにベトナムは、これまでにタイ、マレーシア、インドネシアなど多くの国が陥った中所得国の罠を避ける必要がある。
早稲田大学のチャン・バン・トー教授の分析によれば、ベトナムの経済発展は非常に目覚ましいが、高度発展段階(10年以上にわたる年平均10%の成長)は経験していない。その原因は、ベトナムの産業構造が力強い発展を支えるのに十分な強さを備えていなことにある。工業化についても、人口黄金期にあった東アジア諸国の状況と比べると総体的に低いレベルに留まっている。
工業製品はグローバルサプライチェーンとつながっているが、グロバールサプライチェーンに参入できるほどの高品質製品が製造できていない。ベトナムの役割は組立て工場とみなされており、中国や韓国から部品や半完成品を輸入に大きく依存している。
日本の政策研究大学院大学(GRIPS)の大野教授も多くの点でベトナムに中所得国の罠が顕在化しつつあると指摘する。具体的には、平均所得水準の成長の鈍化、エンジニア不足、起業家、科学技術者の不足、労働生産性の低さ、中程度の全要素生産性(TFP)、FDIに対する過剰な依存、グローバルサプライチェーンへの参入率の低さなどが挙げられる。
そのため、設定した目標を達成するためには、ベトナムは生産性向上に向けた構造改革を促進する必要があるとトー教授は指摘する。具体的には、資本の蓄積と技術革新を促進するために、非公式の事業体を公式の事業体として登録して、企業規模を拡大させていくことが必要だ。
同時にベトナムは、資源を効果的に配分し、構造改革を促進するために生産要素市場の改革と発展を進め、エンジニアの育成や研究開発活動(R&D)の奨励に重点を置く必要がある。
トー教授は、今後10年間でベトナムは工業化を推し進め、産業構造を変革し、生産性を向上させるために資源を効率的に分配できる制度への改革をおこなう必要があると指摘する。同時にベトナムは、2030年代以降に訪れるイノベーションによる成長段階に備えておく必要がある。
そのためにベトナムは、R&D/GDP比率を現在の0.7%から引上げ、民間企業や外資系企業による積極的なR&D活動を奨励する政策を講じる必要があるとトー教授は述べた。
グローバル化が進む中で構造改革と継続的な生産性向上に向けた取り組みによってベトナムは国際市場の中で競争力を高めることが出来るようになる。トー教授はさらに、これはベトナムがサンドイッチ的立場、つまり自国より生産コストが安い国と競争することも出来ないが、先進国とも競争できないという状態を避けるための条件でもあると指摘した。
大野教授は、ベトナムが中所得国の罠に陥らないようにするためには、経済に精通し、リーダーシップの取れるダイナミックな指導者が必要だと述べた。また、各政策の実現においては、有能かつ献身的でクリーンな技術官僚の存在も必要不可欠だと大野教授は付け加えた。
出典:22/02/2024 VNEXPRESS提供
上記記事を許可を得て翻訳・編集して掲載