ベトナムビジネスならLAI VIENにお任せください!入国許可、労働許可証、法人設立、現地調査、工業団地紹介などあらゆる業務に対応します!お気軽にご相談ください!

ベトナムビジネス特集Vol146
使いたい!買いたい!
日本文具の市場価値

アイデアに富んだ機能性やデザインセンスで世界から注目される日本の文具。ベトナムでも日系メーカーの製品が広く販売されているが、ローカルや外資系など競合企業も多い。「日本文具の市場価値」を各社の取材から探っていく。

PLUS VIETNAM INDUSTRIAL
Director 三原俊也氏

機能性重視の魅力的な商品
ベトナムでの市場拡大戦略

 総合事務用品メーカーのプラスがベトナムに進出したのは1995年。海外初の生産拠点としてビエンホアで工場を稼働し、ステープラーや修正テープなどの文具を主に日本に輸出した。2010年にニョンチャックに第2工場を設立し、国内販売は2003年からを始めた。

 販売する商品はベトナムで開発したレバーアーチ式ファイル、ステープラーと針などの数アイテムで、輸出品をそのまま売り出した。

「2007年からベトナム人の営業職が加わり、修正テープなど商品も追加しますが、売上は伸び悩んでいました」

 2013年に三原氏が赴任。マーケティング部を作って綿密な調査を行い、ローカライズ専用の開発チームを作って企画開発プロジェクトを立ち上げた。決まった方向性は、余剰の機能を省いて価格を抑え、色やパッケージで訴求することだった。

 主力商品は3つあり、まずは海外販売の主力製品である修正テープ。当時は修正液や修正ペンが主流の中、商品のサンプリングやバイヤー・ディーラー向けのイベントを開催して便利さをアピール。商品開発ではテープの厚みを薄くして長さを伸ばし、お得感を出した。

 次にレバーアーチを代表とするファイルシリーズ。現代的なオフィスに似合うビビッドなカラー配色が特徴の「ハッピーカラーシリーズ」を販売した。このピンク、イエロー、ライトグリーン、ライトブルーの配色はほかの商品にも広がっていく。

 最後はステープラーやハサミなどの金属製品。ハッピーカラーを投入し、駐輪場や農園などステープラーのヘビーユーザーに向けてもアピールした。

 その結果、数年で売上はおよそ2倍に増加。修正テープはベトナムでの火付け役となったこともあってシェア1位と実感しており、各商品のラインナップも格段に増加していった。

「当時、ディーラー向けのカタログを作成した際は30ページでした。最新版は60ページ以上となり、商品数も格段に増えています」

「文具カフェ」を昨年オープン
日本製文具の魅力が満載

 近年では「純日本製」や「日本仕様」にも注力。東南アジアでは日本文具のブームが起きており、ローカライズされない本当の日本製を求める人が増えているという。

「2020年からクラシックな日本風ノートや高級文具キットなどを日本から輸入しています。ただ、価格が高いため、こうした商品を揃えた『文具カフェ』を昨年5月にホーチミン市に作りました」

 日本製品の機能性や使い勝手を知らせるには説明が必要になる。しかし、それをパッケージに載せると長くなる。そこでカフェの中の商品を実際に使ってもらい、その良さを伝えるのが狙いだ。その場でも購入できるがQRコードでECのShopeeやLazadaと連携させ、文具カフェのサイトでは他店舗では買えないユニークな日本製品なども販売している。

 また、日本仕様の商品シリーズ「ジャパンプレミアム」を開発。例えばハサミの「FITCUT CURVE」は従来の3倍の切れ味が特徴で、日本製には指に馴染む「低反発グリップ」と滑らかに使える「がたつき防止リング」が備わる。ベトナム仕様では後者の2つをなくして価格を下げているが、ジャパンプレミアムではがたつき防止リングを付けて仕様を変更している。ステープラーや数種類の修正テープもラインナップされている。

「パッケージを和風にして色はブルーで統一しました。本体に『PLUS』のロゴを入れたのはブランド力を上げるためです」

 商品はオフィス向けの業務用文具が中心だが、最近では中高生や子ども向けの商品もリリースしている。人気のポケモンシリーズの商品を増やしてセットでも販売したり、日本製の全自動鉛筆削りなどを用意して、顧客層を広げていく考えだ。

課題は一般消費者の認知度
文具は取捨選択の時代へ

 ユーザーに新しい商品へのシフトを促す試みもある。修正テープなら「WHIPER-V」から世界中で売行きが好調な「WHIPER-MR」へのチェンジだ。後者はローラーヘッドでスムーズに転写できるだけでなく、テープのリフィル(詰替え用品)部分が小さいので、詰め替え時に捨てるプラスチック部分が少なくて済む。環境意識の高いベトナム人は評価するはずだ。

「ベトナムではリフィルのことを知らない人が多いので、コンビニなどではフィリルも置いてもらうようにしています」

 このようにローカライズ製品を進化させながらも日本製品を紹介して、「日本の文具はすごい!」という感動を伝えていきたいという。そこで弱みと感じているのは消費者の知名度だ。バイヤーやディーラーなど卸業者の認知度は高いので、一般のベトナム人へのブランド力を上げていく。卸については全国の市や省のうち約9割には二次問屋を含めた販売網があるので、これを10割にすることが目標だ。

 子どもの数が増え、経済も向上しているベトナムで文具市場は拡大が見込まれるが、新型コロナでオンライン化が進んで同社でも業績が落ちた。しかし、ウィズコロナ後は必要なものは必要という認識が広がっており、今後は文具の取捨選択が始まると三原氏は語る。

「満足度の高い商品が生き残るでしょう。ベトナムでは地場企業に加えて中国、タイ、インド、ヨーロッパの各企業が進出していますが、弊社にも30年近い実績と経験があります。時代の動きに合わせながら先頭に立って走るつもりです」

KOKUYO VIETNAM TRADING
General Director 寺本信哉氏

販社を作って本格的に参入
コクヨのノートが北部で拡大

 文具や事務機器の大手メーカーであるコクヨの日本向けファイルの生産拠点として、2006年にハイフォンに設立されたコクヨベトナム。輸出専業のEPE企業だが、設立当時の工場責任者がコクヨの主力商品であるノートの販売を考えた。

 地元にあるノートはデザインも品質も良くなく、製本は背を糊で固める無線綴じではなく針金の中綴じや糸のミシン綴じが多かった。高品質なノートが売れると実感したのだ。

「ただ、ノートは各国でサイズや罫線などの仕様が異なります。実際、コクヨは中国とインドにも工場がありますが、それぞれの国で現地独自のノートを生産・販売しています」

 ベトナムでは国の特徴に加えて南北で使うノートが違う。北部はB5、南部はA5サイズがスタンダードで、罫線も北部は横線、南部は升目調だ。それでもノート用の機械を取り寄せて準備を始めた。

 2009年から大手の卸業者に国内輸出する形で販売をスタート。当初は日本式のシンプルなデザインと高価格が原因となって苦戦するが、2011年に販売会社であるコクヨベトナムトレーディングを設立して、流通も含めた一貫体制が整った。

「設立から間もなく街の文具店を集めて商談会を開き、ベトナム人のデザイナーを採用し、ドラえもんの版権の契約などを始めていました」

 新たなラインナップの発売後、ドラえもんのキャラクターノートと派手なデザインのノートが北部で売れた。北部にノートのメーカーは少なく、デザインや品質の良さが引き立ったようだ。また、ベトナムでは小・中・高校で成績優秀者にノートを贈るイベントがあり、北部での知名度が上がるにつれてコクヨのノートが使われ始め、学校や学生からも浸透していった。

「現在、北部のほとんどの学生は『Campus Note』を知っていると思います。また、2017年くらいから他社も無線綴じのノートを作り出して、今では北部の主流になっています」

学校で使う独自文具も開発
手に取ってもらうことが重要

 ノートの次に開発したのはベトナム独自の学校文具だ。1つ目はノートを汚れないようにする「ナイロンカバー」で、2つ目はノートに貼る「名前シール」。このシールに自分の名前を書いてノートに貼り、上からナイロンカバーを掛ける。3つ目はテストペーパー(解答用紙)。ベトナムの学校では問題用紙だけが配られて、解答用紙は各自で用意する。

 ノート関連以外も開発を始めて、2015年頃からはシャープペンシルや消しゴムなどの筆記用具、ここ3年では筆記具を入れる筆箱、蛍光ペン、コンパス、定規などと増えた。基本的にベトナム向けの企画商品であり、日本仕様の機能を削る場合が多い。

「日本ほど文具にこだわる文化はまだないので、スペックをベトナムに合わせて価格を下げています」

 筆箱なら、日本ではペンスタンドになるペンケースが人気だ。筆箱が立つので筆記用具が取りやすく、机の省スペースにもなる。ベトナムではファスナー式で口が広いタイプがほぼ全てだ。

「3年や5年前の日本を追えば流行はわかりますが、ベトナムの事情と融合させていくのが難しい。次はどれだけ便利にしようかと、日本側とベトナム人スタッフとが連携しながら頭を絞っています」

 最近販売したのは「シリーズ」だ。セット販売ではなく、ノート、名前シール、消しゴム、クリアバッグなどを統一したデザインで揃えた。将来のニーズに先行した商品であり、文具はまず手に取って使ってもらうことが大切で、機能の充実はその先という考えだ。

 ただ、「良いものを使いたい」という声は確実に増えており、ベトナムでは大手文具メーカーのほか2015年以降は海外ブランドの参入が増えて、高価格の商品でも市場は受け入れつつあるという。

ECでの購入はまだ先か
勉強を効率化させる文具を

 商品のメインターゲットは全国に約950万人いる中高生であり、文具が購入されるタイミングは独特だ。ベトナムの学校は一般的に5~8月末が休みで9月から新学期が始まる。この時期は「バックトゥスクール」と呼ばれて、新学期までにその年度に使う文具の8割程度をまとめ買いする。ノート20冊、ペン1ダースなどと単位が大きいので、文具メーカーにとっては一大イベントとなる。

「8月末までに買うのでその時期の書店は混んでいます(ベトナムでは文具を売る書店が多い)。弊社でもPRなどをお願いしています」

 2019年まで市場は伸びていたが、新型コロナで学校はオンライン授業に変わってコクヨベトナムの売上も落ちた。ただ、現在は戻っており、生徒数は当面増えることから、今後は期待できそうだ。

 寺本氏は文具市場全体の将来像を中国に例える。オンラインの発展に伴ってSNSなどでトレンドがわかると、地方在住者でもセンスの良い便利なグッズに気が付く。するとインフルエンサーが発信して、皆のマインドがその商品に向くと、ECでの購入が増えていく。

「この10年で中国での文具の価値が変わったと思います。一方のベトナムはリアル店舗での販売が中心で、ECで文具を買う学生は少ない。弊社の商品も学校近くの書店や街の文具店での購入が一般的です。ベトナムが中国のようになるのは少し先でしょう」

 ベトナムの学生は忙しく、放課後には塾へ行き、帰宅してから宿題をする人が多い。1日の勉強時間を効率化させて、ほかの時間に色んな経験してもらいたいと語る。

「それを後押しできる、付加価値のある商品を開発できればと思っています」

QUICK QUICK(Nhanh Nhanh)
General Director 一柳大輔氏

価格、品質、環境、衛生
売れる文具には理由がある

 文具や消耗品などを幅広い品揃えで、法人向けにカタログ販売するニャンニャン。登録している顧客は4400社以上あり、その83%が日系企業、9%がベトナム企業だ。取り扱う文具は日本製、中国製、ベトナム製がほとんどで、台湾製なども多少ある。

「品質が高いのは日本製ですが、日本企業のOEMを請け負うベトナムの文具メーカーもあり、ベトナム製の品質も悪くありません。中国製は低価格が特徴の輸入品で、ベトナム製より安い商品もあります」

 同社で売れている文具は何か? まずは筆記具の中からボールペン。ベトナムの大手文具メーカーであるThien Longの「TL-027」が販売数のダントツトップだ。透明のボディの中にインクの色と白色がらせん状にデザインされたペンで、読者の会社にも1本はあるはずだ。

 インクの色は黒、青、赤で、ベトナムでは公式文書に使用する際の色は青色と決まっているため、青いペンが販売の約95%を占めている。全色を合わせた1ヶ月の販売数は約1万本にも上る。

「オフィスと工場が弊社の主な販売先であり、従業員数が多い工場では納品数も多くなるため、価格の安さも人気の理由となっています」

 ニャンニャンのカタログで「TL-027」は1本3600VND。日本製のボールペンは安くても1万VND以上と約3倍の価格差があり、2万VNDを超える商品も珍しくない。ただ、多くの書類にサインする経営層からの注文で多いのは、書き味の滑らかな日本製の筆記具だそうだ。

 マーカーでの売れ筋はゼブラの「マッキー」、販売数は1ヶ月に約2000本だ。工場の生産ラインで広く使われており、用途は部品に穴開けの位置を書いたり、品質チェック後のマーキングなど。環境意識の高い企業に選ばれていて、不純物が少ないインクの質が理由のようだ。

 商品の多品種化や参入メーカーの増加などで、年々種類が増えているのがステープラーやハサミなどの金属製品。その中で4~5年前からベトナム市場に登場したのが、「針なしステープラー」だ。書類に穴を開けて紙を折り込んで閉じるといった方法で金属針を使わないことが特徴で、最近は売上が伸びている。

「特に日系の食品工場や縫製工場からの注文が多いです。工場に持ち込む書類に針を使わないことで、針の異物混入を防ごうとしているのだと思います」

機能やデザインがポイント
アート系文具の高品質市場も

 ベトナムでは電子化やペーパーレス化が進んでいるが、紙の書類を保存する企業も多く存在する。このときに用いられるのがファイルだ。良く使われるのがレバーアーチ式ファイルで、複数のメーカーが販売しているが、キングジムがほぼ独占しているのが「パイプ式ファイル」だ。

 穴を開けた書類を2つの細いパイプに通していくので、重なった中から目的の書類を取り出しやすい構造だ。

「工場やビルの図面などを簡単に取り出せるので、ゼネコンや設計事務所などに好まれています」

 書類立てとも呼ばれるファイルスタンドは、事務所向けということで黒、青、グレーなどの色が多かったが、2~3年前からピンク、イエロー、グリーンなどのカラフルなタイプが増えており好評だ。特に日系や外資系のオフィスで人気がある。

 例えばナカバヤシのファイルスタンドは材質が良いこともあって従来のベトナム製より3倍ほど高額だが、色だけでなく質感の良さも見てわかる。

「この商品は個人ユーザー向けだろうと取り扱いを迷いました。品質が良いのでカタログに載せたところ売れ始めて、うれしい誤算です(笑)」

 意外なところでは名刺ファイル。以前は中国製を多く販売していたが、全体的に品質が悪く、表紙がフェイクレザーなどで重量もあった。機能面では変わらないが、最近では日本製のラインナップが揃って、人気が出ているそうだ。

 同社では扱っていないが、アート系文具である絵具や水性ペン、筆ペン、クレヨンなどの画材市場がベトナムで伸びているという。中国製のパステルセットなど価格の安い商品は以前からあったが、注目されているのは描きやすいペンや豊富で質の良い色を出せる絵の具などで、トンボやサクラクレパスの商品が口コミで広がっているそうだ。

「価格は相応に高いのですが、子どもではなく趣味や仕事で使う大人が購入者の中心です。この市場は伸びていくと思います」

文具全体の品質は上がるが
ベトナム製文具の魅力も残る

 同社が文具を仕入れているメーカーは、ホワイトボードなどを取り扱う企業を含めて40~50社。外資系メーカーではベトナム仕様にカスタマイズしている企業もあれば、本国の製品をそのまま輸出している企業もあり、ベトナムに対する考え方や戦略は様々だ。

 ただ、この4~5年でベトナムの文具の品質は全般的に向上しており、コスト意識の高い工場などでも質の高い文具を求める声が高まっているという。

「工場で重視されているポイントはコストや耐久性だと思いますが、一般消費者は機能性やデザイン性を欲していると思います」

 経済力と中間層が増え続けているベトナムでは、普段使いの文具であってもより良いものが求められそうだ。しかし、高性能でハイセンスな商品ばかりになるかと言えば、それは違うと一柳氏は語る。

「最初に紹介したボールペンの『TL-027』でも、私が来越した13年前より品質は上がっています。安価である程度の機能を持つベトナム製文具には魅力があり、今後も競争力を持つと思います」