ホーチミン市からカイメップ港・バウバン・カントーを結ぶ貨物鉄道構想
ベトナムの旧ビンズオン省を拠点とする国営企業グループ「ベカメックス(Becamex)」は、ホーチミン市研究開発研究所と連携し、ホーチミン市中心部から南部の主要工業地帯や港湾を結ぶ鉄道ネットワーク構想を発表した。これは、地域の都市化、産業集積、物流効率化、環境負荷低減を視野に入れた国家的なロジスティクス改革の一環である。
工業団地と港をつなぐ「5万ヘクタール構想」
ホーチミン市に統合された旧ビンズン省と旧バリア・ブンタウ省及び、旧ホーチミン市の工業用地を再配置し、ベトナム南部に5万ヘクタール規模の産業ベルトを形成する。さらに、ドンナイ省も産業ゾーンをビンフオック側にシフトさせる方針で、これによりベトナムから東南アジア全域におよぶ生産・加工・輸送のハブ構築を目指している。
「物流なしでは意味がない」:輸送インフラ整備が急務
同研究所のチュオン・ミン・フイ・ブー所長は、「工業団地を開発しても、港湾や空港への輸送インフラがなければ意味がない」と指摘。産業競争力強化のカギは鉄道による接続性にあると強調した。
ベカメックスが提案する鉄道3路線構想(第1期)
① TP.HCM〜カイメップ港(約86.4km)
- 経路:ホーチミン市中心部→ドンナイ省→カイメップ港
- 設計:旅客160km/h、貨物120km/h
② TP.HCM〜バウバン工業団地(約52km)
- 経路:ホーチミン市中心部→西北部バウバン工業団地
- 設計:旅客160km/h、貨物120km/h
③ TP.HCM〜カントー(約174km)
- 経路:ホーチミン市中心部→タイニン省→ドンタップ省→ビンロン省→カントー市
- 設計:旅客200km/h、貨物160km/h
「グリーン・ロジスティクス」への転換
提案された路線はコンテナ輸送用の貨物鉄道として設計され、港湾・工業団地・都市を一体化させる。毎年170万トンのCO₂削減と、約22億ドルの物流コスト削減が見込まれる。
ブー所長は「TOD(公共交通指向型開発)を活用した都市成長モデルの確立」も視野に入れ、国内外企業の連携を重視する。とくに、国家鉄道法(決議188)では国内企業の参加を優先する方針が掲げられており、ベカメックス(Becamex)や他のベトナム企業の共同出資によるプロジェクト形成が期待される。
南部の「輸出競争力」と「環境問題」の同時解決へ
ベカメックスは、トラック輸送に比べてCO₂排出量が10分の1に抑えられる鉄道輸送の利点を強調しており、カイメップ港が全国コンテナ取扱量の25%、南部全体の50%を占める中、渋滞・高コスト・環境負荷という三重苦の打開策として鉄道構想の早期実現が期待されている。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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