ベトナムの主要水産物であるマグロをはじめ、多くの海産物が米国市場で輸入禁止の危機に直面している。企業や漁業者がこの難局をどう乗り越えるかは、依然として大きな課題である。
米国の輸入禁止リスク
米国海洋大気庁(NOAA)は、海洋哺乳類保護法(MMPA)に基づき、ベトナムの12業種の漁業について「同等性」を認めないと発表した。これにより、2026年1月1日から対象となる水産物の米国輸入が禁止される可能性がある。
ベトナムは資料補完や規制整備、外交活動を続けてきたが、今回の決定は水産輸出業界と漁民の生計に大きな衝撃を与えている。
巨額の輸出額に打撃
ベトナム水産物輸出加工協会(VASEP)によると、2024年の対米水産物輸出額は約5億USDに達し、その中でもマグロが3億8700万USDを占めている。イカ、サバ、アジ、ハタ、タイなども輸出禁止の対象となる見通しで、米国市場の喪失は深刻な影響を及ぼす。
この措置は数十万人規模の漁業従事者や水産加工工場労働者の雇用に直結するだけでなく、ベトナム産水産物の国際的な信用低下にもつながりかねない。
原材料調達の難航
ベトナムの輸出水産物の多くは海外から輸入した原料を加工している。特にマグロは輸出額の70%以上が輸入原料に依存しており、米国に輸出される製品では75〜80%に達する。
しかし、原料供給国であるフィリピン、インドネシア、マレーシア、韓国、台湾なども米国から同等性を認められていない。このため、原料調達がさらに困難になり、競合するタイなどに比べて不利な状況となっている。
市場転換の模索
中部地方のある水産企業の経営者は「現状では輸出市場を他国に転換する以外に選択肢はない」と述べた。しかし、新規市場の開拓には長期の交渉が必要であり、即時の対応は難しいという。
VASEPは政府に対し、米国でのロビー活動を強化するための専門家招聘、関連省庁を交えた合同タスクフォースの設置、NOAAへの詳細説明要請などを提案した。
長期的な対応と業界への呼びかけ
VASEPはまた、国際協力を通じた海洋哺乳類保護の強化、監視システムやデータ整備への投資、漁民への教育・研修の必要性を指摘した。
9月11日には各輸出企業にも緊急通達を行い、米国市場のパートナー拡大や代替市場の開拓、原材料調達の多様化を呼びかけた。最悪の場合に備え、企業は生産体制や市場戦略を柔軟に調整する計画づくりを進めるよう求めている。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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