ホーチミン市の行政地域統合により、ビンズン省やバリア・ブンタウ省への配送は、「市内送料無料」の対象に含まれるのか?専門家は、そのようにはならないだろうと述べ、物流コストの本質は変わらないものの、行政地域統合を契機に物流再編が進む可能性があると指摘する。
「供給網を優先、行政区分は後」
コンサルティング会社CELのパートナー、ジュリアン・ブルン氏は、行政地域の統合によって直ちに物流コストが下がるわけではないとしつつも、「供給網をまず考え、行政区分はその後に考えることになるでしょう」と強調した。
物流を一体的に設計することで、国際基準のカイメップ港やフーミー橋のようにこれまで潜在力はあるものの活かしきれていなかったインフラも有効活用できるようになる。新生ホーチミン市が港湾、空港、鉄道、道路、内陸港まで統合すれば、シンガポールのような競争力ある物流基盤に近づく可能性がある。
不動産の視点からみる「多極モデル」
不動産コンサルティング大手Cushman & Wakefield Vietnamのブイ・チャン氏は、行政地域統合により「ホーチミン市中心部」の定義が変わると指摘する。これまでの旧1区周辺だけを中心部とするのではなく、旧トゥードゥック市や旧7区、さらには旧ビンズン省や旧バリア・ブンタウ省を含めた「多極モデル」へ移行する可能性が高い。
このため物流は都市構造の「背骨」となり、多層的な物流ネットワークやラストマイル配送のスマート化が不可欠となっている。
「市内無料配送」は成立するか
統合後、旧ビンズン省や旧バリア・ブンタウ省宛ての注文が「ホーチミン市内無料配送」の対象となるのか、特にEコマースで注目が集まっている。
ブルン氏は「配送は決して無料ではなく、必ず誰かがコストを負担しているのです」と強調した。そのため、EC各社が送料無料を適用するのは、人口密度と注文密度が高い中心市街地に限られる。
元ラザダベトナムCEOのクリストファー・ベセリン氏も「配送コストは行政区分ではなく、配送密度に依存するのです」と補足した。注文数が多い地域では1件あたりのコストが下がる一方、少ない地域では高くつく。
「送料無料」より「低コスト・当日配送」へ
ブイ・チャン氏は、統合後のホーチミン市を複数の物流拠点に分ける案を提案する。旧ビンズン省を大型倉庫、旧バリア・ブンタウ省を港湾物流拠点、旧1区、旧トゥードゥック市・旧7区などをラストマイル配送エリアに位置づけることで効率化を図れるとチャン氏は主張する。
「配送は決して完全無料にはなりませんが、都市規模の拡大と合理的な物流設計により、当日配送かつ低コストに近づけるでしょう」とチャン氏は述べている。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
ベトナム進出支援LAI VIEN