専門家たちはベトナム製品がアメリカの特別な関税の対象となる可能性は低いが、貿易赤字の問題に絡んでセーフガード調査対象となるリスクは高まるとみている。
統計総局のデータによれば、2024年もアメリカはベトナムにとって最大の輸出相手国であり、輸出総額は1196億USDで前年から23%増加した。主要な輸出品目は、履物、木製家具、機械設備などとなっている。
世界最大の経済大国であるアメリカへの輸出額は、ベトナムの全世界への輸出額4055億USDの30%近くを占めている。アメリカはベトナムにとって世界第2位の貿易相手国であり、アメリカにとってベトナムは世界第8位の貿易相手国でもある。
2025年1月20日にドナルド・トランプ氏がアメリカの次期大統領に就任すると、ベトナムにとって最も重要な市場の予測は難しくなる。トランプ次期大統領は、主要な貿易相手国との貿易赤字が巨額であることを強く懸念し、中国、メキシコ、カナダ、更には世界各国に対して関税を10~20%引き上げると恫喝した。
一部の専門家は、これまでのところアメリカがベトナムに対して特別な関税を課す可能性は低いとみているが、アメリカの貿易赤字には警戒が必要だとしている。
「トランプ氏がベトナム製品に直接的な関税を課す可能性は低いと思われますが、ベトナムとの貿易赤字が中国、メキシコに次いで大きいことには注意しておく必要があります」とデザン・シーラ&アソシエイツの国際ビジネスコンサルティング部門責任者のカイル・フリーマン氏は、1月8日にホーチミン市で開催された”アメリカの新たな政策:貿易と投資への影響”と題するセミナーで述べた。
関税シナリオ | 可能性 | アメリカ向け輸出への影響 | 輸出成長予測 |
減税 | 非常に低い | 厳しい | 予測不能 |
新たな関税措置なし | 非常に低い | 影響なし | 予測不能 |
増税 (中国と各国) | 可能性あり | メリットあり | 8% |
増税 (中国のみ) | 可能性あり | メリットあり | 8%以上 |
増税 (中国とベトナムを含めた各国) | 低い | 厳しい | 8%未満 |
カイル・フリーマン氏は、トランプ氏の関税政策について4つのシナリオを提起し、最も可能性が高いのは中国、メキシコ、カナダ製品への関税率の引き上げだと指摘した。「ベトナムにはアメリカ向け輸出をさらに拡大するチャンスが来るでしょう」と同氏は述べた。
他の3つのシナリオについて、もしアメリカが中国製品に対する関税を60%に引上げ、他の国の製品も10~20%に引き上げたとしても、2025年のベトナムのアメリカ向け輸出は8%は増加するだろうとVnDirect証券の担当者は述べた。もし中国に対する60%の関税引き上げのみであれば輸出の伸び率はさらに高くなる可能性があるが、中国以外の国に対しても関税を引き上げ、ベトナム製品にも個別で追加関税がかけられた場合は、伸び率は8%を下回る可能性がある。
VnDirect証券のマクロ経済・市場戦略部門の責任者であるディン・クアン・ヒン氏は先月発表した分析の中で、ベトナムは厳しい関税引き上げ政策を回避できる可能性があると述べた。しかし、アメリカの貿易赤字の拡大によって、セーフガード調査の対象となるリスクは高まっている。2024年1月から11月までにベトナムはアメリカに対して954億USDの貿易黒字を記録しており、前年同期から26.7%増加している。
アメリカのインディアナ大学で教鞭をとるフイン・テー・ズー講師によれば、トランプ氏は、大統領就任後に選挙公約をそのまま実施する可能性もあるが、ある程度引き下げる可能性もある。しかし、二国間交渉を重視し、同盟関係を構築するというトランプ氏の考え方は基本的に変わらないとみられている。
予測不可能な状況の中で、ベトナム製品がその優位性を維持するのか、それとも関税引き上げ対象となるのかは、依然として不透明だ。「アメリカにとってベトナムとの貿易赤字は非常に巨額であり、この問題をどのような解決するかにベトナムは注意を払う必要がある」とズー講師は述べた。
専門家たちによれば、2025年、ベトナム製品をアメリカに輸出する際のリスクを抑える方法はいくつかある。「アメリカへ商品を輸出することは変わらないが、輸出をしながらもアメリカへの投資を促進させる複合的な政策を打ち出すことが必要になります。これはアメリカが高い関心を寄せている政策でもあります」とズー講師は述べた。
同時に、米中貿易摩擦が世界のバリューチェーンを再構築する可能性があり、ベトナムはアメリカへの中国製品輸出の中継地にならないように注意しなければならない。
ズー氏は、マクロ経済管理において当局が注意を払う必要がある問題として、アメリカ財務省によって為替操作国の監視対象となっている点と市場経済国としての認定されていない点を挙げた。
アメリカ食料品産業協会(AFI)のボブ・バウアー会長は、ベトナムに対して原材料の透明性を高めるようにアドバイスした。「ベトナムは、自分たちの製品の原産地と供給源の価値をもっと強調する必要があります」とバウアー会長は述べた。バウアー会長によれば、ベトナム企業は競争力を高めるために、食品の品質と安全性、生産と輸送コストなど自分たちで管理できる範囲の項目に重点を置く必要がある。
様々な課題は残されるが、ベトナムはトランプ氏の新しい政策によって恩恵を受ける可能性もある。先月開催されたフォーラムで、BIDV銀行のチーフエコノミストであるカン・バン・ルック氏は、トランプ氏による法人税減税、インフラ、エネルギー、軍事への投資強化という政策は、アメリカの投資と消費を刺激し、ベトナム製品の需要を高める可能性がある。
米越ビジネス協議会のケビン・モーガン会長は、ベトナムは確実にアメリカの新政権の新たな貿易政策の影響を受けると断言した。しかし、現時点で、新たな貿易政策がどのようなものになるかを正確に把握できている人はいない。
「そうではあっても、アメリカ市場でビジネスを続けるためには、様々な選択肢を事前に準備しておいたほうが良いと思います」とモーガン会長は述べた。
出典:2025/01/09 VNEXPRESS提供
上記記事を許可を得て翻訳・編集して掲載