Z世代が労働力の中で占める割合は日増しに高まっているが、製造業への関心は低く、多くの工場では、社員の若返りに苦労している。
テト以降、ホーチミン市クチ県にある100%外資企業であるOasis Garment社は多くの新規注文を受け取った。そのため、同社は、注文を管理するスタッフを採用する必要が生じた。顧客の多くは海外の企業なので、採用するポジションのスタッフには充分な英語のスキルが求められる。同社では、未経験も可とし、新卒でも1300~1400万VNDの給与を支払うという条件を提示した。また市内中心部からの送迎車両も準備されている。
同社の担当者によれば、ホーチミン市と近隣の省からも応募者を集めたいと考え、求人情報を求人サイトやSNSなどに幅広く掲載したが、Z世代(1997~2012年生れ)からの応募は少ない。
Z世代は、その前の世代と多くの違いがあることを認識している同社では、福利厚生に力を入れ、作業中の服装規定を緩め、1~2年後の昇進の道筋を明確に示すようにしているが、求めるような人材からの応募はきていない。「各工場は、退職する労働者の補充や代替として若い人材を切実に必要としています」と担当者は話す。
「製造業は、企業側の問題だけでなくZ世代がこの業界に興味がないという理由で、若い人材の確保に苦労しています」と労働市場調査の分野で最大手のAnphabe社のタイン・グエン社長は話す。
2023年にZ世代の1万4000人以上を対象に実施された就職トレンドに関する調査では、特に人気が高かったのが飲食、リゾート、金融サービス、小売り、貿易などの分野で、その傾向は年々高まっている。Z世代が好む職種は具体的には、販売、営業、経理、金融、投資、カスタマーサービスなどとなっている。
「製造業は、Z世代の選ぶ働きたい業種のトップ10に入っていません」とタイン・グエン社長は話す。
ホーチミン市内で様々な事業を展開する民間企業グループで長年人事を担当してきたブイ・バン・ズイ氏は、製造業とZ世代が折り合えないのには多くの理由があると指摘する。
ズイ氏によれば、製造業で働く従業員は、工場でもオフィスでも製造ラインを中心として、決められたシフトの労働時間を遵守し、規律と原則を守らなければならない。殆どの工場は土曜日も稼働しており、急ぎの注文があれば納期を守るために残業も厭わない。「Z世代は柔軟な労働時間を好む傾向にありますので、サービス業に比べて製造業は不利な立場に立たされています」とズイ氏は話す。
企業で15年近く採用活動をおこなってきたズイ氏は、製造業は生産性を向上させ、価格競争力を高めるために常に改善を続ける必要があると指摘する。そのため、経営者は、企業が発展するために人材が安定することを望んでいる。しかし、若い世代の従業員の会社への愛着度は極めて低い。多くの工場は厳格なルールに基づいてシフト制で働くことが求められ、給料は安定しており徐々に上がってはいくものの、サービス業に比べて初任給は低く、見た目も”おしゃれ”ではないので若者には魅力的に映らない。
ズイ氏の指摘内容は、Anphabe社の調査において、回答者の70%以上がワークライフバランスを重視し、快適で楽しい職場と親切な同僚を求めていると回答したことと一致している。この世代の最大の目標は生活するのに十分な収入を得て、貯蓄したいというものだ。一方で、Z世代の平均勤続年数は僅か2.2年というデータもある。
社会生活研究所のグエン・ドゥック・ロック所長は、製造業とZ世代の求めるもののギャップによって、工場は、従業員の世代交代を進めることが出来ないという苦境に陥っていると話す。
ロック所長は、統計総局の報告書のデータを引用して、2019年のZ世代の労働年齢人口(15歳~24歳)は約1300万人だったが、2025年には、Z世代が労働人口全体の1/3を占めるようになると指摘する。Z世代は国内の労働市場に大きな影響力を持つようになり、徐々に前の世代との入れ替わりが進んでいる。
そんな中で、製造業と建設業は、依然として経済全体において重要な役割を果たしている。政府は、2025年までに国の経済構造における製造業と建設業の占める割合を43~44%とし、2035年には40~41%としたい考えだ。2025年までにハイテク産業の製品とハイテク関連製品の価値はGDPの約45%を占め、その後は50%以上を占めるようになると予測されている。
「若者を製造業に引き寄せるためには、育成とキャリア指導の戦略が必要です。これは、政府の経済目標を確実に達成させることにも貢献します」とロック所長は話す。
Anphabeのタイン・グエン社長は、Z世代の代表的な特徴として、柔軟性、個人主義、オープンマインドがあると話す。そのため、各工場はZ世代を変える方法を探すのではなく、ルールを緩和し、どうしても変更できない厳格な規定については、それを補うメリットを提示する必要がある。
工場は主に製造ラインに従ったシフト制で仕事をするが、それでも時間通りに会社に来なくてもよいリモートで対応可能な仕事も存在する。それによって、管理者は、必要な作業内容を伝えて進捗を管理するだけで済む。
工場は送迎バスや社員寮を備えていることが多く、ホーチミン市内に家を持たない若い労働者に適しているともいえる。そのため、人事担当者は、双方が歩み寄れる方法を見つけ出す必要があると指摘する。「優秀な人材を探したいのであれば、企業は辛抱強くならなければなりません。なぜならZ世代と言うのは全く別の世代ではなく、X世代やY世代の自社の管理スタッフの子供達だからです。Z世代を育ててきた世代として我々は忍耐強く接し、徐々に育てていく必要があります」とタイン・グエン社長は話す。
出典:2024/04/17 VNEXPRESS提供
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