急速に拡大してきたベトナムの外食産業が、今、大きな転換期を迎えている。
レストランやカフェが次々と生まれる一方、2025年上半期だけで約5万店が閉店したとの報告が、F&B(飲食)業界に波紋を広げている。
「朝に開店、夕方に譲渡」 競争激化するF&B市場
ホーチミン市で10年以上営業を続けてきたカフェブランド「Monkey in Black」が、最近になって最後の店舗を閉鎖した。
創業者のチャン・タイン・トゥン氏は「カフェ経営は簡単に始められるが、利益を上げ続けるのは難しい」と語る。
1店舗あたりの初期投資は約12億〜15億ドンに上るが、利益率は良くても年12〜15%で、運営を誤れば、すぐに赤字に転じるという。
同様に、ホーチミン市中心部の「MPAカフェ」も、開業から1年余りで10月末に閉店する予定だ。家賃は月5,000万ドン、しかし一日の売上は数十万ドンにとどまる。
「この場所は数年で何度も借り手が変わっています」とスタッフは語る。
こうした例は決して珍しくなく、“開店してもすぐ撤退”が業界で常態化している。
わずか半年で5万店が閉店 F&B業界に淘汰の波
調査会社iPOS.vnとネスレ・プロフェッショナルの共同レポートによると、
2025年上半期に全国で約5万店(全体の7.1%)が閉店した。
ホーチミン市とハノイでは閉店率が11%を超え、特に都市部での苦境が目立つ。
中小店舗だけでなく、タイの「カフェ・アマゾン」など外国ブランドも撤退を検討している。一方で、新規開業も3万店を超えており、「開店と閉店が同時進行する激戦市場」となっている。
顧客離れとコスト高 “人気店でも赤字”の現実
若年層の嗜好変化が早く、ブランドへの忠誠心も薄い。
「今日の人気ブランドが数か月後には忘れられる」と経営者たちは口をそろえる。
さらに、原材料費、家賃、人件費、税負担が上昇しており、値下げやキャンペーンをしても利益は圧迫される。
結果として「満席でも赤字」という店が急増している。
専門家「淘汰は自然な流れ」 生き残るのは“質”の高い店
ホーチミン市飲食協会のチャン・カイ・ミン・ニャット副会長は、
「5万店の閉店は異常ではなく、コロナ後の“自然淘汰”を示すものだ」と分析する。
小規模な屋台や低価格店は、経営ノウハウや資金力の不足から撤退を余儀なくされた一方、大手チェーンは安定した運営基盤で生き残っている。
別の業界専門家も「これは危機ではなく“再生のプロセス”だ」と指摘する。
多くの企業が自発的に規模を縮小し、効率化に取り組んでいる。
現在も約60%の店舗が営業を維持し、そのうち3割以上は売上が安定、
さらに28%が成長を続けているという。
「安さ」より「価値」 2025年のF&B業界は選別と再生の時代へ
消費者は支出を絞りつつも、信頼するブランドにはお金を使う傾向がある。
「安さは戦術であって戦略ではない」と専門家は強調する。
中価格帯(2万1,000~5万ドン)の市場が依然として主流であり、
2025年のF&B業界は“量の拡大から質の競争”へ移行しつつある。
※本記事は、各ニュースソースを参考に独自に編集・作成しています。
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